表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/29

助っ人加入!プランチェ兄妹!! 1

「アッ君!それにクリスちゃんも良く来てくれました!!」


 ヒジリらほとんどのメンバーが突然の訪問者にきょとんとする中、一人目を輝かせ、親しげに二人の下へ駆け寄るリネア。


「久しぶりだね、リネアちゃん。元気そうでよかったよ。」


 男の方は立ち上がると、優しげな笑顔を湛えながらリネアに近づく。

 長身で色白、清潔感のある端正な顔立ちからは育ちの良さが窺え、この異世界でも珍しい緑色の短髪も絵になっている。

 そして、そんな兄に無言で付き従う妹。

 兄と同じく色白で整った顔立ちに緑色のショートヘアが良く似合った少女である。しかし、兄と違い無表情で無口な様子からは、小柄な体と整った顔立ちも相まって人形のような印象を受ける。


「あっ、みなさん、すみません!――こちらの男性がアレン=プランチェ、そしてこちらの女の子がクリスティーナ=プランチェです。二人とも私がこっそりブリッツ王国の代理戦争部隊への加入をお誘いしていた方々です。」


 完全に周りのメンバーを取り残して盛り上がっていたリネアはみんなの方へ向き直り、改めて二人を紹介する。


「プランチェってことは二人はプランチェ王家と関係しているのかい?」


 ジョシュアがさっそく二人に質問する。


「はい、我々は現プランチェ国王のアダムズ=プランチェの実子にあたります。」


 兄のアモスがにこやかな笑顔を浮かべて答える。


「おい、じゃあお前らは敵国の次期国王候補ってことだろ?そんな奴らが何でブリッツの代理戦争部隊に加入したがるってんだよ?」


 アモスの答えにヒジリが重ねて質問する。


「あー。もちろん自国を捨ててブリッツに亡命するということではありません。あくまで一時的な加入、どちらかというと正式な戦力が整うまでの助っ人ってことさ。」


 アモスがリネアの頭にポンと手を置きながら答える。

 そして、相変わらず表情を変えず、黙ってヒジリの方を見ているクリスティーナ。


「あ?別に助っ人なんていらねぇよ。別に俺とついでにダンのおっさんにフリーク兄妹がいれば十分だよ。」


 アレンに頭を撫でられ、満更でもなさそうなリネアを見て少しムッとするヒジリ。


「ヒジリ様の言うとおりですわ!正式な隊員ならともかく助っ人なんて不必要ですわ!少なくともこんな怪しげなぽっと出の兄妹にヒジリ様達の助っ人が務まるとは思えません!!」


「ついでとは何だ!?」というダンの叫びを完全にスル―してセシルがヒジリの意見に続く。二人とも仮にも一国家の国王候補に対する態度ではないが、アレンは苦笑い、クリスティーナは無表情で受け流す。


「す、すみません。私が勝手に動いたばかりに……でもヒジリさんの負担を軽減するためには助っ人は必要だと思います。――それにアッ君とクリスちゃんは私の数少ない信頼できる友達なのです」


 否定的な意見が続く中、彼らを読んだ張本人であるリネアがフォローに入る。


「そうだね。僕ら兄妹とリネアちゃんはいわゆる幼馴染でね。昔はよく一緒に遊んだものだよ」

「…リネアは友達」


 アレンがリネアの説明を補足し、それに加勢するかのように今まで一貫して沈黙を保っていたクリスティーナまで口を開く。


「はい。今でもブリッツとプランチェは友好的な関係を築いています」

「うん、そうだね。」

「確かにアモス様達であれは信頼できる。」


 リネアとアレンが仲良さそうに顔を見合わせて笑う。

 そして、アレン、クリスティーナ、リネアの3人を幼小の頃から知っているダンも頷く。


「まぁ、お互い良く知った仲ってのは分かった。だが、中途半端な実力の奴が加入してもかえって俺の負担が増える可能性もある。」


 一方、そんな様子を見て、ヒジリは面白くなさそうな表情になる。


「それなら問題あるまい。アモス様はA級、クリスティーナ様もB+級の上位魔導士だ。

実力はこのダン=アルフォードが保証する。」


 ダンが自信ありげに胸を張る。


「役立たずのおっさんの推薦なんてアテにできません!」


 ダンのドヤ顔を鋭い目つきで一瞥しバッサリと切り捨てるセシル。

みるみる猫背になり小さくなるダン…。どうやら幼女にはっきりと「役立たず」と呼ばれたことが彼の心に大ダメージを与えたようだ。


「まぁまぁ、このまま話してても平行線のままだし…ここはテストで決めるってのはどうだい?」


 珍しく兄らしく、妹の仲裁に入るジョシュア。


「テスト?」


 一同疑問の表情を浮かべ、ジョシュアに説明を求める。


「うん。ちょうどアレン君とクリスティーナちゃんも二人組で兄妹だ。だから僕とセシルVSプランチェ兄妹で模擬選を行うんだよ。――まぁ、最終的な判断はリネアちゃんと代理戦争部隊隊長のヒジリ君がすることになると思うけどね。」


 ジョシュアが周りを見渡し、自分の案について視線で意見を求める。


「まぁ、俺はそれで構わん。ただ、さっきも言った通り、戦力になりそうになかったら容赦なくお引き取りいただくが…それでもいいか?」


 今度はヒジリがアレンとクリスティーナの方へ視線を向けて、返事を促す。


「僕もそれでいいよ。」

「私も。」


 兄妹は揃って頷き了承する。


「それじゃあ、さっそくテストをやろう!場所は闘技場でいいよね?」


 ほぼ全員がそれぞれ頷いたのを確認すると言いだしっぺのジョシュアを先頭にさっそく闘技場に移動する。

ただ一人申し訳なさそうな表情をすリネアを除いて…


「アッ君、クリスちゃん、すみません…せっかく来てくれたのに…」

「別に構わないよ。リネアちゃんとダン以外は初対面なんだがら警戒したり疑うのは当然のことだよ。」

「これくらい普通。」


 二人に頭を下げるリネアに、それを気にしなしないように促す二人。

 そんな一見仲睦まじく見える光景を怪訝な表情で見つめるヒジリ。


(あの兄妹なんか気に食わねぇんだよな……それに何だ、この引っかかる感覚は…?)


 初めて出会うリネアが心を許せる同世代の友達。

 リネアを獲られたようで面白くない気持ちとそれとは別に感じる小さな違和感…

 複雑な気持ちを抱きながらもヒジリは無言でそのまま闘技場へと向かって歩いて行った。



****

「それじゃあ、早速テストを始めようか。」


 一同がブリッツ城敷地内の闘技場に集結し、フリーク兄妹VSプランチェ兄妹のテストマッチが始まろうとしていた。


「ジョシュアさん、僕達はいつでも大丈夫ですよ。」

「私も大丈夫。」


 ジョシュアがいつもの軽い調子で戦闘開始を促すと、プランチェ兄妹は既に準備が整っている様子で、その振る舞いからは余裕すら感じられる。

 ジョシュア、アレン、クリスティーナが臨戦態勢に入る中……


「何でワタシがこんな無意味なことに参加しなくてはならないのかしら。」


 ただ一人、セシルは愚痴をこぼしながら不機嫌を隠そうとしない。


「うーん……そうだ!もしこのテストマッチに勝ったらヒジリ君と一日デートってのはどうだい?」

「おい、何勝手に決めて――」

「一泊二日の二人旅で手を打ちましょう。」

「仕方がないな。それで構わないよ。」

「おい、お前ら――」

「絶対に勝つわよ、兄さん。」


 ヒジリの意見は完全にスル―され、ジョシュアとセシルによる契約が交わされた。


「キャー!!ヒジリ様とお泊り!!」と先程までの不機嫌な表情から一転、先程までの一転、体をくねくねさせながらテンションを高めていた。


「ヒジリさん、またセシルさんと一緒にお出かけになられるのですね。」

「いや、俺の意思とは無関係なんだが……」


 一方その様子を見て頬を膨らませるリネア。

 そして理不尽な不満を向けられて顔を引きつらせるヒジリ。

 相変わらずの修羅場現場である。

 しかし…


「これでお二人ともヤル気になっていただいたようですし、そろそろ始めましょうか。」


 今までにこやかな表情でミニ修羅場現場を見学していたアモスが切り出す。


「まぁ、お手柔らかに頼むよ。」

「ヒジリ様とのお泊りのため、容赦しませんわよ。」


 二人とも自信満々の表情で答える。

 しかし…


「まだ…続けますか…?」

「…私達の勝ち…」


 試合を開始してから30分程経過し、アレンとクリスティーナは息を切らせながら、地面に倒れているジョシュアとセシルの二人に問いかける。


「…ワタシはまだ…くっ…!!」

「いや、僕達の負けだよ。――君達強いね。」


 負けを宣告され、セシルは再び起き上がろうとするが、兄の手によって止められる。

 ジョシュアも大ダメージを負っており、いつものように軽口を叩くだけで精一杯の状態である。


「いえ、今回はどちらが勝ってもおかしくない紙一重の戦いでした。僕達もここまで手こずらされたのは久しぶりです。」

「ジョシュアとセシルはかなり強い。」


 そんな二人に謙遜しながらもどこからか余裕の雰囲気を感じさせるジョシュア。


「そ、それでは改めて結果発表です。――アレン・クリスティーナ兄妹の勝利です!」


 リネアの慣れないアナウンスが流れる。

 そして、彼女はヒジリの方へと視線を移す。

 それに合わせて、その場にいる全員の視線がヒジリの場所に集まる。


「……分かってるよ。こいつらを部隊に入れれば良いんだろ?」

「ありがとう!!僕達もブリッツ王国の発展には喜んで力貸すよ。」

「…感謝する。」


 ヒジリの方へ近づき握手を求めるアレンとクリスティーナに握手で応じるヒジリ。


「やれやれ、偉そうにしておいて負けるなんてね」


 ジョシュアが苦笑いを浮かべながら自嘲する。

 序盤こそフリーク兄妹が圧していたものの、植物魔法と兄妹のコンビネーションをを駆使してプランチェ側が優勢に…

 終盤はどちらが勝ってもおかしくない熱戦であったものの、本当に紙一重でプランチェが勝利した。

 そして、ヒジリとアレン達が握手している姿を見たリネアは、ほっとした表情で改めて宣言する。


「そ、そして――この結果を持って、アッ君…いえ、アレン=プランチェ及びクリスティーナプランチェを我が代理戦争部隊への入隊を決定します!」


 こうしてブリッツ王国代理戦争部隊に二人の助っ人が加わった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ