END
終わります。
萌恵の妊娠発覚から1週間、漸く落ち着いて来た気がする。
萌恵の事が一段落したと言うことは、今度は若社長の事をどうすれば良いのかと悩みは尽きない。
「松本さん全然箸が進んでないですけど、大丈夫ですか?」
「あ、うん。」
そんな私を、横に座る百合ちゃんが心配している。
私は百合ちゃんに相談しようと考えた。
そして、百合ちゃんに若社長から告白されたことを説明した。
「松本先輩。」
その説明が終わった時、私の席の前に突然現れて座ったのは紺野君だった。
「松本先輩!好きです‼俺と付き合って下さい。」
「へ?」
紺野君の告白に私は首をかしげた。
す、好き?紺野君が?
………
「松本先輩以外の人は俺が松本先輩を好きだって知ってます。何時も告白するタイミングが全然合わなくて、若社長に先に告白されちゃうし、情けないのは解っているんです‼でも、俺は松本先輩の一番になりたい‼俺が松本先輩を一番に思っているように‼」
私は紺野君を見つめてゆっくりと言った。
「い、一番に……」
「そうです。」
若社長は二番で良いって言ってくれた。
私の一番は常に萌恵だ。
それは、かわらない気がする。
萌恵は私が辛いときに何時も側に居てくれた大事な人だ。
数年しか一緒に接していない紺野君と萌恵なら私は萌恵を選ぶよ。
「紺野君の気持ちは嬉しい。けど、紺野君の事は弟みないにしか見えない。ごめんなさい。」
私はハッキリと紺野君の告白を断った。
紺野君はそのままテーブルに突っ伏してしまった。
「松本さん。結論出ました?」
「へ?」
百合ちゃんはニコッと可愛く笑った。
「紺野係長は簡単にごめんなさい出来たのに、若社長の事は悩んでるんですよね?」
「………」
「しかも、若社長がしたのは告白じゃなくてプロポーズですよ。」
私は百合ちゃんの言葉にストンと気持ちが落ちてきた気がした。
若社長は私の断り辛い所を的確にねらっているんだ。
ハッキリ言って私は面倒な親友が居て、面倒な兄弟の幼馴染みがいる面倒なやつである。
私は皆が大事だから皆に流されてしまう。
そんな私のパーソナルスペースにいつのまにか入って来て私の真横に立っている不思議な人が若社長な気がする。
あの人が隣に居るのは楽だ。
私に都合が良い人だからこそ、真面目に好きになれるんじゃないだろうか?
『二番で良い。』
それって私にとって最強の殺し文句だ。
ああ、理解してしまった。
「紺野君のお陰で何だかスッキリしたよ。タヌキ蕎麦がのびのび………マズ!」
「松本さんが元気になって良かった‼」
百合ちゃん、君は良い子だ‼
心の妹だ!
「百合ちゃん、明日ランチ奢るね。」
「やったー!」
私は若社長に返事をしようとその時決めたのだった。
その日の夜、私は萌恵の家にむかった。
呼び鈴をならすと、若社長が出てきた。
「鈴ちゃん、どうしたの?」
「ゆ、優駿さんにお話が………あって………」
若社長はニコッと笑うと外まで出てきてくれた。
「考えてくれてありがとう。」
「あの、私の事を好きになってくれてありがとうございます。」
私がお礼を言うと若社長は耳をふさいでしゃがみこんでしまった。
「え?ち、ちょっと!」
「お礼とか、嫌な予感しかしない!」
な、何この人、ちょっと可愛い。
好きになれそうだと思ったら、若社長のする事が愛しく感じる。
私は若社長の腕を無理矢理引っ張って耳元で言った。
「ごめんなさい………私は優駿さんが好きになれそうだと思います。」
「へ?………それ、良い返事?」
「前向きな返事だと思いますけど?」
若社長は本当に驚いた顔をしていた。
「私は、二番で良いって言ってくれた優駿さんならずっと一緒に居られる気がしたんです。まだ、気持ちが追い付いてないですが………好きになりたいって思ってます。」
若社長は驚いた顔のまま私に手をのばし抱き締めた。
「嬉しい。泣きそうかも。自分がこんなに好きになれる女の子が居るなんて思ってなかったから………泣く。」
「大人な男の人が泣く所ってレアですよね。見せてください。」
「嫌です。」
そう言うと若社長は私をさらにぎゅっと抱き締めた。
「お兄ちゃん!いい加減にしなよ。」
萌恵の声に私はビックリしたが、若社長は離してくれなかった。
「お兄ちゃん!」
「萌恵、今、鈴ちゃんが妊娠したら萌恵の子供と同級生だな。」
「………ごゆっくり~。」
私は若社長の腕のなかで必死にもがいた。
「鈴ちゃん、早く俺の事好きになってね。」
は、早まったかも知れないと思いながら私は夜空に向かって叫んだ。
「萌恵~助けて~!」
END
最後におまけで葉月君の話をのせようと思っています。
目線は鈴ちゃんです。
今まで読んでくださった皆様ありがとうございます‼
感謝感謝です。