鈴音ちゃんと言う人 葉月目線
鈴音ちゃんとデートの日。
僕はラフなジーンズに白シャツ黒のジャケット………鈴音ちゃんに寒いから着ろと言われた黒のロングコートで、鈴音ちゃんは茶色のコートの下に黒ブラウスにジーンズのカジュアルスタイルだ。
「あの店気になってたんだよ。」
「あ!その店の横の薬局でハンドクリーム買いたいから先行ってて!」
鈴音ちゃんはニコッと可愛く笑って俺を置いてきぼりにした。
………昔だったら、泣いている。
お姉ちゃんに置いていかれた弟がどんなに寂しいか解って居ない。
この年になって泣いたり寂しいなんては口がさけても言わないが、一人で入りたくないから一緒に来てもらったんだけど‼って文句は言いたい。
渋々、店に入ると大学でよく付きまとってくる女が二人店員として店に居た。
しまった………
下調べしてから来るんだった。
遠くで三浦君よキャーって声が聞こえる………
うざい。
無視して服を物色し始めると、女二人が声をかけてきた。
「み、三浦君、き、今日はどう言った物をお探しで?」
ああ、鈴音ちゃん早く帰ってこないかな~。
「私達が三浦君に似合う服を選んであげる!」
「断る。」
僕に話しかけないでくれ。
僕の出している近寄るなオーラはこの女達には解らないらしい。
「三浦君なら、これとかこれとか………」
こいつら!勝手に服を選び出した‼
帰りたい‼
深いため息をもらすと少し離れた所に鈴音ちゃんが苦笑いを浮かべて立っていた。
「鈴音ちゃん!」
「ご、ごめんよ………一人にしてごめん。」
鈴音ちゃんは僕の近くまで来ると少しだけ背伸びをして僕の頭を撫で撫でしてくる。
僕は頭を下げて鈴音ちゃんが撫で撫でしやすいようにした。
「ああ、鈴音ちゃんに撫でられたら怒る気うせた。」
「それは良かった。」
見れば鈴音ちゃんの手にはオレンジ色の何とも言えない柄のシャツを持って居た。
「これは?」
「あ、葉月君が不機嫌そうにしてたからこれ着てもらって笑ってテンションあげようかと思って………私の。」
「僕を笑う気だった訳ね。」
「………てへ!」
僕は鈴音ちゃんの持ってる服を手に取ると言った。
「ちゃんと笑ってね。」
「着るの?」
「鈴音ちゃんが喜ぶなら着る。」
鈴音ちゃんはへにゃっと笑った。
鈴音ちゃんの笑顔に癒される。
「ちょ、三浦君‼」
「何?」
「それ着るの?止めてよ!三浦君のイメージが………」
僕は戻って来たイライラにさらにムカついた。
「関係ないだろ?ほっとけよ。」
「葉月君、女の子に厳しい………好き嫌いで人付き合いしてると就職大変だよ。」
「就職決まったから大丈夫。仕事なら我慢できる。」
鈴音ちゃんは目を見開いて言った。
「就職決まったの聞いてない‼お祝いしないとじゃん!」
「僕はいいの!今日は鈴音ちゃんの誕プレとクリスマスのプレゼント買いたいの。」
「いや、誕生日もクリスマスも毎年来るけど、葉月君の就職成功は毎年来ないでしょ!………来たら困るから………兎に角お祝いしないと‼」
「鈴音ちゃんのそう言うとこ好きだけど、今日は鈴音ちゃんを喜ばせる日なんだよ。」
鈴音ちゃんは口を尖らせて言った。
「それ着なくて良いよ‼真面目に選ぶからそれかして!」
「え?着るのに。」
「今、それ着てもらっても笑えないから良いよ。」
「着るのに。」
「………格好いい葉月君が見たいな。」
鈴音ちゃんは僕の様子をうかがう。
この人は本当に可愛いな。
「鈴音ちゃんがそう言うならおおせのままに。」
鈴音ちゃんはまた柔らかい笑顔を作った。
僕の好きな顔。
思わず僕の顔までゆるんでしまう。
「今晩葉月君の好きなもの作るね。お祝いしよ!」
「マジで!やったー‼何作ってもらおっかな?」
「帰るまでに決めてね。」
「うん。」
鈴音ちゃんは本当に僕を喜ばせるのが上手だ。
鈴音ちゃんのお陰で僕はその日1日を楽しく過ごせた。
翌日大学に行くと数人の女子に囲まれた。
「彼女が居るって本当ですか?」
「あんたらに関係ないだろ。」
彼女じゃないよ。
僕にとっては大事なお姉ちゃんだ。
まあ、誰にも言う気は無いけどね。
鈴音ちゃんは、僕を男として見ないから好きだ。
僕も鈴音ちゃんを女として見ていないから僕たちは成り立っているのかも知れない。
今日も僕の回りの女達はうるさい。
大学に来ると鈴音ちゃんが恋しくなるなんて、誰にも言えない僕の秘密だ。
明日、娘がお遊戯会で不思議の国のアリスの3月ウサギをやります‼
「お茶会よ~( 〃▽〃)」って台詞を練習しています。
色っぽく言えって先生に言われたらしい………
やれるのか?
頑張れ娘。