43.騒がしい王都
三年近くの更新、お待たせしてすみません
「……チ、まぁ仕方ねぇ。おいガキ!とりあえずは……ってあのガキはどこへ行きやがった!?」
突然消えた僕を探してキョロキョロしているヤンキー(?)達。そんな彼らを僕は二階建ての建物の屋根から見下ろしている。
実は彼らがあーだこーだとやっているうちに、鳥に変化して空の方へと脱出していたのだ。まさか、狐の獣人、しかも子供である僕が空の方へ逃げてるとは思わないだろう。
さて、と。さっさと見えている城へ行った方がいいな。
一階建ての建物へゆっくりと降り、裏の方の地面に降りる。
ふぅ、向こうの世界と同じくらいの高さでもなんとか降りられるもんなんだな。獣人の身体能力のおかげかな?……ちょっと足が痛かったけど。
とりあえずさっきの三人がいないのを確認してからこっそりと通りの方へと出て、見えている城の方へ歩き始める。
一方、エスクリプスのマスター室では、マスターであるライクウが窓の景色を見ながらズズッとコーヒーをすすっていた。
魔王ネリアルの襲撃から街の復興も落ち着き、以前の賑わいに戻っている。
そんな中、背後にあるドアが開き、ふと見てみるとヴァンがノックせずに堂々と入ってきた。
「どうした?休日の日にここに来て」
「べーつに。部屋にいても暇だったからな」
ドカッとソファーに座って答えるヴァンに一息吐くライクウ。
再び窓の方へ振り返ってコーヒーを一口飲む。
「……なぁ、どう思う?」
「何がだよ?」
「コウジの事だ。平和な世界からの転生……それは認めてる。この世界にはなかった料理を作ったり、嘘をついてる目ではなかったからな。だが、戦闘の方はまだまだでもドラゴン……しかも竜王をその身体に取り込み、身体を乗っ取られたとはいえお前を倒し、今までなかった魔王の一角さえあいつに会いに来たんだ。どう考えても普通ではない」
いつもよりまじめなライクウの声に、ヴァンはびっくりして目を見開いた。
そして思い切りソファーの背もたれに寄りかかり、首を背もたれの上から後ろの方へと回す。
「……んー、まぁ確かになぁ。でも、今は気にしなくてもいいんじゃねぇの?この先はわからねぇが、少なくとも今はいい感じだろ?ギルテシアとの賭け事もなくなったわけだし。アイツはアイツだ。そうだろ?」
「まぁ……な」
「(いずれ成長したコウジが魔の力に堕ちなければいいのだが……。まぁ、そうならないように俺達が導くしかねぇよな)」
そんなコウジに対する不安なことを話し合っているヴァンとライクウ。ちゃんと心から心配しているのが言葉からわかる。
しかしまだ子供のため、心が場合によっては崩壊してしまう可能性がある。
大人でもその事がないわけではないが、まだ幼くメンタルが低い子供には堕ちる可能性が大人よりは高い。
「姉がいるとわかった今、今後を決めるのはアイツ自身だ。もし姉の元に残るならそれでもいいが、こっちに戻るのなら……」
チラッとライクウがヴァンを見る。
それの意味を察して、ヴァンは後頭部をポリポリと掻く。
「……チ、そういうことかよ。まぁわかってはいるからやってはみるがよ」
溜息を吐くヴァン。
そんなヴァンを見て何を思ったのか、ライクウはフッと笑う。
「そういえば今度の昇格試験のパートナー、またバルトでいくのか?」
「いや、今回はコウジに頼んだ。戦闘経験得られるし、うまくいきゃアイツの昇格試験も早まると思うしな。第一、アイツはまだまともにFランクの仕事してねぇだろ?」
「まぁ、な。Fランクの仕事はこちらのギルドにまわって来てないのだ、仕方あるまい」
「は?ウチのギルドに仕事がまわって来てねぇだ?討伐やら調査の依頼は来てるのにか?そりゃおかしくねぇか?いつからだよ」
狐司が入る前からFランクの仕事依頼は来ていた。
しかし、ここ最近その依頼が来ていないのだ。
「……三ヶ月前くらい前からだったか」
「三ヶ月……そんな前か……ん?三ヶ月?いや、まさか、な」
「どうした?なにか心当たりが?」
「い、いやなんでもねぇよ」
明らかに心当たりがあるような反応だったが、冷や汗ダラダラで毛皮が湿っていっているのを見てライクウはあえて追及はしなかった。
長い付き合いであるため、なにか察ししたのだろう。
その時、扉をノックする音が聞こえた。
ヴァンが返事をして扉を開けると、来客の顔を見て顔を引きつった。
「ゲ……」
「……さて、これどうすればいいんだろう?」
王城の近くまでやってきたところで、なにやら兵士っぽい獣人や竜人達がなにやらバタバタしていてとっさに物影に隠れてしまった。
別に隠れなくてもいいんだろうけど、最初の兵士とすれ違ったときに気になるのを聞いたんだ。
「おい、本当にドラゴンが近くに現れたのか?」
「ああ、見張りの兵士が見たんだそうだ。赤いドラゴンが南の森に降りるのを!」
南の森に赤いドラゴン……?それって間違いなく僕だよね?
つまり誰かが僕が変身したドラゴンを見て、いるはずもないのに退治しようと動いてるってことだよ……ね?
……申し訳ないです。
手の肉球をプニュっと合わせて合唱しながら心で謝ってからここからどうするか考える。
素直にドラゴンの正体は僕だったと打ち明け……ると魔族とかと間違えられて攻撃されそうだし、最悪これから会う姉に殺されかねない。
ならすっとぼけて入るのが一番か。
でも今行ってもやっかいなことにもなりそうだし、時間をおいてからまた……のは無理そうだ。
今ピキン!ときたよ?
背後から殺意というか、似たそんな感じのやつが……感じる。
ゆっくりと……ギギギという効果音が合う感じで振り向くと、そこには軽装備のアーマーを装備した白い犬……いや白い狐の獣人が腕を組んで仁王立ちしていた。
「え?え……っと……」
「アンタ、こんなとこでなにをしているわけ?」
まさに“ゴゴゴゴゴ”という効果音が聞こえるほどの迫力で腕を組んでるその獣人は、見た目はさっき見ていた兵士に似ていたから、この獣人も兵士なのがわかる。
しかし、素人目から見ても身に着けてる装備は他の兵士よりいい感じっぽいから、上の立ち位置なんだろうか。
にしても、僕の事知ってるっぽいし、なんでこんなに怒って……?
も、もしかして……と思った瞬間、顔をガシッと鷲掴みにされ、ギリギリと力を入れられていく。
「痛い痛いいだだだだだだ!!!」
「な・に・を・しているのかしら?」
痛みで喋れない!!喋れてはいるけど“痛い”しか出ない!
掴んでいる相手の腕を掴みながら足をバタバタさせていると、しばらくしてからパッと放してくれた。
痛みに悶えながら、掴まれた顔が凹んでるんじゃないかと思いながら確認してしまう。
もちろん凹んではないが。
痛みが引いてきた辺りで涙目になりながらチラッと見ると、今度は腰に手を当てて僕を見下ろしている。
「もう一度聞くわ。こんなとこでなにをしているのかしら?」
こ、こえー!
魔王と対峙した時より怖さがあるんですけど!?
でもあの時よりビビッてないのは、一度近い恐怖を経験しているからなのだろうか?
「あ、えっと……お姉ちゃんに会いに……」
あ、前世でもお姉ちゃんて言ったことなかったからむずがゆさを感じる。
「そうじゃないわ。なんでこんな隠れているみたいなことをしているのかって聞いてるの」
そっち?
言い方が紛らわしいんだけど。
「シルフィーから手紙を受け取って会いに来たけど、なんか兵士っぽいみんながバタバタしてきてたからとっさに……」
嘘は言っていない。
でも、騒ぎの原因であるドラゴンが実は僕だと言えば間違いなくややこしくなるから、そこはあえて言わないことにした。
しかし、何かを感じ取っているのかわからないけど、まだ睨みつけながら見下ろしている。
ドキドキしながら返答を待っていると、次第に「ハァ……」と深いため息を吐いた。
仕事が少し落ち着いてきたので再びぼちぼち更新していきます!




