プロローグ
素人なので粗い部分があります
明るい日に照らされた町の中を男は歩いていた。始業式が終わり、下校しているだけだというのに男は目立っていた。すれ違う人々は老若男女関係なく驚いたように目を見開き振り返る。
その男の名は神木達也。幼少の頃より神童と呼ばれ、今では天才の名を欲しいがままにする完璧超人である。
しかし、増え続ける自身への好奇や嫉妬の視線に十年間晒され続けた彼は、いつしか日本を己を閉じ込める巨大な檻だと思い込むようになった。そして去年、幼馴染であり親友だった男に裏切られ、家族以外誰も信用しなくなり、動物が好きになった。
* * *
俺は、小さい頃から何でも出来た。勉強、スポーツ、ゲーム、様々な多くのことを。
特に、本気でやろうと思ったことはそれよりもっとできた。
高校二年生になった今でもそれは変わらない。体育では運動部顔負けの身体能力を発揮し、学力は常に学年トップクラス、因みに学校は難関で知られるとこだ。
そんな文武両道を体現し、顔もある程度整っている俺は当然モテた。人生にモテ期は3回来ると言うが、俺はここ十年近くずっとだ。
勿論、俺にだって短所はある。それは、価値観が変わっていることだ。多くの高校生は、ドラマ、恋愛、漫画、本、ゲーム、アニメ、などが好きらしいが、俺は違った。
確かに、どれも全く興味がないと言ったら嘘になる。しかし、「お前が一番好きなことはその中にあるか?」と聞かれると答えは否だ。
そんな俺が唯一面白いと感じたことは、ネット上で他人が書いた小説を読むことだ。
書籍化による修正が施されていない作者の本心や人間性、または考え方、価値観が、作品の節々に描かれたものを読み、吸収し、己の糧とすることで、成長を実感するのが楽しかった。だが、それでも俺は物足りなさを感じ、毎日、目が充血するまで読み漁った。
そして数年前、やっと見つけた。自分の、心が、魂が感じた。コレだ!と。
それは、その小説のジャンルは—――——————————————————————————異世界転生。
こことは違う、異なる世界、下心剥きだしで近寄って来る醜悪な人間共ではなく、大好きな動物の要素をもつ亜人達が暮らす世界で生きたいと、純粋にそう、願った。
「なんてな・・・そんな非現実的なことがあるわけないだろうに」
歩いている最中、手のひらに氷の粒を感じた。見上げると、いつの間にか空が雲に覆われていた。
そして、空が光った瞬間、雷鳴が鼓膜を叩いた。・・・どうやら結構近いようだ。
達也は嫌な予感がして走り出した。しかし、そんな彼の努力は虚しく、現実は残酷だった。
目の前がカッ!と光った瞬間、ふと思った。
(そういえば、運だけは常人以下だったな)
ドッゴーーン!
走馬燈も見る暇もなく、意識が消し飛んだ。




