002
「ただいま~」
今日も今日とて、魔法が発現しなかった。その事に少々落ち込みながら、フィルは自宅の扉を開け、家の中に入っていった。
「あら、おかえり。今日も遅くまで、どこに行っていたの?」
メアリーは、フィルがどこで何をしているかを知っているが、本人には教えていないので、知らないふりをし、そう聞いた。
「う、うん。ちょっとね」
それに対するフィルの言葉はいつもこんな返し方だ。言葉からバレバレなのは明らかなのだが、本人は全く気づいてない様子だ。
「ははっ。いいじゃないか。俺も若い頃は女のケツを追いかけていたものだぞ?フィルも男だ。それが普通なんだよ」
「違うからね!?そんな事するのは父さんだけだよ!・・・え?母さん?何で僕のことを怪しげな目で見てるの?何でもないわよって・・・何でもないような目じゃなかったよねぇ!?ねぇってば!」
この家族はいつもこのような感じだ。ファルムンドが冗談をいい、メアリーがそれに乗っかり、フィルが叫んで疲れる。このような事が毎日のように繰り返されていた。
「ふふふっ。さあ、出来ましたよ。今日はフィルが大好きなメガルーの塩鍋よ」
「やったあ!・・・って、話を逸らさないでぇ!ちゃんと僕の話を聞いてぇええええ!」
メガルーとは、地球でいう、鴨のような動物だ。なので、メガルー鍋は、いわゆる鴨鍋みたいなものだ。
「はいはい。後でねぇ~」
「フィル?女の落とし方は、パパに聞くんだぞ?ちゃんと教えてやるからな?」
「だから違うって!」
そんなこんなで、クローバー家の夕食は、平和に進んでいくのだった。
ーーーーーーーーーーー
「う、ううん・・・」
その日の夜、フィルは夢を見た。
男が王宮のような場所にいる。そして、王様のような人に何かの薬を手渡された。
場所が切り替わる。
その男は、暗い部屋の中にいた。男が放つ炎の魔法により、あたりが照らし出される。そこにあったものは、不死者の群れ、群れ、群れ。
いくら倒しても出てくるアンデットの波。男の魔力が尽きかけた時、男はカバンをまさぐり、ある薬を取り出した。それは、あの、王様にもらった薬だった。男はそれを飲み干す。飲んだ瞬間に可視化できるような魔力が溢れ出る。そして、男はそこにいる不死者共を右手を振るだけで、燃やし尽くし、そのまま、その場に倒れてしまう。
視界が切り替わる。
男は暗いところにいた。周りをまさぐっても、あるのは壁ばかり。上も下もわからなくなり、男の意識は、そこで一旦落ちた。
また視界が切り替わる。
急に視界が明るくなった。そこにいたのは・・・ファルとメアリーによく似た人たち。しかし、二人ともとても若々しく見えるので、同一人物ではないだろう。ファルに似た人が、自分に剣を突き立てる。男は堪らず、無詠唱で、防御魔術を展開する。ファルに似た人の顔が驚愕に変わる。メアリーに似た人がナニカをいい、そしてーーー
「朝よぉ!フィル!置きなさい!」
「うわぁ!」
気づけば、もう朝だった。
「う・・・ううん?ナニカ変な夢を見てたような・・・何だったけ?」
「何寝ぼけているの。もう朝よ。早く降りてきなさい。朝ごはん出来てますよ。」
「はぁい」
そうして、また新しい一日が始まる。
その日、フィルは、いつものように魔法の練習に行く。
そして、帰ってきた時には、その夢を見たことさえ、すっかり忘れていたのだったーーー
毎日投稿できるかな?と思っている作者です。
出来たらやりたいと思います。
これからも皆さんよろしくお願いします。