ジョーカー 優駿目線
今日二回目の更新です。
鈴ちゃんと焼き鳥屋に行った。
鈴ちゃんは酔うと陽気になる。
色々な人と仲良くなってしまうのには感心した。
鈴ちゃんに警戒されたくなくて味重視で選んだ店だったが、鈴ちゃんは滅茶苦茶喜んでくれた。
お洒落な店を選ぶのなんて簡単だ。
ネットで調べれば一発だ。
だが鈴ちゃんは嫌かも知れないし、俺が行ってみたい店の方が良い気がした。
女性と二人で飯を食べるのが苦手な俺だが鈴ちゃんは言い方は悪いが勝手に楽しんでくれていて安心した。
酔っ払った鈴ちゃんが俺の手を自分の頬に当てた。
かなり酔っているみたいで熱い。
驚いた。
同じような事をされてホテルに連れ込まれそうになった事を思い出したが、嫌じゃなかった。
鈴ちゃんは酔ったから帰ると言った。
俺は安心半分残念半分の不思議な気持ちになった。
家まで鈴ちゃんを送っていった。
勿論代行に運んでもらっただけだが。
鈴ちゃんとわかれた後何だかフワフワした気持ちになった。
彼女と一緒だと楽しい。
漠然と思った。
家につくと玄関に萌恵が仁王立ちしていた。
「鈴ちゃんとデートしてたんだって?」
「あ、ああ。」
萌恵の眉間がピクピクしている。
「ずるい!年末年始は鈴ちゃんと会えなくなるから今のうちにいっぱい遊んでおきたいのにお兄ちゃんが独り占めなんてずるい‼」
「年末年始は鈴ちゃんに会えなくなるの?」
「鈴ちゃん、クリスマスイブが誕生日だからその前後から家族旅行に行っちゃうの!結婚するまで続ける行事なんだって鈴ちゃんママが言ってたの‼だから年末年始は会えないの!」
俺は少し考えてから言った。
「萌恵、鈴ちゃんと年末年始一緒にいれる方法があるよ。」
「!え!何?」
「俺が鈴ちゃんと結婚すれば良い。」
「駄目!」
「よく考えて!俺は長男でこの家をつぐ、鈴ちゃんがうちに嫁に来る。そうしたら萌恵は実家に帰ればいつでも鈴ちゃんが家に居るんだぞ?鈴ちゃんとは義理の姉妹で親友なんて素敵じゃないか?」
「うっ!」
「盆に正月冠婚葬祭全部鈴ちゃんが一緒だぞ‼どうだ?俺に協力してみたくなってきたんじゃないか?」
「う、ううううううううううううううう!」
萌恵は何かと葛藤しているようだ。
萌恵を仲間に出来たら鈴ちゃんは俺をうっかり好きになっちゃうんじゃないか?
………良い。
鈴ちゃんが俺の嫁。
すごく良い‼
「り、鈴ちゃんはお兄ちゃんが苦手だもん!無理だよ‼」
萌恵の言葉に俺はフリーズした。
え?鈴ちゃんは俺が苦手なの?
頭を鈍器で殴打された気分だった。
「む、無理ってレベルで苦手なの?」
「イケメン怖いって前に言ってたの!」
ま、マジか!
せっかく好きになれた人に嫌われているなんて………
いや、今日は仲良くなれたはずだ‼
一緒に次も飲みに行ってくれるって約束したはずだ。
「………鈴ちゃん、酔うと陽気になるからあんまり期待しない方が良いよ。」
「うそ!」
「………お兄ちゃん本気?」
「当たり前だろ?萌恵の大事な親友に半端な気持ちで手を出せるわけ無いだろ?」
「手は出しちゃ駄目だよ。………でも、お兄ちゃんが本気で鈴ちゃんを好きなら応援したい気もしなくもないよ。私にプラスなのはお兄ちゃんだって解ったし………でも、鈴ちゃんがイケメン怖いって言ってるから………鈴ちゃんをあからさまに狙ってるのはイケメン爽やか後輩君ぐらいだし。」
萌恵は少し考えてから言った。
「洋ちゃんのお兄ちゃんの大矢さんと一樹君と弟の葉月君は鈴ちゃんを溺愛してるから厄介かも。特に一樹君は鈴ちゃんが可愛くて仕方がないみたい。恋愛感情は無いって言ってたけど………どうかな?」
え?鈴ちゃんハードル高すぎない?
「お兄ちゃんが一番私にプラスだよね………変な男に鈴ちゃんは渡したくないし………」
俺は萌恵にゆっくりと言った。
「鈴ちゃんと出掛ける時は必ず萌恵に連絡する。鈴ちゃんが萌恵を優先したいなら俺は萌恵を優先するように言う。萌恵の事を一番に考えてる鈴ちゃんを可愛いと思ってる。だから萌恵との友情を邪魔なんてしないと誓うだから俺に協力してくれ。」
萌恵は暫く黙ると言った。
「鈴ちゃんの様子を見てからね。絶対協力するとは言えないからね!」
俺はどうやら萌恵と言うジョーカーのカードを手に入れられたのかも知れない。
萌恵がジョーカーなのは使い方を間違えると破滅を運ぶからだろう。
俺はこのカードを大事にしないといけない。
萌恵の頭を軽く撫でると呆れたような顔をされた。
「お兄ちゃん、期待しないでね。」
俺はその言葉に苦笑いを返すことしか出来なかった。
メンタルが弱い自分が嫌になります。