12.グランヴァルツと封印されていた悪魔
ちょっとずつPVが増えています。
嬉しいです!
坑道の中は薄暗かった。
一応、光のエレメントはあるけど前世のトンネル並みの明るさと暗さだ。
これ、モンスターが出てきたら戦いにくいだろなぁ……
ヴァンとはぐれないように気をつけないと。
しばらくして、壁に穴が開いて通路になっている場所を発見した。
おそらくここが依頼の場所なのだろう。
ただ、ここはエレメントがないため、通路は真っ暗だ。
ヴァンが小型のランタンに入った光のエレメントを出したけど、奥の方がわからない。
しかし、何もいない……シルフィーによると、唸り声が聞こえたとの事だったけど……
でも、さっきから感じるこの嫌な予感はなんだろうか……?
「しっかし何もいねぇな……一本道だし、今んとこ脅威はなさそうだが……なんだ?この違和感は」
ヴァンも感じているみたいだ。
とりあえず調べるしかないんだ。
すると突然エレメントが消えて真っ暗になった。
え、一体何が!?
「コウジ!逃げろ!!」
突如響いたヴァンの声。
なに!?何が起こったの!!?
エレメントが再び光りだし、辺りが照らされる。
そして、僕は固まってしまった。
ヴァンの姿がなく、彼が持っていたエレメントのランタンは地面に転がっていたのだ。
え……ヴァンはどこへ……?
あの真っ暗の中、誰かがヴァンをピンポイントで連れ去ったっていうの?
あの嫌な予感はこれだったのだろうか?
……いや、まだ感じる。
僕なんかが何ができるかわからないけど、ヴァンを助けないと。
落ちているランタンを手に取り、僕は前へ進んだ。
前だけでなく、前後左右を見ながら進む。
ヴァンを襲った何かがまた来るかもしれないから、油断はできない。
しかし、光が消えるなんて……いったい何があったんだろうか。
もしかして、シルフィーが言ってた唸り声の主?
まだ何とも言えない。
とにかく、前に進もう。
進んでいたら道が二手に分かれていた。
これ、どっちに進んだらいいんだろか?
迷ったときは何かで、迷ったときは無意識で左を選ぶから右のほうがいいってのを聞いたことがあるけど……よし、右行ってみるか。
右の通路へ進み、前へ歩いていく。
明かりは僕の周りだけで、前後とも真っ暗だ。
うぅ……怖い……でも、絶対にヴァンを見つけないと。
しばらく歩くと、通路を抜けて広そうな空間に出た。
ここにヴァンがいるのだろうか?
「ほぅ……ここで誰かと会うのは何百年ぶりか?」
突如、とても威圧感のある誰かの声がした。
ど、どこに……もしかして、ヴァンを連れ去った奴か!?
「もう少し奥だ」
奥……
ゆっくり進むと、赤い壁みたいなのが見えた。
ランタンを上に上げて見上げると、とても大きい……ドラゴンがいた。
「ドラ……ゴン……」
「ほぅ、獣人の狐の子か。なぜここにいる?」
「ギルドの仕事で……ここの調査に……」
実際に見るとなんて威圧感なんだ……
会ってみたいとは思っていたけど、こんなに凄みがあるなんて……
もしかして、このドラゴンがヴァンを?
……いや、ありえない。
この大きさであの通路は通れないし、第一さっき「誰かと会うのは何百年ぶり」と言っていた。
てことは、ヴァンと連れ去ったのは違う。
……年がいくつなのかが気になるけど。
とにかく、もう一つの道へ行かないと!
「む、もう行くのか?」
「仲間を探さないといけないので!途中のもう一つの分かれ道へ行ってきます!」
「もう一つの道……」
ん?なんか真剣な顔をしだしたぞ?
いったいどうして……!?
僕が来た道から衝撃波みたいなのが飛んできた。
ドラゴンがとっさに腕でガードしてくれたから助かったけど……いったい何が……
「よぉ……久しぶりだな、グランヴァルツ!」
え……ヴァン?
通路から剣を担いでいるヴァンが現れた。
え、なに?なんか雰囲気が……ていうか、目つきが違う?
あんな悪そうなヴァンの顔、初めて見たんだけど。
「やはりお前か。その者の身体を乗っ取ったんだな?」
「おお、動きやすくて丁度いいぜ」
……話がついていけません。
え、知り合いみたいな会話だけど……なに?身体を乗っ取ったって?
「狐の子よ。あれはお前の仲間か?」
「え、うん。ヴァンっていうんだけど……」
「残念だが、今はその者ではない。ジャドーという悪魔に身体を乗っ取られている」
はい?
「奴は千数百年程前に今みたいに身体を乗っ取り、その者の力で災害をもたらしていてな、いくつもの街が滅んだのだ。それで我は奴を封印し、この洞窟に閉じ込めたのだが……我の寿命が残り少なくなったせいで封印が弱くなり、出てきてしまったようだ」
「じゃあヴァンは……」
「うむ、奴を追い出さぬかぎり、戻らぬだろう」
それは困る!
最初の敵が呪われしヴァンとか……酷いな。
最初から右じゃなくて左行ってれば、大丈夫だったかもしれないのに。
街をたくさん破壊するような邪道な奴にヴァンの身体を使われてたまるか!ジャドーだけに!
……ごめんなさい、言ってみたかっただけです。
とにかく、戦って追い出さないと。
僕は剣を鞘から取りだし、構えた。
「まて、ここは我がいこう」
のっそりとドラゴンが僕の前へ出た。
それを見たヴァン……いや、ジャドーがさらに邪悪な笑顔になった。
「ちょ……ドラゴンってさっきの会話からだと残り寿命が少ないんでしょ?戦ったりしたら……」
「なに、アイツを復活させたのは我だ。我が行かねば割に合わん。あと、我の名はグランヴァルツだ」
「グラン……ヴァルツ……」
グランヴァルツが再びジャドーに向き直し、ジャドーは一歩前に出た。
「クックック……いいねぇ……やっとテメェに復讐できるぜ!」
ジャドーもヴァンの剣を構えた。
二匹の間に木枯らしが吹いてるような緊迫の中、二匹は対峙していた。
最初に動いたのはグランヴァルツで、目がカッと見開いて炎のブレスを吐き、ジャドーを包み
込んだ。
だけど、ジャドーの身体は風で守られており、炎はその風で消し飛んだ。
ジャドーは剣に風を纏い、それを斬撃にして飛ばしてきた。
グランヴァルツは両腕でガードするけど、吹っ飛んでしまった。
ちょ、ヴァンの身体ってこんなにスペック高かったの?
いつもシーナに蹴り飛ばされてるのに……びっくりだよ。
ジャドーは邪悪な笑顔でゆっくりと近づいている。
きっと、グランヴァルツにトドメを指す気なんだ。ヴァンの身体でそんなことさせない!
僕はグランヴァルツの前に出た。
「なんだ、お前は?死にたいのか?」
「僕がお前を止める!ヴァンの身体でこれ以上好き勝手させない!!」
「ほぅ?ガキが言ってくれんじゃねぇか……よ!!」
ジャドーが一気に切りかかってきた。
僕はギリギリ剣でガードした。
だけど力の差が圧倒的で、僕の剣が弾かれてしまった。
「どうした?俺を止めるんじゃなかったのか?」
剣を顔面ギリギリで差し向けられ、動けなくなった。
くっそ……僕の手足と奴の剣のリーチに差があって直接攻撃できない。
「もちろん止める……さ!」
土を握り、バッとジャドーに投げつける。
奴が怯んだ隙に腕を掴み、背負い投げで地面に叩きつけ、この隙に剣を拾う。
前世で体育の授業で柔道をちょこっとやっただけだけど……うまくいってよかった。
「くっ……このガキ……」
「やられるわけにはいかないんだ!勝つためなら……なんだってやってやる!!」
「調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」
ジャドーが持つ剣を風が包んでいく。
これ、グランヴァルツを吹っ飛ばした……いや、もっとでかい!
「くらえ!!真空空列斬!」
風の刃が竜巻となって僕に襲い掛かる。
やばいやばい!
僕は走るけど、あっちの方が速く、今にも吸い込まれそうだ。
く……もう……僕は吸い込まれ、身体を切り刻まれて上へ叩きつけられ、地面へと落ちていく。
「ハッハッハッハッハッハ!そのまま落ちろぉ!!」
ごめん、ヴァン……やはり、僕なんかじゃ……
地面が近くなったところで僕は目を瞑った。
しかし、いつまでたっても地面に叩きつけられた感触がない。
目を開けると、僕はグランヴァルツの大きな手の中にいた。
「間に合ったか……すまん、気絶してしまっていた」
「グランヴァルツ……ありがとう」
僕はグランヴァルツの手から降りようとする。
「まて、お前に頼みがある」
頼み?
「お前、我と一つになる気はないか?」
男の憧れ、ドラゴンの登場回。
そして、やっとこさ戦闘です。




