ブリッツ王国VSプランチェ王国 1
『それではブリッツ王国VSプランチェ王国の代理戦争を開始します!!』
ゴーン、ゴーン
代理戦争の開始を知らせる号令と鐘の音が響き渡る。
遂に長年親密な関係を築いてきたプランチェとブリッツの戦いが始まった。
「プランチェ王国の誇りを胸にブリッツ王国を薙ぎ払え!!」
「「「はっ!!」」」
プランチェ陣営側ではアダムズの指揮の下、攻撃陣が出撃を開始した。
一方のブリッツ陣営は、
「えーっと…その…み、みなさん、どうか無理はなさらず…が、頑張ってください!」
「陛下、何と慈悲深きお言葉…」
「なんと初々しいお言葉…」
「何としても陛下に勝利を!!」
リネアがこれから出陣しようとする一同を心配する言葉にダンをはじめ一般兵士が感激している。
いつもはヒジリが仕切っているが、ヒジリ不在の今回はリネアが代わって、檄を飛ばそうとするが慣れていないため少しグダッている。
しかし、幸いにもダンをはじめとして兵士の士気は高まっており、結果オーライである。
「いや、リネアちゃん。心配してくれるのは嬉しいんだけど、それじゃあ士気が上がらないんじゃない?」
「全く…もっと気の効いたこと言えませんの?」
「す、すみません!!」
そんな一風変わった光景に少し呆れ気味になっているジョシュアとセシル。
「まぁ、ヒジリ君がいなくて不安だろうけど、今回は僕らもいるし。気楽に頑張ろう。」
「あんな雑魚共、ヒジリ様の手を煩わせるような相手じゃないわ!」
「僕らも微力ながら援護させてもらうよ。」
「私も頑張る。」
「はい!――それではみなさん、ご武運を!!」
「「「おう!!!」」」
少し遅れてではあるが、ブリッツ王国陣営も出陣である。
※※※※
「あいつら、本当に大丈夫だろうな。」
そんな光景を会場から少し離れたブリッツ城内の一室で画面越しに眺める男が一人。
「とりあえず、あいつらを信じることにしたが…」
終始落ち着かない様子で心配そうに代理戦争の様子を見ながら独り言を呟くヒジリ。
「この代理戦争、やはり何かある気がする…」
今まで親密な関係にあったプランチェ王国。それがブリッツ王国がちょっと代理戦争に勝ったからといっていきなり宣戦布告。そして、いかにも怪しいタイミングで協力を申し出てきたアレンとクリスティーナ…
今回の代理戦争では納得いかないことが多すぎるのだ。
「俺の考え過ぎならいいんだが…。いざという時はルールなんざ関係ねぇ!俺がなんとかしねぇと!!」
最悪の状況を想定しながら、ヒジリは改めて鋭い目付きを画面に向ける。
※※※※
「灼熱地獄」
「薔薇の鞭」
「枝の槍」
「「「ぐあっ」」」
両陣営の攻撃陣が互いにぶつかり、激しい戦闘を繰り広げる中、ジョシュア、アレン、クリスティーナといったA級魔導士が揃うブリッツ王国側が圧倒する。
プランチェ側もブリッツの一般兵を中心に数を減らしてはいるものの、ジョシュア達三人のA級魔導士を擁するブリッツ相手に劣勢を強いられている。
「この調子でいけば意外と楽に勝てるんじゃない?」
炎魔法で敵を焼き払いながら、ジョシュアが軽口を叩く。
「ジョシュア殿、油断は禁物だ。――プランチェにはまだ僕やクリスクラスの魔導士がいる。」
「油断大敵」
アレンとクリスティーナも次々と向かってくる敵を倒しながらジョシュアに注意を促す。
「それもそうか。それに何人か強そうな奴を逃がしちゃったしね。」
ジョシュアが後を振り返る。
「それじゃあ、僕らも急ごう。」
「うん」
「そうだね。」
ジョシュア達は一層攻撃の手を強め、一気に混戦を抜け出すことに成功する。
混戦を抜け出した3人と数人の一般兵達はさらに加速し、敵大将・アダムズの下へ駆けて行った。
※※※※
「陛下、報告です!我が攻撃陣が敵攻撃陣に破られました!」
息を切らしてやってきた兵士が片膝をついた姿勢で報告を行う。
「そうか。まぁ、敵の戦力を考えればこれくらは当然か。」
息を切らす報告兵とは対照的に椅子にドカッと座った状態で余裕たっぷりの様子で独り言を呟くプランチェ王国国王・アダムズ。
「敵は凄まじいスピードでこちらの本陣に向かっている模様です。」
「そうか、御苦労。下がってよいぞ。」
アダムズが合図をすると、報告兵はすっとその場を立ち去り、自分の持ち場に戻っていった。
「おい、お前達!敵は予定通り、間もなくA級魔導士3人でこちらに攻め込んでくる。早急に陣を整えよ!!」
「「「「はい、陛下!!!」」」」
アダムズの命に本陣に残った兵士達が忠実に従う。
「敵もなかなかやるようじゃ。まぁ、アレンとクリスがいるんじゃから当然と言えば当然か。――じゃが、あくまで予定通り。悪いが最後に笑うのはワシらプランチェ王国じゃ!」
アダムズは呟きながら、ニヤリと不敵な笑顔を浮かべる。
※※※※
「もうすぐ敵本陣か。意外とあっさり来ちゃったね。」
ジョシュアがすぐ隣にいるアレンとクリスティーナに話しかける。
「ジョシュア殿、先程も言ったが、向こうにはまだ僕らクラスの魔導士が残っているんだ。油断しちゃいけないよ。」
「ゴードンは強い…」
大した傷も作らず、ここまでたどり着き、拍子抜けと言わんばかりに軽口を叩くジョシュアにプランチェ兄妹は再度注意を促す。
「へぇー、その強い魔導士ってゴードン君っていうんだ。君達とどっちが強いんだい?」
「彼とは本気で戦ったことはないからな…少なくとも僕らと実力は拮抗していると思うよ。」
「なるほど。っていうことは、君達に負けた僕にとっては格上になるってことだね。」
「ははっ、僕達に負けたなんて思ってない癖によく言うよ。」
「ジョシュア、手抜いてた。」
「なんだ、やっぱりバレてたか。まぁ、多分ヒジリ君も薄々気付いているとは思うけどね。――それで、そのゴードン君は例えばどういう魔法を使うんだい?」
ジョシュアが真面目な口調で尋ねた瞬間、
「草の刃」
無数の葉が刃となりジョシュア達を襲う。
数百にも及ぶ葉が目にも止まらぬスピードで一斉に襲い掛かってくる。
「ぐあっ」
「ぐぁー!!」
一般兵の多くが次々と倒れていく中、ジョシュア達はなんとか凌いでいく。
「俺の使う魔法はこんな感じだ。」
しばらくして攻撃が止み、ジョシュア達が改めて前方に目を向けると、そこには数十人の兵士の先頭で、顔に十字傷を持つ筋肉隆々の男が鋭い眼光を向けて立っていた。
「いやー、手荒い歓迎だね。――君が噂のゴードン君かい?」
「ああ。俺が今回の代理戦争で隊長を務めるゴードン=ジェームズだ。――アレン様、クリス様お久しぶりです。」
ジョシュアの軽口にも一切表情を変えず、ゴードンが答える。
「やあ、ゴードン。元気そうで何よりだよ。」
「……」
アレンとクリスティーナが冷や汗を浮かべながらゴードンと相対する。
「いやぁ、感動の再会中申し訳ないんだけど、正直君には用ないんだよね。――君達の対象はどこだい?」
緊迫した空気の中、ジョシュアが余裕の表情で挑発気味に切り出す。
「貴様…陛下ならば――」
「ワシならここじゃが、何か用かの?」
ゴードンが微かに怒りの表情を浮かべ、切り替えそうとする。
しかし、そのゴードンの言葉を遮り、解答したのは別の男だった。
「陛下!!」
「父上…」
「「!?」」
予想外の人物の登場にゴードンをはじめとしたプランチェ側は歓喜の表情を浮かべ、
対する、ブリッツ側は驚きの表情を浮かべる。
「このタイミングで大将自ら登場とは随分余裕だね。この戦況分かってる?」
ジョシュアが主導権を得るため、まずは得意の軽口で挑発する。
しかし、
「戦況なら分かっとるよ。――我々が勝利を目前にしているという状況じゃろ?」
アダムズは余裕たっぷりの様子を崩すことはない。
さらにアダムズは続ける。
「ジョシュア君、やっぱり君は優秀だ。じゃが、残念ながらワシらに勝つ程の強さはなかったようじゃ。――なぁ、アレン、クリス?」
「!?」
アダムズはジョシュアのすぐ後ろに立つ自身の子供、アレンとクリスティーナに向けて問いかける。
ジョシュアは目を見開き後を振り返ろうとすると、首筋に刃物が突き付けられる。
突きつけられた刃物の持ち主に視線を移すと…
「アレン君…やっぱり君は裏切るのかい?」
そこには目を反らし、申し訳なさそうにしながらもしっかりと刀を握っているアレンの姿があった。
「すまない…」
そして、次の瞬間、予想し得る中で最悪の状況を決定づける言葉を耳にする。
「アレン、クリスここまでよくやった!…手はず通りジョシュア=フリークスを討ち取れ!!」
「はい、陛下!」
「はい。」
「クソーッ!!」
アダムズの命令に従い、剣を振り上げるアレンと最後まで油断せずジョシュアの動きを牽制するクリスティーナ。
そして、無情にもその場にはジョシュアの叫び声が響き渡っていた。




