23.新しいスキルを試すの楽しみ!by.狐司
ついにPVが10000突破!
みなさん、ありがとうございます!
一方、暗雲に包まれ、雷が鳴り響く古城……その大広間にジャドーと玉座に座る影がいた。
ジャドーは膝まつき、頭を下げている。
「ということですので……どうかあの野郎を叩きのめすチャンスを!!」
「だが、お前はすでに負けているだろう?勝てるとは思えんが?」
「お願いします!」
その目はやる気よりも殺る気といったほうが合うほど、復讐の炎が燃え上がっていた。
それを見てか、影の口元が二ヤリと笑った。それは悪そうで……何か考えがあるような笑い。
「いいだろう、やってみろ」
「ありがとうございます!あのクソガキ……覚えてやがれ……」
礼を言い、ブツブツ言いながらその場を離れるジャドー。
玉座に座る影の後ろから、もう一つの影が現れた。体格や身長が違うことから、別人であることがわかる。
「竜王と一つになった獣人……面白そうね」
「ああ……これからどうなるか……フフフ」
不敵な笑いをすると、二つの影はその場から姿を消した。
僕は地下でストレッチしながらまだ来ぬマスター達を待っていると、誰かの声が聞こえた気がした。
それはとても高い声で、威圧感のある声な感じ……だけど、今ここには僕しかいない。
気のせい……なのかな?
「準備は完了したか?」
「ん……あ、はい」
いつの間にか来ていたマスター達が後ろから声をかけてきた。
腕をグルグルと回してるのは温めてるのだろうか?それともヤる気を表してるのだろうか?たぶん後者だ。僕だってやる。
ていうか、先にいくつかのスキルを試したいんだけどな。
えっと、《ドラゴン化》と《変化》と《二心一体》と《キュア》の四つ……かな。どれから試そうかな。
マスター達と話しあった結果、《変化》→《二心一体》→《ドラゴン化》→《キュア》という順になった。
え、理由?
《変化》は狐獣人や狸獣人にたまに見られるスキルなため、狐獣人の僕ならやりやすいかもしれないとのこと。
《二心一体》は、もう一つの魂が吉と出るか凶と出るか気になるため。
《ドラゴン化》は《変化》ができればできるだろうということで。
まぁ、僕の生前でも狐は人を化かすのが得意というのがあるし、僕が思ってるより《変化》は簡単に使いこなせるかもしれない。
よし、今後のために頑張ろう!
「さて、早速《変化》をやってもらうが……その前に聞く。お前は前の戦いで攻撃スキルを連発させていたそうだが……どうやって使っていたか覚えているか?」
ど、どうやって?
そういえば、よくわからないんだよね。
あの時は集中してたからよくわからないんだよね……。
「魔法スキルだけでなく、攻撃スキルの多くはMPを消費する。そして先ほどニノシルが言ってたが、《変化》中は五分ごとにMPを消費する。つまり、《変化》は魔力を使って体を変化させる。それはわかるな?」
「はい」
「大切なのは魔力のコントロールと集中力と想像力」
そ、想像力?
魔力のコントロールと集中力はわかるけど、なぜ想像力……ああ、なるほど。
自分が何かに変身するならともかく、存在している誰かに《変化》するのならば、その姿をハッキリと頭に浮かべなくちゃいけないもんね。
慣れればポンっとできるかもだけど、最初が肝心だからね。
「理解が速いのは助かる。じゃあさっそく魔力を感じるところからやってみようか。魔力は血と同じく体中を巡っている。集中して感じ取ってみろ」
「は、はい」
ゆっくり目を閉じ、集中して魔力を探ってみる。
にしても、魔力ってどんなのなんだろう?やっぱり、今まで感じたことのない流れ?を感じればいいのだろうか?
しばらくして、血とは違う……体中を流れる何かを感じてきた。
これが……魔力?
『条件が一定に到達……スキル《魔力感知》を獲得しました』
うん、間違いないようだ。
「……どうやら魔力を感じ取れたみたいだな」
目を開けてみると、二ッと笑ったマスターがいた。
やっぱりアレが魔力の流れで間違いなかったようだね。
「次は魔力のコントロール。指先に魔力を集めてみようか。指先が少し熱くなればクリアだ」
指先に……か。
指を一本立ててやってみる。
やる前に短くも鋭そうな爪を見て、切った方がいいかなぁと思ったのは秘密。イヌ科だし、いいよね。
気を取り直して、体中のエネルギーが指先に集まるように集中すると、だんだん熱がこもってきたのを感じた。
すると、何かが指先から放たれた感じがしたと思うと、床に何かが当たったというか……とにかく音がした。
目を開けてみると、床には穴が開いていて、そこから煙が出ていた。
あ、なにこれ?
『条件が一定に到達……スキル《魔弾》を獲得しました』
あ、新しいスキルが……獲得できちゃった。
魔弾……魔力の弾なんだろうか。
マスター達を見たら、ボーゼンとした表情をしたまま固まっていた。
えーと……テヘペロ☆
「おま……今のはわざとか?」
「いやいやいや、偶然ですよ。それに、たった今スキルを獲得したので!」
まさかこんなことになるとは……ま、事故だし、怪我人は出てないし……ね。
……はい、ごめんなさい。不可抗力とはいえ、僕が悪かったです。
「まぁ、魔力のコントロールは大丈夫そうだな。じゃ《変化》をやってみようか。そうだな……一番近くに多くいたヴァンになってみようか」
「ヴァンに?」
「他の奴よりヴァンの方がハッキリと浮かぶだろう?」
まぁたしかに……ギルド内じゃヴァンがハッキリするかも。
よし、やってみよ。
再び目を閉じて頭の中でヴァンの姿を思い浮かべる。
最初はボヤッとだったけど、だんだんとその姿がハッキリとしてきて次第に完全な姿となった。
よし、今だね。
わかる……僕の体が変化しているのが。なんだか変な感じがするや。
しばらくして目を開けると、いつもより目線が高く、いつの間にか用意されていた姿見の鏡には僕ではなく、ヴァンの姿が映っていた。
「おお……ホントにヴァンの姿に……!?」
え、あれ、声が……
「お、気が付いたか?変身すれば声色も変わる。存在している者に変身するのならば、必要なのは本人の行動や癖などをうまく再現することだ」
再現……か。本人を徹底的に調べないといけないわけだ?
うっわ、結構手間だね……。イタズラなら軽く程度でいいんだろうけど……仕事となるとマジにならないといけないわけか。
「マスター、お客様が……」
突然入ってきたシーナが、僕を見たとたん目にも止まらぬ速さで僕を蹴り飛ばしてきた。
吹っ飛ばされた僕は壁に叩きつけられたショックで《変化》が解け、元の姿に戻ってしまった。
痛い……めっちゃ痛い……ヴァンはいつもこんな蹴りを受けてたのか……
「え、コウジ……?あれ、どうなってるんですか……?」
「コウジ君は《変化》の特訓で一番身近のヴァンに変身してたのよ」
「そうだったんですか!?すみません……てっきりヴァンが仕事にも行かずに未だここにいたのかと……」
うん……わかるけど、いきなり蹴りはどうかと思うよ?
でも、これでヴァンへの蹴りが減るかもしれないし、よかったのかもしれない。めっちゃ体張ったけど。
さて、シーナが戻ってきた理由は直接の緊急依頼とのこと。
依頼者は鹿の獣人で、学院の先生をやってるそうだ。
学院はこの街の出入り口付近にある学校で、国のお役所に付きたい獣人が入って学ぶところなのだとか。向こうと違って義務ではなく、志願者のみらしい。
依頼は数学を教えてる先生が急病で穴が開いてしまったため、頼まれることが多いシーナにお願いしようとしたらしいのだが……。
「困りましたね……私はこれから仕事ですし……」
「とはいえ、子供達は学院以外ではシーナさんにしか懐いていないですし……」
「さて、どうするか……」
しばらく唸っていたマスター、シーナ、ニノシルさん、先生。
同時にハッと何かを思いついた表情をしたと思うと、バッと一斉に僕の方を見た。
あれ、なんか嫌な予感が?
最近読者が楽しく読めてるか気になってきた……




