はじめまして?
また見切り発車してしまった。
物心つく前から仲良しだった親友の母親が再婚したのは私が27歳の冬だった。
親友の町田萌恵は、新しくお父さんとお兄さんができた。
ハッキリ言って萌恵は可愛い。
私の自慢の親友だ。
そんな萌恵は夏に結婚する。
萌恵は夏から三浦萌恵になる。
萌恵の彼氏の三浦洋太は私の幼馴染みで、小学生の時から萌恵に片想いをしていた筋金入りの萌恵バカだ。
きっと回りがドン引きするほどのイチャイチャ夫婦になるだろう‼
いや、現実逃避はこのへんにしておこう………
「初めまして、鈴ちゃん。俺は萌恵の兄になった酒巻優駿って言います。」
「は、初め……まして。」
あの、目の前で萌恵の兄だと言っている人………
私が勤める会社の若社長に似ているように見えるんですけど?
名前まで同姓同名?
………現実逃避しよう。
私、松本鈴音は親友に鈴ちゃんと呼ばれている!
可愛いだろ?………逃避しきれん。
少し茶色がかった黒髪に銀縁眼鏡の中に意志の強そうな茶色の瞳。
180㎝はありそうな高身長。
整った顔………
確実に若社長だ。
こんなチートスペックの男が二人として存在する訳がない。
「ね!イケメンでしょ!鈴ちゃん。」
「……うん。………イケメン……」
若社長の横に並ぶ栗色のフワフワウエーブヘアーでクリクリの茶色い瞳にのっかる二重瞼は可愛いとしか言い様のない萌恵がお似合いとしか言えない雰囲気をかもし出している。
「萌恵、たしか血の繋がっていない兄妹は結婚できるはずだ。洋太の事は気にせずお兄さんと幸せになりな‼」
「え~!お兄ちゃんは魅力的だけど、結婚したいのは洋ちゃんだよ。」
ああ、萌恵可愛い。
私は思わず萌恵を抱き締めた。
「でも、鈴ちゃんが男の子だったら鈴ちゃんと結婚する‼」
「私も、萌恵がいい!洋太じゃなくて私を選んでくれ!」
「もう、鈴ちゃんは女の子でしょ!」
「むぅー。ああ、洋太に萌恵をとられるなんて泣いちゃう‼」
「結婚しても、萌恵が一番愛してるねは鈴ちゃんだよ。」
ああ、萌恵本当に可愛い。
「萌恵は本当に鈴ちゃんが大好きなんだな。」
「そうよ!だから、鈴ちゃんに手をだしたらお兄ちゃんでも許さないから‼」
いや、萌恵よ。
こんなチートスペックイケメンが会社でお局扱いされてるダサダサ女に手をだすなんてあり得ないだろう?
「萌恵、悲しくなるから変なことをお兄さんに言わないの。」
「あっ!鈴ちゃん、俺の事は優駿と呼んでくれて良いよ。」
「そんな、おそれ多いこと……」
「いやいや、萌恵の親友の鈴ちゃんとはこれから仲良くしたいから変な気を使わないで良いよ。」
いや、使わせてくれ。
お兄さん、貴方は我社の女子社員の大半が狙う大物。
狩人達に狙われたライオン様なのだよ。
私みたいな、だんごむし女が話かけることすら許されない存在なはずだ。
「はい、言ってみて。」
「へ?い、今ですか?」
「ああ。」
「ゆ、優駿さん?」
「何で疑問系なの?」
「お兄ちゃん!鈴ちゃん狙わないで!」
萌恵が要らない心配をしている。
萌恵、マジ可愛い‼
心の友よ!
私がほっこりして笑顔を萌恵に向けると若社長が小さく呟いた。
「…………面白い。」
なんと言ったかは解らなかった。
「へ?今なんて?」
「独り言だよ。」
その時の私は思っていた。
親友の兄なんてポジションは私にはあまり関係ないし、萌恵と遊ぶ時にちょっと顔を合わせるかも知れないぐらいだろうと………
読んでくださった方ありがとうございます!