40.ジャドーの過去!そして賢者タイム
半年も間が空いてしまった……
「霊体といっても、元々生きた肉体があったわけではない」
んん?それっていったいどういう事?
生きた肉体を持った状態で死んで……霊体が身体が肉体が離れたってことじゃないの?
意味がわかんない……
「俺は様々な種族の獣人、昔は存在した人間の負の感情から生まれた」
負の感情から……?
なんか、そういうのって漫画で読んだことあった気がするなぁ。
「たしか……それって恨みや妬み、悲しみといったのが強くなって滲み出たのが……それだよね?」
「わかってんじゃねぇか。まさにそれだ」
おおう、まさかそんなファンタジーな存在がリアルで見れるとは……って、僕にとってこの世界にいることもファンタジーか。
「んで、俺は気付いたらたった一人で森の中にいた。暗く、冷気が漂う寂しい場所だった。何もわからず、暗くて寂しい森にたった一人……だ。お前に想像できるか?この孤独を、この恐怖を」
う……想像しただけででもそれはキッツ……
僕は人間だった時に、親が共働きだから普段家で一人だったとはいえ、昼は友達と一緒だったし、よく遅く帰ってくるけど家族と過ごしてはいた。だから基本一人ではなかった。
でもジャドーは生まれた(?)時からずっと一人で森の中……僕なら孤独感に押しつぶされて絶対に生きていられる自信がない。
それを考えると……メンタルは強いのかもしれない。
僕はギュッとジャドーを抱きしめる。
「……なんのマネだ?」
「寂しかったよね、つらかったよね……」
なぜかわからないけど、ジャドーが可哀そうになり、涙が少し流れる。
モフッとしたその身体を少し強めに抱きしめていく。
「ねぇ、もし生まれ変わったらさ?僕達友達になろうよ!そうすれば一人じゃないし。なんなら今からでも……」
「だああああああ!!離せこの野郎!!」
無理矢理ハグから脱出するジャドー。
え、そんなに嫌?
「俺は貴様を殺しに来てんだぞ!!そんな奴とダチになろうって……アホか!バカなのか!?」
「あー……確かにそうかもしれない……でもさ?本当に今も殺そうとしてるのなら……なんでさっき抱きしめてるときに殺さなかったの?チャンスだったじゃん」
「グ……」
さっきのは僕の本心。
昔の人間と獣人の負の感情から生まれたのなら、光を与えればいい。
それに、友達が増えればきっと楽しいはず。
今の僕に仲間はいても友達と呼べるのは今現在いないし。
「……本当に……俺なんかとダチになろうってのか?お前の仲間の身体を乗っ取って殺そうとした俺と?」
「うん。それに、今僕には仲間はいても友達はいないんだ。まぁ、無理ならしかたないけど……」
「チッ。テメェはとんだお人よしだぜ。だが、ま、なんか今までにないくらい救われた気がするぜ」
頭をガリガリと掻きむしった後にニカッと微笑んで言うジャドー。
すると突然ガクッとヴァノの身体が力が抜けたように倒れてきた。
とっさに支えると、ステージを覆っていた『しんくうは』は消え去り、ヴァノの中から邪悪な魔力が消え失せていた。
ジャドーは成仏したのだろうか?
無事にできていたのならいいんだけど……
「終わった……のか?」
「うん……たぶん」
「そうか……なら、さっさと俺の上から退いてくれないか?」
ふと下を見ると、うつ伏せになっている完全にヴァンの上に乗っている状態だった。
慌てて降りた際、ヴァノをとっさに投げ落としてしまった。
「アハハ……ごめんね?」
「ったく……人の上でいい話をするとはな……ま、聞いてた感じ、同情すっけどよ」
起き上がって爪で傷つかない程度に爪と肉球に間でボリボリと頭をかくヴァンに対し、投げられても身体を乗っ取られたヴァノはまだ目を覚まして……
「ぐ……うぅ……」
あ、起きた。ヴァンよりは早いね。
さすがに本調子ではないのか、額を押さえながら小さく唸っている。
辺りを見渡せば、ジャドーがいなくなったことでアンデッド達は動かなくなっていた。
さすがに何度も戦っていたマスター達も息を切らせている。
「終わった……らしいな?」
「はい、おそらく」
「ったく……さすがにここまで無限だと身体にくるなっと……んで、ヴァノは大丈夫なんだろうな?」
「ぐぐ……乗っ取られた反動で本調子ではないけど……大丈夫っすよ」
ヴァノはなんとか立ち上がり、腰に手を当てて笑いながら強がってはいるけど、震えてるうえに今にも倒れそうだし。
まぁ、らしいっちゃらしいんだけど。
すると、ヴァンがヴァノの額を爪で突き、その拍子にヴァノはバランスを完全に崩して地面に尻餅をついた。
「まともに立ってらんねーじゃねぇか。いーから休んでろっての。無理して強がってんじゃねーよ」
「ヴァン……お前、そんなに俺の身体のことを……」
「ちげーよ。無理してみんなに迷惑かけんなってことだっつの」
言葉が詰まるヴァノ。
ヴァンが言ってる意味を理解したのか、溜息を一つ吐いて休息モードに入ったようだ。
僕も含め、全員が疲れたためにステージ上でまとまって休むことにし、とりあえずは全員無事なことに安堵する。
そして、戦わなかったために元気が有り余ってる彼女が……僕の背後にやってきた。
「……避難した後帰ったと思ってたのに」
「あたしがおめおめと逃げ帰ると思う?」
「ですよねー」
「一応言ってはみたのですけどね……」
アハハ……と頬を掻くシーナ。
全員の傷の回復をして回っているけど、彼女も戦ってるんでよね?たしか。
まぁ、シーナの魔法は傷の回復しか使えないみたいだし、格闘技しか使えないんじゃ……大変そうだ。
今度戦ってるとこ見てみたいや。勉強になるし。
「シーナもいい加減休め。戦い疲れてるだろ」
「あ、はい。ありがとうございます」
回復をそこそこにして座り込み、溜息を一つ吐くシーナ。
回復は傷の回復はできても、身体の体力までは回復できない。
でも、傷だけでも治るだけでもすごくありがたいか。
周りを見渡せば、全員疲れてるのがわかるし、服がボロボロで、毛皮も鱗もかなり汚れている。
「まぁ、とにかく……全員無事でよかったな」
「魔王軍の奴らが襲ってきたのは完全に予想外だったな……」
「しかも、まさかのスケルトン無限湧きだけでなく、ドラゴンもおったんやで?ドッと疲れたわぁ……ちゅうか、コウジ……いうたか?あんた、ドラゴンになったりドラゴンを威圧だけで退けてへんかったか?」
「そういえば……お前、狐の獣人だろ?」
ジッとギルテシムの連中が見てくる。
なんというか……獣顔だからか、ジッと見られると獲物を狙ってるように見えてしまう。
まぁ、まだこの世界に来て一ヶ月弱だし、これはまだ残された前世の……人間としての感情なんだろうか?
さて、どう話そうか……
人間だった時のは……もう話さなくてもいいでしょ。めんどいし。
だから僕はギルドに入った後の辺りから話し始めた。
もちろん、ジャドーやグランヴァルツのことも。
そしたら、ギルテシムのマスターであるアムルスが苦虫を嚙み潰したような、悔しそうな表情になった。
「ググ……それでドラゴンのスキルを……」
あ、これは悔しいんですね。
他のメンバーは驚きながらも納得したようだけど、ヴァノは……なんかゆっくりと僕に近づいてきた。
「コウジ……だったよな?」
「そ、そうだけど……いったいなんの……よ……む!?」
なんだか顔を近づけてきたと思ったら、僕の顎……じゃなくてマズルを親指と人差し指?で軽く押さえて少し上げ……キスをされた。
この瞬間、辺り一帯が静かになり、僕の頭も何が起きたのかわからずフリーズした。
今の仕事は朝が早いからか眠くてなかなか筆が進まない……すみません、がんばります




