26:グランヴァルツとの再会
風邪をひいたり、パソコンの再起動で書きかけが消えて更新が遅れました。
すみません!
……ここはどこなのだろうか?
僕は気が付くと、見知らぬ……っていうか真っ暗で光が一切ない場所にいた。
360度見ても黒一色で、なぜか自分の姿だけがハッキリ見えているだけ。
なんでこんなとこに……たしか、学校に魔王の……えーと……あ、ネリアメが襲撃してきたんだ。
……なんか違う気がするけどいいか。
そして、助けに来てくれたフェンリルと共闘したけど、マスターが来てくれたとこで負けて気を失ってしまったんだっけ。
今思えば、なんでいきなり魔王が来るの?
僕のガチ戦闘なんてまだ一回だし、少なくとも四天王どころかザコとも戦ったことないんですけど?
まぁゲームにもある負けイベントだし、街や子供達が無事ならいいかな……学校は無事じゃないから立て直し必須だけど。
さて、ここをどうやって抜け出すか?
光が一切ないから、どの方向に行けば出口があるのか、まったくわからない。
ていうか、ここに出口ってあるの?
……やばい、なんか不安になってきた。
「また会えたな、狐の子……いや、コウジよ」
とても重圧感のある……すごく聞き覚えのある声が後ろからした。
ドクンと心臓の鼓動が大きくなり、早く振り返りたいという衝動にかられたけど、前にあんなことがあったから聞き違いなんじゃないかという思いから振り返れなかった。
意を決し、ゆっくりと振り返るとそこには、できればもう一度会いたかった人物……ではなくドラゴンが僕を見ていた。
僕が初仕事でシールスの街に赴いて炭鉱の奥で出会ったドラゴン……グランヴァルツだ。
「グラン……ヴァルツ……」
「な、なぜ泣くのだ!?」
グランヴァルツに言われ、気が付くと確かに僕は涙を流していた。
止めようと拭ってもなかなか止まらず、グランヴァルツも大きい爪で涙を掬い取ってくれたとこでやっと止まった。
相変わらず優しいな。
「ありがと。初めてだよ、嬉し泣きなんて……」
「嬉し泣き?」
「またグランヴァルツに会えて嬉しいんだ」
「フ、嬉しい事を言ってくれる」
だって、もう二度と会えないと思ってたから……でも、今は確かに僕の目の前にいる。
話せたのもほんの少しだけだったけど、それが本当に嬉しいんだ。
グランヴァルツが掌を下ろしてきたからそれに乗ると、僕を目の前まで持ってきた。
目の前まで来るとさすがに威圧感がすごい……グランヴァルツの眼は金色で、瞳孔が縦に細長いから、見てるだけど足が竦む。普通なら。
でも、今の僕はそんなの全然ならない。
まだ出会って間もないけど、ホントは優しいドラゴンなのは知ってるから。
「ところで……魔王のビーストマスターと戦ったようだな?」
え、何で知ってるの?
「戦ったけど何で知ってるの?てか、ここはどこ?なんでグランヴァルツがここに?」
「一気に聞いてきたな……まぁ、一つずつ話していこうか」
ここはどうやら僕の心の中で、理由はわからないけどグランヴァルツはあのあと気が付いたらここにいたんだとか。
そして、外が見たいときは僕の眼を通して、外の様子を見てたんだとか。
え、それって僕がシャワー浴びてるときとか見られるのが恥ずかしい場面も見られちゃうってこと?
僕のプライバシーはどうなんの!?
……と思ったけど、どうやら僕の感情が高まったときとか恐怖に震えた時に覗いたんだとか。
それ、ほとんど戦いの時だからいい……かな?
うん……まぁ僕はグランヴァルツを受け入れて今があるんだし、それに景色がない黒一色の中にいるのはつらいし、それくらい許そう……うん。
「なるほどねぇ。ていうか、こうやって話せるんなら、もっと早く話せたんじゃない?」
「我もコウジが寝てるときに試みてみたのだが、まったく声が届いてなかった。おそらく、現状みたく完全に意識がない状態にならないと話せないようだな」
ああ……ただ寝てるだけでも多少の意識はあるからね……ってちょっと待てよ?
それだと、グランヴァルツに会うたびに、わざわざ気絶しなくちゃいけないってことじゃん!!そんなのやってられないよ!
……でもそれだと、いつまでたっても話す機会がないし……どうしたもんか……
「……まぁ、話す方法がないわけではないのだが……」
「え!?どうやるの?」
「その前に一ついいか?」
ん、なんだろう?
「お前、流れで魔王といきなり戦うことになったが、無謀だと思わなかったのか?バカだったのか?下手したら死んでいたのだぞ?」
一つじゃなくない!?
本来なら腕を組んで言うんだろうが、僕が乗っているからできずからか腰?に手を当てながら言われた。
うぅ……まぁその通りなんだけど……逃げられなくない?
一応は街中だし、逃げてもすぐに追いつかれそうだからさ……と言っても言い訳にしかならないから、ここは素直に謝っておこう……
「ごめんなさい……」
「我もいるのだ。これからは一人で戦わずに我にも手伝わせろ」
??どゆこと?
外に出て戦うってこと?
それだったらここで話す必要はないし、いつだって話せる。
いったいどうやって?
「その顔……もしかして気が付いておらぬのか?」
「なにを?」
「スキルだ」
スキル?
……もしかしてドラゴン化だろうか?
でもあれはドラゴンに変身するスキルじゃなかったっけ?
「ほんとに気が付いてないのか……」
はぁ……と深い溜息を吐いて呆れられた。
し、仕方ないじゃん!僕はこの世界に生まれて?まだ数日なんだから!
まだまだわからないことがいっぱいあるんですぅ!!
「お前のスキルに《ドラゴン化》と《二心一体》があるだろう?」
「え、うん」
どうやらこういうことらしい。
《ドラゴン化》はグランヴァルツの若い頃の姿になり、《二心一体》は体を使う権利をグランヴァルツに移すこと。
つまり、僕の体を僕とグランヴァルツとで交互に使えるということ。
……僕の体は物ですか?
まぁ、僕はまだ漫画知識だけで戦闘経験は全然だし、今は助かるっちゃ助かるね。
とりあえず、意識が戻ったら試してみよっと。
「えっと……その……よろしくお願いします」
「ああ、こちらこそよろしく頼む」
改めて言うのってなんだか照れるね。
たまに漫画キャラが照れながら言ってる気持ちがよくわかったよ。
腕を後ろに回してるから、尻尾がユラユラと揺れてるのがわかると、なんだか少し付け根がムズムズした。
13年間生きていきなりできた尻尾だからか、なんとなく痒い。
ま、これもそのうち慣れるっしょ。
そのあともグランヴァルツと話していると、魔王はネリアルの他にも三人いることが分かった。
ただ、グランヴァルツも『ビーストマスター』、『ドラゴンマスター』、『プラントマスター』、『アンデットマスター』で『四大魔王』と呼ばれているということだけしかわからないらしく、名前については今回の戦いで初めて知ったらしい。
そりゃ100年以上も洞窟に引きこもってれば魔王も交代してるよね。
……もちろんグランヴァルツがあの坑道にいたのはジャドーを封印していたのはわかってるよ?
まぁ実際、ジャドーの封印が解けちゃったわけだけれども。
しっかし、ジャドーはあのあとどうしたんだろうか?
また別の体に入って破壊活動をしてないといいけど……その前に僕を殺しに来るのだろうか?
あとは魔王の存在だ。
ネリアルは僕のことを知ってる様だった。てことは、他の魔王も僕のことを知っている可能性が十分とある。しかも、今回のことでなおさらだ。
……思ってた以上に大変なことになってしまったようだなぁ。
などと考えていると、グランヴァルツの体が透けてきた。
「む、どうやら気絶から目覚めるようだ」
そっか、もうその時が来たか……
またいつ会えるかわからないから、もっと話したいけど……無理なようだね。
「それじゃグランヴァルツ、起きたらスキルを使うから仲間に自己紹介しといてよ」
「ああ、わかった」
フッと笑ったグランヴァルツを見て、僕は頷いた。
そして、僕の目の前からグランヴァルツが消え、代わりに僕を呼ぶ声が聞こえてきた。
それは間違いなく仲間の声だ。
それを理解した瞬間、周りが一気に光りだした。
グランヴァルツの再登場。
いつかコウジと共闘をもう一回させてみたいな。




