表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/50

第11話 やっぱり女性は勘がするどい

そわそわした気持ちのまま、俺は4時間目を終え、昼休みになってお弁当を鞄から取り出す。


沖田さんは、以前、すぐどっかに行っちゃったからな……。


いや、今日、自分の席でしっかり弁当を食べているじゃん!


沖田さんの弁当の中身、気になる〜〜!


ちょっとだけ覗いてもいいよね?


そうっと左に視線をそらすと、沖田さんの机の上には、色鮮やかなおかずと白く輝くごはんが並べてあった。


う、うまそう……!


よりによって俺の弁当は……母さんが『もう引越しで色々ないからこれで』って言ってきたけど……


どう考えてもこれ、コンビニの弁当詰め替えただけだよね?


幕の内とかだったら、まだわかるけど、牛丼て……。


いや、それだったら冷凍食品で……まあ、作ってくれてるし、感謝するけど……。


前のように、俺はご飯を急いで食べ、体育館でのピアノの練習に向かう。


沖田さんに、練習行く?って声掛けたほうがいいのかな……。


けど、朝のやり取りから、一言も話せてないし……。


俺は黙って席を立ち、そのまま体育館に向かった。


階段を降り、保健室、そして職員室を通り過ぎて体育館に向かう通路に入ろうとした時、後ろから走ってくる足音が聞こえた。


振り返るとそこには、なんと沖田さんの姿があった。


「お、沖田さん、どうしたの?」


「一条くん、突っ立ってへんで、早よ練習行こ」


「う、うん」


体育館までの通路は長い。


もう一つ、校舎の脇を横切る形になるからだ。


追いついてきた沖田さんは俺の横に並んで歩く。


気まずいな……。


「なあ、なんでずっと学校来てへんかったん?」


「えーっと、私立の高校をうけてたんだよ」


「私、騙せるって思たん?関西の高校やったら別に学校休まんでもええやん」


「……あ、そうだよな」


「ホンマはちゃうんやろ?」


「……まあ、実はそうなんだ。詳しくは言えないけどな」


「そうなんや、よかった……。休んでたんは、うちが嫌いやからとかでは、ないやんな?」


「え?いや、全然違うよ。むしろ……あ、その、ほら、ピアノの練習もあるし学校行けなかったのは寂しくもあったし」


「……せやったら学校きてや……」


蚊の鳴くような声だった。


「……え?」


「何もない!そうなんや。もう体育館やで」


「俺、初めてなんだよ。ここで練習するの」


「壇上のグランドピアノで弾くだけやで」


「なにも準備とかいらない?」


「特にないで」


俺たちが体育館に入ると、すぐに松木さんと音楽の先生が入ってくる。


「お、一条!久しぶりやな〜!ピアノ大丈夫なんか?ちょっと心配やで、先生」


「あー、練習してたのでまあ、いけるかと」


「せやったら、いっちょ弾いてき!」


「はい」


普通に演奏を終わらし、俺の次に沖田さん、松木さんと一通り済ませる。


「一条はブレへんな〜!本番も心配ないな!」


「一条くん、どれだけ練習したん?毎日めっちゃ弾き込んだんちゃうん?けど、受験やったんやろ?」


沖田さん、そうは言っても……


「いや、週に一度、1時間くらいかな。勉強の息抜きに」


「そうなん……自信なくしてまうわ」


「ま、あんたら3人とも、入試直前やし、この仕上がり具合でオーケーやで!練習はまた入試終わった次の日から2日だけやけど、放課後来てな。頼むで!」


その日の練習後、沖田さんは松木さんと一緒に歩いていたから、俺は一人でそそくさと退散した。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ