9.コウジのステータス
書きたいのがいっぱいあります
「おはようございます」
「おはよう。よく来たな」
すでにマスターとヴァンがスタンバっていた。
マスターの隣にいる虎の獣人は誰だろうか?
なんか、すごいゴツゴツしてるけど……
「ライクウちゃん、もしかしなくても彼?」
「ああ、よろしく頼む」
んん?なんか、嫌な予感が……
「ハァーイ、コウジちゃん!アタシ、ニノシルっていうの!よろしくね♡」
うわ……オネェだ。ゴツゴツした虎のオネェがおる……!
しかも、ご丁寧に語尾にハートまでつけて……!
正直きこの人……じゃなくて獣人は苦手だなぁ……
漫画やアニメだったら面白いキャラとして思えるんだけど、リアルでくるとこれはなかなかキツイ。ゾワゾワして毛皮なのに鳥肌が……
「どうだ、コウジ。なかなか濃い奴だろう?」
「知ってたのに何で言ってくれなかったの!?」
「そりゃあ、お前の反応が見たかったからさ」
ふんぞり返ってドヤ顔で何言ってるの?
なんというか、ヴァンに軽くいじめを受けているみたいな気分だ。
そんなことを思っていたら、シーナが今度は回し蹴り……もとい、飛び回し蹴りをヴァンに放ち、壁に激突させた。
あれ、シーナって癒し担当だよね?
癒し担当……回復してくれる獣人が仲間を何度も蹴り飛ばしてるよ?
いいのかな?かな?
まぁ、それは置いといて……マスターによると、ニノシルって虎獣人は解析屋の主人らしく、僕のステータスを調べるために呼んだらしい。
ステータスかぁ……レベルは1で間違いないだろし、他のも子供だから低いんだろなぁ……
くぅ……わかっててもちょっと残念感が……
「それじゃ、早速調べるわよ~!」
取り出したのは水晶のようなガラス玉。
それを通して僕をジロジロと見始めた。
「ふんふん、なるほどー……へぇ、これは……」
なにかブツブツ言いながら紙に何か書いていく。
いや、何かってステータスに決まってるが。
しかし、調べてるときに一瞬驚いた顔をしたのは気のせいだろうか?
みんなも気にしているようだけど、ニノシルさんはなぜか隠しながら書いているため、わからずにいる。
あぅ……気になる……
「はい、終わったわよぅ」
書かれた紙を渡され、みんなが一斉に僕の後ろへ回ってきた。
僕もジッと見始めた。
文字なら昨日勉強したし、わかる……はず!
名前:タクト
種族:狐獣人
レベル:1
属性:空
所有スキル:暗闇耐性・衝撃耐性・温度変化耐性・貫通耐性・気絶耐性
ん?レベルはわかってたけども、属性ってのはなんぞ?
あと、名前が違うんですが?
「なぁ、この名前って……」
「ああ、おそらく元々の身体の名前なんだろうな」
この身体、タクトって名前なのか……知れてよかったのかもしれない。
だってもし、この身体……タクトのこと知ってるのがいたら色々教えてもらえるし。
そして、この属性。
これは一体何だろうか?
「珍しいですね、空の属性なんて……」
「え、そんなに珍しいの?癒の方が珍しく感じるけど……」
「たしかに癒も珍しいですが、空の属性の方がよっぽど少なくて珍しいんです」
そうなんだ……そんな珍しい属性を僕が……
ああ、いけない。なんだか嬉しくてニヤけちゃう!元々はタクトの属性なんだから!
あれ、気がつけばマスターがいないや。
「マスターは?」
「ライクウちゃんなら、ちょっと調べてくるって席を外したわよん。なにせ、珍しい空の属性
なら君が住んでた住所が割り出せるからねん」
なるほど、そりゃ便利。
とりあえず、今のうちにスキルの事を聞けるだけ聞いとくか……
「すみません、僕の所持スキルの意味を教えてもらってもいいですか?」
「いいわよ。まず……」
「コーウジー!いるかぁー?」
バ、バルト?
いきなり扉を開けるからびっくりしたじゃないか!
しかも、ハイテンションだし……あれ、嫌な予感がするよ?
『熟練度が一定に到達……《危険予知》を獲得しました』
あ、新しいスキルだ。危険予知ねぇ……
ん?バルト相手に危険予知を獲得したってことは……
「焼肉丼作ってみた!コウジ、食べてみてー!」
やっぱりだぁ!!
くそぅ……見た目美味しそうだし、僕だって食べられれば食べてるさ!
問題は、劇的なマズさだよ。
なにせ、気絶しかけるほどだからね?
っていうか、朝からなして焼肉丼なんか作るかな?
サンドイッチとか軽めの方がいいよ。
「断る!……どうして僕を指名するのさ?」
「そりゃ、コウジが美味いと言えば料理担当に戻れるでしょー?」
……バルトは何のためにギルドに入ったの?
いや、まぁ今はそれを置いておこう。
「味見はしたの?」
「するわけないじゃーん。したら誰が作って片付けるのさ?」
「味見してよ!バルトが自分で美味しいと思うまで食べないからね!?」
味見しないで食べさせてたの!?
そりゃ、味がわかんないや。
でも、手順も調味料もバッチリだったと思うんだけどなぁ……
きっと、僕が見てないとこで変なことしたんだろうか?
そうだ、きっとそうに違いない。そう思っておこう。
しぶしぶとパクッと食べた瞬間、短い毛が逆立ったのがわかるくらいビクッとし、次の瞬間には固まってしまった。
これで、僕達が食べた時の衝撃がわかったろうね。
……五分くらい経ったけど、いつまで固まってるんだろ?もしかして気絶してる?
「う~ん……おかしいな……」
あ、マスターが戻ってきた。
なにやら、書類見ながら唸っている。
「ライクウ……どうかしたのか?」
「ああ……タクトって名前はいくつかあったんだが……空属性の者がいないのだ……」
え、なに?どゆ事?
つまり、タクトと空属性で検索して一人も見つからなかったってこと?
それっておかしくない?
「それってつまり……どういうことですか?」
「これは私の憶測になるが……空の属性はコウジ自身が元々持っていたものだろう」
バッとみんな(バルト以外)が一斉に僕を見た。
うっわ、これ苦手だ……
でも、それほど空の属性はすごいんだね。
さて、気絶しているバルトをよそに、僕達は地下へやってきた。
これから僕が使う武器を選ぶんだとか。
片手剣、両手剣、短剣、槍、鞭、鎖鎌、斧、爪、俸、ブーメランと色々ある。
この中から選ぶのか……
「武器が手から離れた時の体術も覚えてもらうが……まぁ、まずは実際に手に取って振ってみようか」
「はい」
まずは俸。
縦に振ったり振り回したりしてみるけど、どうもしっくりこない。
次にブーメラン。
実際に投げてみると帰ってくることはなく、壁に刺さったり、床に落ちたりしてしまった。
続いて斧。
重くて振り回せない。両手剣も同じ理由。
お次は爪。
かぎ爪みたいな感じで、力とスピードがない分攻撃力にかける。
短剣は軽くて扱いやすいけど、もろいらしく折れやすいらしい。
槍は長いから、僕じゃ引きずるし地面にあたる。
そして片手剣。
シンプルだけど扱いやすくてなぜだかしっくりくる。
うん、これだ。
「この片手剣にします」
「よし、じゃヴァンと戦ってみろ。ただし、ヴァンは攻撃するなよ?止めるか受け流すだけだ」
「ったく……あいよ」
ヴァンは両手剣を取り出し、構えてきた。
僕も慣れない構えで対峙する。
さて、これが初めての武器だ。
とにかく思いっきりやってみますか!