14.狐司VSジャドー part2
戦いの続きです
僕は走り、その勢いのまま蹴りを入れるけど、ジャドーは腕でガードし、もう片方で僕の脇腹に入れて僕を吹っ飛ばす。
壁を蹴り、ジャドーの頬を殴る。
吹っ飛ばされるはずだったジャドーは床に手を着き、僕のマズルを蹴り上げた。
僕も負けじと手を着いて身体を回転させ、ジャドーの頭にかかと落としを決める。
すぐさまジャドーは起き上がり、真空波を飛ばしてきたから僕はジャンプでかわすが、さらに真空波を飛ばしてきたため、空中で身動き取れなかった僕は直撃を食らってしまった。
っつぅ……相変わらずヴァンの真空波は強力だ……
「どうした?俺の技にもう屈したか?」
「だから全部ヴァンのスキルじゃん。何我が物顔してんのさ、バカなの?バカでしょ」
「んだとテメェ!!!」
やべ、相手を怒らせすぎた。
最大威力といえるべき真空壁が僕だけでなく、この塔まで包み込んだ。
ジャドーは風を利用して真空壁の外側で宙に浮いている。
もう一度竜鉤爪を試してみたけど、バチィッと弾かれてしまった。
さて、どうするか?
モタモタしてると巻き込まれて切り裂かれてしまうし……あー、もう!こういう時に経験不足を恨むわ。
どうするどうする……焦りで考えがまとまらない!
さっきみたいに切り裂くことはできないし、ドラゴンみたいに飛ぶことは狐獣人の僕には無理だし……ん、飛ぶ?そうだ、跳べばいいんだ!
一か八かだけど。
一度深呼吸して気持ちを落ち着かせ、両の掌を前に出す。
グランヴァルツのスキル、獄炎放射を真空壁へ放つ。
もちろんグランヴァルツの力が加わったとはいえ、今の僕の魔力では真空壁を突破できない。
しかし、真空壁が獄炎放射を巻き込んでいき、獄炎真空壁へと変化する。
これで足場ができた。
真空部分は炎が膜を張ってくれているから切れる心配はない。……はず。
しかも、ドラゴンは炎や氷雪系に耐性があるから、ダメージは受けにくい。(漫画知識だけど)
僕は走り出し、炎部分を足場に上を目指して駆け上がっていく。
素早く行かないといけないし、うまく足場にできるか不安があったけど、うまくいってよかった。
真空壁の中心から脱した僕は竜の鉤爪を発動させ、ジャドーへ向かって落ちていく。
突破されて驚いたような表情をしたジャドーだったが、サッとかわし、かわされた僕は地面に向かって落下していく。
ここは竜の鉤爪で衝撃を和らげ……って、下に獣人が集まってて無理無理!!
そりゃ塔は炎で包まれてるし、こんな騒ぎがあれば集まってくるよね。
仕方なく竜の鉤爪を解除して脚のみで着地。
~~~~~つぅ~~~~……さすがに痺れる……靴もさすがに少し燃えちゃってるや。
「なんだなんだ!?塔が風や炎に包まれたと思ったら今度は子供が降ってきたぞ!!」
「見ろ!上に誰かが浮いてるぞ!!」
「大丈夫かい、君。なぜ空から?」
あ、やばい。これでヴァンだって気づかれたら指名手配されそうだ。
僕を気遣ってくれる獣人達も、ありがたいけど今はどこかに行ってほしい。
とにかく、指名手配される前になんとかしないと……って言ってもどうやって上まで行くか。
頭を掻きむしって考えてると、獄炎真空壁が消えてしまった。ジャドーが解除したのかな?だとするとこれは……
「炎と風の壁が消えたぞ!中を調べるんだ!!」
ちょ、何考えてんの!?レベルが高い奴ならまだしも、一般獣人が入ったら!!
数人が入ったとこで止めるために僕も入ったけど、その瞬間にまた真空壁によってまた閉じ込められてしまった。
やはり罠だったか。
ザワつきがある中、僕はまた上へ向かおうとしたら、服を引っ張られた。
さっき獣人質にされてた子供だ。
「お兄ちゃん……」
とても不安そうな表情だ。早く何とかしないと。
「で、いったいどうすんのよ?」
……なんか聞き覚えのある声がしたんだけど。
そ~っと振り返ってみると、両腕を組んだシルフィーがそこにいた。
なんでここにいんの!?
「あら、ここにいるのが不思議そうな顔ね」
「当たり前でしょ!?」
「あんなすごい慌てようを見たら気になるわよ。それに、なにがどうなってるのか知りたいしね」
うぐ……言っていいのかダメなのか……てか、今はそんな場合じゃないんだけど。
周りの連中も「どうなってるんだ」「説明してくれ」と騒ぎ出した。
あー!こんな時にヴァン本人がいてくれたら!!
「とにかく危ないからここにいてください!終わりましたら説明しますんで!!」
そう言って僕は三度階段を駆け上がっていく。
あー、もう。平和な世界の国にいた僕がこんなことをやってるなんてね。
でも、僕は頑張って強くなるって決めたんだ。
「なんだ、ずいぶん遅かったじゃないか」
「うるさいな。お前が余計な事をするからだよ!!」
後ろには野次馬が来てるから巻き込む可能性があるんだよなぁ。
「ねぇ、あれってアンタの仲間なんじゃないの?助けてもらったっていう」
なあぁ!!?いつの間にか隣にシルフィーがいる!!
「ちょ、なんでここにいるのさ!」
「あら、手伝ってあげようとしてるんじゃない。」
「危ないからさが!?」
突然飛んできたかまいたち。
とっさにシルフィーを突き飛ばす形でかばったため、かまいたちが僕の腕を切り裂いた。
いってぇ……
「あ……あ……」
「大丈夫……?シルフィー……危ないから下がってて……?」
怖かったのか、涙目で震えてて動こうとしない。いや、罪悪感で動けないのかな?
僕はシルフィーを担ぎ、野次馬として来ていた獣人達に託し、下へ避難しておくように頼んだ。
とりあえずはこれでいいか。
あー……左腕が使えないのがつらい。
「クック……片方の腕は使い物にならなくなったな。観念して死ぬか?」
「まだ右腕と両足が動く!ていうか、今のは明らかにシルフィーを狙ったでしょ!!」
「当り前だろう?まずは弱いのを蹴散らす。戦いの基本だろう」
「シルフィーはこの戦いには無関係でしょ!!」
僕は走り出し、右腕の竜鉤爪で攻撃したけど、僕の身体が突然浮き出した。
これは……風か!?やっば、身動き取れない!!
風で浮かされ、少しずつ塔の外側へ移動されていく。
こうなったら……
獄炎放射を移動方向へと放ち、塔の外側への移動を阻止する。
これ、完全に魔力残量勝負だ!
……やば……残り少なくなってきた。このままじゃ、奴に一撃をくらわす技が……と思ったら、突然風が止み、僕は塔へと落下した。
な、に?
「ち……魔力切れか」
は……はは、ラッキー。
塔を覆っていた真空壁も消えている。
「そりゃ、真空壁をずっと発動させていたらね」
「ふん、お前なんか剣だけで十分だ」
剣を鞘から抜き、一振りして言い放つジャドー。
うん、勝てる!
同時に走り出し、ジャドーの剣をかわして背後へ周ると、究極スキル『神炎光陣拳』を放つ。
これは、ダメージを与えると同時に聖なる炎が身体の中の邪悪な魂を外へと出すスキルだ。
これにより、ヴァンの腹部分から黒い塊が飛び出した。それと同時に、ヴァンの身体が力が抜けたように倒れこむ。
間違いない、あの黒いのはジャドーだ。
僕は駆け込んでヴァンの身体を支えて無事の確認。よかった、息があるから無事だ。
「おのれぇ……っこのガキが……」
「ヴァンの身体、返してもらったよ」
「ク……覚えてろ、いずれお前を殺す!必ずだ!!」
そう言うと、ジャドーがどこかへ飛んで行った。追いかけたいけど、今はヴァンの方だ。
ヴァンを担いで下へ降り、駆け寄ってきたみんなに戦いは終わったことを告げる。
うわ、塔の周りの建物や道がすごいことになってる……ほんとに巻き込んですみません。
「あの、すみませんがどこかで休めるとこありませんか?」
「私は町長だ。君達、ギルドの者だろう?何があったか聞きたいし、私の家へ来なさい」
町長って依頼の?
とにかくヴァンを休ませるために虎獣人の町長の言葉に甘え、着いていくことにした。
後ろでシルフィーが騒いでいるが、とりあえずスルーを……
「ちょっと、無視ないで何がどうなったのか教えなさいよ!」
「……はぁ。後で教えるから待っててよ」
「……わかったわ。逃げたら許さないからね」
そう言ったら腑に落ちないような感じで言われた。
正直、なんか嫌な予感がするから言いたくない……よし、逃げようかな?うん、町長の話が終わったらそうしよう。
そう決心すると、先に行く町長に着いていく。
初の戦いはとりあえず終わりです
ジャドーとはまたどこかで戦います




