表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

プロローグ

「ハァッ!!」


 一人の男が大剣(ラージソード)を振り回す。振り回した大剣は、ゾンビにあたり、そのまま、ゾンビを窓際に吹っ飛ばした。


「メアリー!今だっ!」

「はいっ!【聖十字結界(サンクチュアリ)】!」


 その言葉を受け、メアリーと言われた女性が、魔法を放つ。放った魔法は、【聖十字結界(サンクチュアリ)】。アンデット系のモンスターを浄化させる、神聖魔法と呼ばれているものだ。その光を受け、ゾンビは異臭を放ちながらも消滅する。


「はぁ、はぁ、やっと終わったか・・・」

「ええ、ひきつけ役お疲れ様です。ファル。」


 ファルと言われた男は、息を吐き出しながら、メアリーの方に歩いていく。


「ここのモンスター部屋も終わったぞ。今何階層ぐらいだ?」

「えと・・・94階層ぐらいでしょうか。」


 2人は、ここ、Sランクダンジョン【腐敗の塔メリオス】に挑んでいた。ここを攻略した人は、まだ誰もいない。そもそも、何階層あるかさえ分かっていないのだ。そんな所を二人で攻略しているのだから、二人の実力は、相当なものだと言えるだろう。


「次は95階層か。このダンジョンには5階層ごとにフロアボスがいるからな。今度はどんなやつが出てくるのやら。」

「全くです。魔力も回復させないといけませんね。少しここで休みましょうか。」


 メアリーが提案し、ファルもそれに同意する。


 そして、30分ほど休憩した後、2人は95階層に続く階段を上り、フロアボスがいることの象徴。大きい黒く塗られた扉の前に立っていた。


「・・・あと何階層あるか分からないが、いっちょ行くか!」

「ええ!行きましょう!」


 二人で拳をぶつけ合い、扉に手をかける。


 すると、扉が開き、中に明かりがともされた。


「・・・ん?なんだあのチッコイの。新種か?」

「このダンジョンには、アンデット系が多くいますから、人型のモンスターは珍しくありません。珍しくありませんが・・・確かに、あれは小さいですね。大体、1.2メートルぐらいでしょうか?」


 そこにいたのは、黒い装束を纏った、人型の何か。身長は、子供のようで、手に片手剣を持っているのが伺える。


「とりあえず、私が【聖十字結界(サンクチュアリ)】を撃ちます。その後、ファルが近接戦闘するということで。」

「了解。あいつは剣を持っているから、魔法は使えないだろう。でも、一応警戒しておくか。【身体強化(フィジカルブースト)】」


 ファルが身体能力を強化したところで、そのナニカが、振り返る。フードのせいで、顔は見えないが、ファルにはそのフードの奥で、笑っているように感じた。


「行きます!【聖十字結界(サンクチュアリ)】!」

「おうっ!【加速(ドライブ)】!」


 メアリーが神聖魔法を撃ち、相手が怯んだところをファルの大剣で切る。それがこのパーティーの定石であり、それこそが、強さの秘訣だった。


「うおおっ!喰らえ!【豪破斬】!」


 ファルの大剣から、不可視の斬撃が飛び、それと同じ速度で、ファルがナニカに切りかかる。普通のモンスターだったら、そこで終わり。もしくは、瀕死状態になるはずだった。

 そう、普通であれば(・・・・・・)。


「!?嘘だろっ!?」


 そのナニカは!見えないはずの斬撃を受け流すような動作を見せ、見るからに細い片手剣でファルの大剣を受け止めていた。


「コイツ・・・今までのやつとは違う!・・・・・・?メアリー!【聖十字結界(サンクチュアリ)】は発動したはずだろう!何故こいつはピンピンしてるんだ!」


 そう、ファルが突進したのは、メアリーが【聖十字結界(サンクチュアリ)】を発動した後だったのだ。それなのに、そのナニカは、まるで、そんな魔法は無かったかのように、ファルの攻撃を受け止めていたのだ。

「おい!メアリー!答えろ!」

「ーーーーーされました・・・」


 メアリーが何やら呟くが、ファルには断片的にしか聞こえない。


「何だ!なんて言ったんだ!」


 そう聞き返すと、メアリーは、青ざめた顔で、はっきりと、こう呟いた。


「・・・抵抗(レジスト)されました・・・」

「・・・はぁ?」


 抵抗(レジスト)とは、魔法を打ち消す、もしくは、無かったことにする技術だ。例えば、火の魔法に、水の魔法を打ち込めば、相殺するとこができるように。


「っ!有り得ねぇだろ!コイツは見ての通り、剣さばきが達人級だ!それなのにお前の魔法を抵抗(レジスト)出来る魔力も持っているって言うのか!?」

「そのようです!気をつけてください!コイツ、さっきまでのヤツとは、全てが何段階も上です!」


 その事実に気がついた時には、ナニカは、もう行動を開始していた。


「【ゴウエン】・・・」

「なにっ!」


 そのナニカが放った魔法は、レベル4。中級魔法程度の炎系統の魔法だ。


 魔法にはレベルが1から10まであり、数字が大きくなるほどに、威力や習得の難しさ、そして、使用に必要な魔力が上がっていく。

 今回の魔法はレベル4。中級の下程度の能力だ。

 しかし、レベル4でも、十分に人を殺せるだけの威力を持っている魔法だった。


「クソッ!メアリー!コイツを引き付けておくから、神聖魔法レベル6の【上位聖十字結界(ハイサンクチュアリ)】の準備を!」

「っ!分かりました!どうけ死なないでください!」

「当たり前だ!」


 そんなやりとりを交わしつつも、ナニカが放つ魔法を避けていくファル。

 そして、メアリーはレベル6の神聖魔法を放つための準備を始める。その所要時間は5分。詠唱が長い分、効果が高いのが特徴の魔法だ。


「【ケンゲンセヨ】・【イニシエノワザワイヨ】・【ワレーーー」


 メアリーが詠唱し始めた、その直後、ナニカも同じように詠唱を始めた。


「っ!急げメアリー!コイツ、上位の魔法を使う気だ!」


 ファルが詠唱を止めようと、攻撃するが、(ことごと)く、片手剣でそらさらてしまう。


 そして、詠唱時間は終わり、メアリーの魔法が発動する。


「ーー願うものなり】!【上位聖十字結界(ハイサンクチュアリ)】っ!」


 辺りを聖なる光が包み込む。その光がナニカに当たろうとした時ーー


「ーーヲモトメルモノナリ】・【アンコクノウズ(暗黒の渦)】」


 ナニカの魔法が完成し、ナニカを中心に、黒い渦が出現する。


 そして、聖なる光と黒い渦が拮抗し合う形になる。


「っ!ファル!このままじゃ押し負けます!」


 メアリーの言った通り、徐々にだが、光の方がこちら側に押し戻されていた。


「っ!仕方がない!俺が突っ込む!メアリーは、俺が突っ込む方向に、威力を集中させてくれ!」

「分かりましたっ!」

「これでも喰らえバケモノ!【豪剣一閃】っ!【属性付与(エレメントエンチャント)聖】!」


 ファルの持っている剣が光をまとい、そのまま光の斬撃となって、闇の渦の中を突き進む。

 その後から、ファルが光をまとった剣で突進し・・・


「滅びろっ!【滅剣ゼクスマキナ】っ!」

「グッ!」


 ファルの大剣の形が変化し、ナニカの肩にその刃が届き・・・

 ナニカを文字通り、一刀両断した。


「グギャアアアアアア!」


 その断末魔とともに、ナニカの姿は掻き消えた。

 それとともに出現する宝箱。


「・・・やったか」

「・・・・・・ええ、そのようですね。」

「っっっ!やったぞ!」

「ええ!ええ!やりましたよ!」


 2人は喜び合い、お互いに、疲れが出てきたのか座り込んだ。


「よし!これでこの迷宮はクリアだな!やったな!俺達が最初だぜ!」

「そうですね!良かったです!本当に良かったです!」


 その15分後、2人は宝箱の中にあるものを確認するため、宝箱の前にいた。


「おしっ!開けるぞ!」

「焦らさないでくださいよ。早く開けてください!」

「おうっ!」


 そうして、ファルが宝箱を開ける。そこにはーー


「・・・へ?」

「・・・あら?」


 中を見た二人が変な声を出した。それもその筈だ。その宝箱の中には・・・


「スゥー・・・スゥー」


 穏やかそうに眠っている、赤ん坊が入っていたのだったからーー




 宝箱を開けた瞬間、その部屋に次に続く扉が出現したことに、2人はまだ気づかないでいたのだった。

今日の分はこれで終わりになります。

皆様、これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ