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神との対話


昇天した達也の魂は、輪廻転生の理に従い来世へと旅立っていく―――その時、上方から引力が発生し、彼の魂は上へ上へと昇って行った。



** **


(・・・ん・・・ここは・・・何処だ?)

目を開くと、あたり一面真っ白な世界が広がっていた。


「ほっほっほ。来たか、山木達也よ」


背後から聞こえた声に驚いて振り向くと、そこには白い髭を伸ばした老人が立っていた。


(あなたは・・・)

そう尋ねようとして声が出ないことに気づいた。


「薄々気づいておるじゃろうが、念の為言っておくぞい。儂は幾つもの世界を管理する者。俗にいう神じゃ。ここは神の間、地球の言葉だと天界が相応しいかの。今、お主は魂だけの存在じゃから声が出せないのじゃ。安心せい――――」


(心を読めるから問題ない、と)


「そういうことじゃ。話が早くて助かるのう。時間が無いので早速本題に入るのじゃ」


神と名乗った老人は先程までの穏やかな顔から一転し、真面目な表情になって語り出す。その体から、神聖で力強く、暖かなオーラのようなものが滲み出ている。神というのは伊達では無い様だ。



「本来、輪廻転生の流れに従い来世へ旅立つお主を呼び寄せたのには理由が二つある。一つ、お主が死んだのは、地球とは別の世界での空間の歪みにより、2つの世界が一瞬繋がったからなのじゃ。二つ、そのせいでお主の魂は()()()の世界で死んだことになった為、お主は地球では無く向こうの世界に転生しなければならなくなったのじゃ」


(なん、だと・・・)


「お主の未来を奪ってしまったお詫びに転生する際、何か特典をつけて送り出してやろう。さあ、何を望む。3つまでなら可能な限り叶えてやろうぞ。因みに、あっちにはお主の望んでおった獣人、いや亜人と呼ばれていたか、が暮らしておるぞい。それと、あそこは剣と魔法の異世界じゃ」


(ま、マジか・・・・・・・・)


「・・ふむ、死んだことのショックが大きいか。だがの、幾ら神といえど人を蘇らせることは出来んのじゃ。そんなことをして下界に干渉すると大変なことにな—――――――お主、やけに嬉しそうじゃの」


(まあ、ここ数年はずっとそのことだけを望んでいたからな。それよりも3つの願い、ね。少しだけ考えさせてくれ)


「さっきも言った通りあまり時間はない、5分だけじゃぞ」


(助かる。それじゃあまず一つ目はどうすっかな―――――)


** **


5分後、

(一つ目の願いはこの俺だ。つまり、日本で17年生きた俺の能力、知識、自我を転生先の異世界に引き継ぐことだ。転生して今の自我が消えると意味が無いからな。そして、二つ目は時間を有効利用できる能力だ。地球で生きていた頃、”時間が足りない”と思ったことが何度もあったからな。最後に3つ目、魔法の才能だ。こればっかりは未知数だから宜しく頼むぜ)


「あい分かった。ふむ、一つ目と三つ目は容易じゃが、二つ目の願いがのう・・・時間を有効利用・・・時を操る能力は少し違うしの・・・ああ、そうじゃ努力することが得意なお主にピッタリな能力があったわい」


(ん?何だ、早く教えてくれよ)


「まあまあ落ち着け、そう急かすでない。能力そのものは、個人差があるが時が来れば自ずと理解するであろう。使いこなせるかどうかはお主次第じゃが、もし出来れば途轍もなく便利な能力じゃ。最初は全然無理でも根気強く続けるのじゃぞ」


(フッ、俺を誰だと思っている。俺は世界に名を轟かした天才だったんだぜ。すぐ使いこなして見せるさ)


神は、俺の自信満々な態度に満足したように頷くと真剣な表情になって話を続けた。


「それじゃあ転生じゃ。旅立て、若き才能の原石よ。どんな過酷な運命が訪れようとも決して諦めてはならんぞ、お主にはそれを覆す力があるのじゃからな」


(ああ、地球じゃあのまま何も起きず退屈な人生を送ってただろうけど、これからは楽しめそうだな)


「いや、約1年後勇者としてクラスごと異世界召喚される予定じゃったぞ。魔王を倒す為にの」


(おい!嘘だろ!冗談きつすぎるぜ・・・)

そう思いながら神の表情を窺うが、どうにも嘘ではなさそうだ。


(マジかよ・・・)


「強く生きるのじゃよ。お主の未来に幸あらんことを」


神はそう言って両手を掲げた。すると、俺の目の前に光の扉が出現した。


(まあいい、やってやるさ。今度こそは、あんな死に方じゃなくて大往生してから死んでやる)

その思いを胸に俺は前へ踏み出した。




この時の俺はまだ知らなかった。軽く聞き流した神の言葉には、深い意味が含まれていたことを。


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