いっちゃん
読んでくださってありがとうございます。
朝会社でボヤ騒ぎがあった。
避難訓練のように外に逃げる騒ぎになった。
ボヤだったので大したことは無かったが消防車が来た。
………嫌だな~。
私は何だか訳のわからないフラグが立ったと思った。
お昼休みロビーで紺野君と秘書課のお局の田中織愛が消防士の人と話をしているのが見えた。
消防士‼
私が慌てて隠れようとしたのを後ろから来た百合ちゃんに肩を掴まれはばまれた。
うそ!やめて‼
「松本さん!今日は外に食べに行くんですか?」
「いや、百合ちゃん!ちょっと止めて‼」
私のテンパった声に紺野君と田中と消防士がこっちを見た。
嫌だ‼見ないで~‼
「鈴音‼」
見つかった‼
私は逃げようとしたが消防士の足の速さに勝てる訳がない。
「何故逃げる。」
「目立つからだよ‼止めて‼話かけないで‼」
「酷いだろ?傷つくぞ‼」
「いっちゃん!話は家で聞く‼だから、話かけないで‼」
そう、彼は洋太のもう一人の兄の一樹君だ。
体育会系のいっちゃんはガテン系イケメンだ。
ロビーに居る女子社員の視線が痛い。
「今日は帰るから、鈴音が飯作ってくれるか?」
「解った。作るから!」
いっちゃんは私の頭を撫で撫でした。
「あの、松本先輩の知り合いですか?」
「先輩?………ああ、萌恵っちに嫌われてる爽やかな後輩!」
いっちゃん止めてくれ‼
私はいっちゃんの腕をつかんだ。
「止めてくれ‼生きづらくなる‼」
「ああ、萌恵の兄貴とデートしたって聞いたけどまさか付き合ってないよな?」
このゴーイングマイウェーの脳筋をどうにかしてくれ‼
「デートじゃない!焼き鳥食べに行っただけ………洋太に聞いたの?」
「ああ。」
「殺す。あいつ殺す。」
「手伝うか?」
「いい………いっちゃんが手伝ったら本気で死ぬから。」
私は紺野君に笑顔をむけた。
「気にしないで~。」
見れば田中が滅茶苦茶睨んでいる。
怖い。
「三浦さんまさか彼女ですか?」
「違います!」
いっちゃんの知り合いらしき消防士が近寄ってきたから速答しておいた。
「手強そうですね。」
「そうなんだ。」
「乗っかるなよ!違いますこの人は兄みたいなものです。」
「俺はどうしてもって言うなら鈴音と付き合っても良いぞ。」
「上から目線死ね!」
「本気だぞ。」
「いらん!」
洋太の家族でまともな人は居ないのか?
いや、瑠璃ちゃんはまともだ。
まともだしバリバリのキャリアウーマンで私の憧れだ。
現実逃避してみた!
「三浦、そろそろ帰るぞ。」
「はい!じゃあ後でな。」
消防士の偉い人だと思うおじさんに呼ばれいっちゃんは私の頭をぽんぽんしてさって行った。
「松本先輩………あの人は………」
「ああ、大矢さんの弟。」
「え!似てない。」
「あの兄弟誰も似てないから……」
なんなんだ?
紺野君と百合ちゃんは大矢さんに続いていっちゃんとも会ってしまうなんて。
「厄日だ。」
私は今日の体力を全部いっちゃんに持って行かれた気分だった。
「松本、会社の中で男性とイチャイチャするなんて何考えてるの?」
そんな私に喧嘩を吹っ掛けてきたのは田中だった。
田中は私と同期。
紺野君が私を慕ってくれているのが気に入らないらしく、よく喧嘩を売られるのだ。
「イチャイチャじゃなくてからまれてたんだって。」
「嘘おっしゃい!イケメンだからって私に見せつけるみたいに‼」
ああ、面倒臭い‼
精神力をガリガリ削られた後なのに。
私は田中に頭を下げた。
「イチャイチャしたつもりは無いけど不快な気持ちにさせたならごめんなさい。」
「田中さん!松本さんを苛めないで下さい。」
百合ちゃんが私と田中の前に割って入った。
よしよし、さすが可愛い後輩。
私は百合ちゃんに抱きつきたい気持ちを押さえきれずに抱き締めた。
「百合ちゃん良い子ランチ奢ってあげる!」
「わ~い!」
私は百合ちゃんの腕にしがみついてその場を後にした。
逃走成功である。
豆腐メンタルは豆腐を食べて生きています。
豆腐旨い。
レンチンしてポン酢をかけて食うのにドはまりしています。