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後日。

 後日。

 『細田三矢』は、四人で決めた待ち合わせの時間よりも一時間ほど早く『瀞蹴かれい』と会うことにした。

 少し、思うところがあった為である。

 して、その旨を相談すると、『瀞蹴かれい』は何かを察したようで、「じゃあ、私の事務所で会おう」と提案してきた。ではその様に、ということになり──現在、その事務所の中で『瀞蹴かれい』にお茶を出されたところだった。

「さて」

 己の前にもお茶を置き、ソファーに腰を沈めて足を組んでから。

「聞きたいこと──というか、確認したいことになるのかな?──が、あるんだよね?」

 先手をとるような形で、『瀞蹴かれい』はそう促してきた。

 流石と言うか何と言うか。

 鋭いものである。

「……あのとき」

 『細田三矢』は、一つ呼吸を置いてから、静かに本題を切り出した。

 あのとき──四人で出口に向かったとき。『瀞蹴かれい』がドッキリばりに居なくなっていたのだが、『細田三矢』はその行動の理由が気になっていた。『瀞蹴かれい』は「ペンライトを取りに行っていた」と言ったが、『細田三矢』はそれがどうしても腑に落ちなかったのである。

「貴方は何をするために僕たちから離れたんですか?」

 『細田三矢』は『瀞蹴かれい』を正面から見据えた。

「ふむ、質問する形で来たか」

 『瀞蹴かれい』は苦笑する。

「でも、君は分かっているよね」

 『瀞蹴かれい』は視線を返すように『細田三矢』を見た。

「君が抱いているのは疑問じゃなくて答案。だから、聞きたいこと、じゃなくて、確認したいこと、になるんだよ」

 まるで、こちらの頭の中を覗いて見たように言う。

「答案……」

 言われてみて気付いたが、確かにそうなのかも知れなかった。

 己の中にあるのは、『瀞蹴かれい』が取ったであろう行動の憶測。

 推測とも言うが。

「あのとき……貴方は僕たちから離れて──」

 正解かどうかは分からないが。

「──他のアトラクションを見て回った」

 だから。

 だから──合流するのに、一時間という時間を要した。

 メンバーがどんな状況に陥っているのかを確認するために。

「正解」

 『瀞蹴かれい』はなんだか嬉しそうに笑って言った。

「なんで分かったのかな?」

 本当に嬉しそうに笑う。

「……あのペンライト、結構丈夫なものだったのか、思いっきり投げても明かりが消えなかったじゃないですか。それで、探すのにはそれほど時間はいらないはずだと思って」

 多分、あの二人はペンライトを見つけるのに時間がかかったと思っているはず。

 ペンライトの明かりがついたままで落ちてるなんてことは知らないのだから。

「なるほど。それで、時間が掛かる行動は何か、を考えたらその推測が立ったわけか」

 笑顔を湛えたまま、感心したように顎に指を遣る『瀞蹴かれい』。

 その仕草は、女性のもののように見えた。

「なら──」

 言って、『瀞蹴かれい』は別の笑みを浮かべた。

 妖しさ帯びた笑みだった。

「あのとき私が何も言わなかった理由も、推測できてるのかな?」

 本当に見透かされている。

 『細田三矢』は小さく頷いた。

 そして、答える。

「表現が合ってるのか分かりませんけれど──その、全滅、だったから──だと」

 確認しに見回ってみたものの、その状況は──あの場で口にすることが憚れるほどのものだったのだと。

「さすがに、どういう状況だったのかまでは想像できませんが……」

 『細田三矢』は視線をお茶に落とした。

「……知りたい?」

 そう訊かれて、『細田三矢』は再び視線を上げた。

 そこには困ったような微笑みを浮かべた『瀞蹴かれい』。

 その表情で、その意図──意思が分かった。

「──いえ、知らないままにしておきます」

「そうだね、その方がいい」

 『瀞蹴かれい』は、柔らかく笑って、お茶を口に運んだ。

 『細田三矢』も、お茶を飲み干した。

「さて、と。そろそろ向かわないと遅れてしまうね」

 時計を見ながら『瀞蹴かれい』はソファーから腰を上げた。

「そうですね」

 応じて、『細田三矢』も立ち上がる。

「先に出ててくれる? 私は戸締まりがあるから」

 そう言う『瀞蹴かれい』に頷いて、『細田三矢』は一足先に外に出た。

 周りの建物を見回していると、『瀞蹴かれい』はすぐに出てきた。

「さ、行こうか」

 『細田三矢』は『瀞蹴かれい』と並んで歩いた。



 

 待ち合わせた先で四人は、あの夜のことを口外しないことを約束し合い、あのサイトで《裏野ドリームランド》へ行こうとしているものを見かけたら制止することを決めたのだった。

 

 この度は、最後まで読んでいただきまして、誠にありがとうございます。


 少しでも時間潰しのお役に立てたなら幸いです……。

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