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春男の食器棚

春男の食器棚


その日は夏だというのに、クーラーのかけすぎて寒かったせいか、春男は温かい飲み物を飲んでいた。あまり春男が温かいものを飲んでいることがないせいか、気になったのだろう。

 春男の持っているカップのことである。


「そんなの、あったか?」

「いや、引出物でもらった。結婚式にでかけてね。」

「お前が?誰の?オレも知り合いか?」

「いや、外国で会った日本人の女性だよ。ずっとパソコンで連絡取ってたんだ。たしか三十前だと思ったけど、だんな様が十三年上でね。いまどきすごい結婚式だったよ…。」

春男はにこやかな顔をした。

「派手ってことか。」

「うん。お色直しだけで三回。ウエディングに、着物にドレスだろ。マジシャンのマジックありの、老人たちの歌ありの、親への手紙と花束贈呈ありの、いやー久しぶりにみたよ。」

「そりゃ、すごいな。」

 そう言われてみればそんな結婚式に行ったのは、オレが子供の頃に行った親戚の結婚式くらいな気もする。


「で、これか。」

オレは視線をテーブルに置かれている食器に移した。 

「このあいだ、コップ割っちゃってね。せっかくだし、すぐにつかってるんだ。」

オレは春男の食器棚を見つめて軽くため息をついた。


顔に似合わず(と言っても見えないが)、オレの母親は食器好きでオレもよく買い物に付き合わされた。つまり。食器の値段がだいたいのメーカーのものならわかる。そして、この引き出物のカタログから選んだコップは、いい値段する。決して悪い物ではない。


 しかし春男の食器棚にはまったくと言ってもいいほど合っていない。春男には基本的に統一性というものが欠けている。春男曰く、食器は自分の家から一枚ずつ、自分の分持ってきた、とのこと。

そのせいかサイズも大きさも深さもバラバラだ。茶碗も、おわんも自分の分しかないのだ。他の人はある皿で食べることになるのだが、オレはすっかり、それに慣れてあまり気にならないのだが、初めてくる人は、アイスクームでもいれそうな皿にサラダが入ってきたり、どんぶりサイズのおわんにスープが入っていることがあったりと、気になるらしい。


オレも最初のころ、秋刀魚が乗るような細い皿に、デザートのケーキが乗ってきた時は嫌がらせなのかと思った。なにか言おうと春男のほうを見た。

「おい……。」

「んー?」

そのとき春男はデザートをおわんに入れて食べているのを見て、こいつはこういう奴なのだ理解したものだった。オレは何も言わないことにした。


 春男の父親は自分が料理をするせいか、食器はこだわっているらしい。だが、料理研究家の母親はまったくにしないようで、そっと旦那さんが意見をするらしい。

 春男は、その母親に似たのか、食器に関してはまったく気にしていないようで、食器の愛好家でなくとも整頓好きな人がいたら錯乱するだろう。それほどまでにバラバラなのだ。

たまにくる、春男の父親は妻の食器のセンスになれているのか、春男の食器棚の中身に関しては、何も言わずに、できる限りの整頓をして帰る。


 だが、春男はそんなことはまったくに気にせずに、食器を使う。皿のセンス、そんなことを春男に期待するだけ無駄だ。

オレは助言をすることもなく、コーヒーカップで紅茶をすすった。

「寒いなら、クーラー切ればいいのに。」

 そうだな、といいながら春男はクーラーのスイッチを切った。


これにて夏編を終了致します。

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