社食
短めです。
会社での私の立ち位置は、お局。
私より年上の女子社員は結婚しているか、寿退社してしまっている。
同期のやつも何人か居るが、全員お局扱いだ。
そんなこともあって食堂に行くと私が教育係をつとめた人が何人か居て私の席をとっていてくれる。
「松本さんこっち空いてます‼」
「松本先輩こっち日向で温かいですよ‼」
「松本さん‼聞いて欲しいことがあるんでこっちお願いします‼」
私は聞いて欲しいことがあると言った後輩の百合ちゃんの横に座って食堂のきつねうどんをすすった。
「松本さん、私好きな人が居るんです。」
「うん。」
「でも、勇気がなくて………」
「勇気って出ないよね。」
「………松本さんも恋してます?」
適当な相づちをうっていたらあらぬ疑いをかけられた。
「いや、全然。」
「松本さんは恋した方が良いですよ‼紺野係長はどうなんですか?」
「いやいや百合ちゃん声がでかいし紺野君がとばっちりだから。」
百合ちゃんの顔が信じられないものをみる顔になった。
「いやいや、紺野係長は優良物件じゃないですか!しかも松本さんの事大好きだし‼」
「それは先輩に対する敬意でしょ?」
「紺野係長が可哀想だ~‼」
食堂で騒ぐのはやめて欲しい。
私は席を間違ったようだ。
「堺は何騒いでいるのかな?」
「うわ!紺野係長!ち、ちわっす!」
百合ちゃん、動揺が半端ないよ?
「松本先輩ここ良いですか?」
「良いよ~。」
百合ちゃんが蛇に睨まれた蛙状態です。
百合ちゃんはおとなしくAランチを食べ始めた。
「そういえば、お友達の家に泊まったって言ってましたけど何か面白いことありました?」
「良い酒をいっぱい飲んだよ‼酔って失敗したけど。」
「失敗?」
「寝てはいけないところで寝ちゃってね。」
思い出しただけでも恥ずかしい。
色っぽい若社長も思い出したら駄目だ。
「寝てはいけないところって?」
「人様のベッドで爆睡しちゃってね。」
紺野君がキョトンとしている。
「友達のお兄さんのベッドでね………酒はひかえた方がいいね。」
百合ちゃんが瞳を輝かせて言った。
「お兄さんイケメンですか?」
「人外ってレベルのイケメンだよ。」
「凄いじゃないですか!狙うしかない!」
「私なんか眼中に無いよ。」
私はまたうどんをすすった。
「頑張ればいけるかも‼」
「堺!黙って食べろ。」
「う、うっす。」
百合ちゃんが興奮ぎみに立ち上がると紺野君に怒られていた。
百合ちゃんは挙動不審にAランチを食べ始めた。
ああ、紺野君が係長している。
「紺野君は立派になったね。」
「ありがとうございます。松本先輩今週末、お時間いただけますか?」
「うん。終電前には帰らないとだけどね。」
「?門限なんてありましたっけ?」
「友達と友達のお兄さんが心配だからって約束させられちゃったの!私のためだって言われたら断れないよね。」
「あ、はは、そうですね。」
百合ちゃんが何故かクスクス笑い始めて紺野に殴られていたが、大丈夫だっただろうか?
紺野君の気持ちは回りにバレバレです。