表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/50

第12話 不穏な予感

昨日は公立高校の入試だったらしい。


俺は特にすることもないし、家で引っ越しの用意をしていた。


荷物をダンボールに入れていると、なぜか沖田さんが卒業式で弾くことになっているbelieveの楽譜が出てきた。


なんでだろう?


楽譜自体はとてもきれいなままで、誰かのものーー沖田さんのとかーーその線はない。


じゃあ、これはなに……?


あ、予備が余ってるから、俺が勝手にもらっといたやつか。


引っ越しの用意とかちょっと飽きたし、believe、ちょっとばかし弾いてみるか。


それから俺は2時間くらいでなんとか弾きこなせるようになった。


長い時間、ピアノを弾いていると案の定、母さんに怒鳴られた。


「何してんのよ!引っ越しの用意、終わったの?」


「ちょっと気分転換!別にまだ時間あるし」


「もう卒業式の日には業者の方が来るのよ!」


「わかってるよ」


結局あと2時間弾いていた。


最後に旅立ちの日にを一回、練習しておいた。




翌日、卒業式のリハーサルが行われるとのことで、教室はただならぬ雰囲気に包まれていた。


昨日には公立高校の入試が終わっているはずだと思うのだが、まあ明後日が卒業式だからな。


にしてもスケジュール、超絶忙しいな。明日は3年生を送る会?かなんかがある。


みんな地元だから、高校で友人と離れるのもまた思うところがあるんだろうな。


けど結局近くに住んでるんだからまた会えばいいじゃん?


そうこうしているうちに、朝礼が始まった。


「今日は、もうあと10分で体育館に向かってもらう。ただな、その前にひとつ言っておくことがあるから聞いてくれな。みんな、中学卒業したらまあ、関係なくなるかもしれへんが、一条は東京に行くそうだ。まあ、知ってた奴もいるかもしれへんが。以上。時間は守れよ」


俺はずっと朝から緊張していた。


この話を担任がするからだ。


周りのみんなも、えっ、という顔をしている。


まあそうなるよなー。いきなりですかって。


でも、そんなに仲良くしてないしな。


まあ、中村には不義理かな。


「なあ、一条。お前まじか?」


「ああ、東京の私立に行くさ」


「……まあ、事情があるやろな……寂しいやんけ」


「ありがとうな。じゃあ俺体育館に行くな」


だいぶクラスのみんなに騒つかれているが、気にせず体育館へと向かった。


体育館に入るや否や、松木さんが話しかけてきた。


「なあ、一条くん、ほんまに東京いくん?」


「ああ。もうすぐだな」


「……そうなんや」


「ま、リハーサルもこれからだしさ」


左脇の裏通路を通って、控え室に入る。


ここで式の進行を待ち、合唱のタイミングで裾から出て行く。


まあ、なんというか。狭い空間に俺と松木さんと、沖田さんが座るとなると。


もう、沖田さんには会えないんだと思うとーーこんな気持ち、何回飲み込んできたんだろう?


近くにいられるのも、あと少し。


毎晩、寝る前に沖田さんに告白しようかしまいでおこうかとても悩む。


シュミレーションもしてい……ゴホンゴホン、別に変な妄想はしてないから。


隣に座れたらって思う。こんな短い時間でも。


3個並ぶ椅子のどこに座るべきか。


真ん中?これは狙いすぎ。


けど、両端だと、隣に松木さんがくる可能性もあって……。


でも、普通に端に座るか。


そう決めて控え室に入ると、なんと沖田さんが真ん中の椅子に座っていた。


「早よ座りいや」


「あ……うん」


沖田さんの隣に座ることはできた。


けど。空気は重苦しい。


「この間、話したやんか。どこの高校行くん、って」


あー、あの時、俺、誤魔化したな……。


「まだ中村にも言ってなかったからさ」


「……」


沖田さんは真っ直ぐ前を見据えて、まったく動かない。


ちょっと怖いいんだけど……。


リハとはいえ、緊張はするよな……っておい、沖田さん、楽譜いるはずなのに。


なんで、持っていない?


きれいに両手を並べて膝の上に置いているけど。


まあ、暗譜したんだろ。


「それでは、卒業式の予行練習を開始する」


俺たちの出番は刻々と迫る。

タイトルがベタで……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ