第六話―作戦名ビダスニャータを救い出せ!あわよくば獣耳を―byソウ
「………」
ベッドで横になっている四人に近づく影が二つ。
前を歩く男は懐からナイフを取り出した
「そのナイフをどうするつもり?」
「!?」
ナイフを振りかぶった時に声をかけられ、後ろに居る男が驚き、ベッドの2人が起き上がった
「お父様!」
「つまりこの人が国王……」
「何をしている国王!さっさと王女を刺さないか!」
「娘を手にかける位なら!」
後ろの男が国王を急かすが、国王はナイフを自らの腹に刺した。
「なぜ私の術が効かない!?」
「この程度の術なら……娘を思う気持ちで……振り切れる」
「つまり側近風のアンタがパペットドールかな?」
「これも人形に過ぎぬ。私自身は安全な場所から見ているよ」
「なるほどねなら探し出す!」
三人は国王に応急処置をしてベッドに寝かせ、側近の男を気絶させようとした
「大きな人形に紛れているのだ、バレまい。」
「大きな人形?」
「なぬ!?貴様らエスパーか!?」
「声に出てましたよ?」
「なんだと!?」
パペットドールから居場所のヒントがつぶやかれた。どうやら思った事が口に出るタイプのようだ
「ならアリスの部屋です!」
三人は側近を気絶させてアリスの部屋に向かった
部屋につくと三人はパペットドールを探し始めた
「どこだ?」
「アリスちゃん可愛い人形たくさん持ってるな」
「これもいいね。ボタンの目に縫い合わされた様な口、さらに気味悪い人形を持ってるよ」
「本当だね……って」
「「こんな気味悪い人形が女の子の部屋にあるかー!」」
「ぶべらばっ!」
2人はその人形を地面に叩きつけた、すると人形から声が漏れた
「なぜバレた!こんなに可愛い見た目なのに!」
「オレ達舐めるな!すぐにわかるわ!」
「くっ……逃げろ!」
「「待てー!」」
パペットドールは浮いてドアから逃げ出した
「あっちって」
「俺達の寝てた場所だよね」
「おっとそこまでだ!お前ら全員そこを動くな!」
パペットドールは置いてあったナイフをベッドで寝ていた国王の首に突きつけた
「動いたらこいつの首を斬るぞ……」
「やめてください!」
「なら動くんじゃねぇぞ……人間共!奴らをぶちのめせ!!」
別の扉から沢山の兵隊が表れ三人を取り囲んだ
「どうする?」
「動いたら国王が……」
「はーっはっはっは!!いい気味だ!やれ!!!!」
「うるせぇー!!!!!!!!!」
「ぐべっ!」
パペットドールが高笑いしたらそれを超える大きさの声が響きパペットドールを殴り飛ばした
「あ"ーピーピーうるせぇのがいんなぁ……あぁ?」
頭に青筋の浮かんでいるフユが指を鳴らしながらパペットドールに近づいていく
「ま、まて……アイツらがどうなっても――ぐべっ!」
「縫い合わされた様な口してる癖にうるせぇな……」
「フユーそれがパペットドールね」
「あ"?あぁーこいつか………」
「に、人間共、こいつを殺せ!」
三人を囲んでいた兵隊がフユに突撃してきた
「テメェらの鎧の音もうるせぇ!」
フユは一人の兵士の足を掴んで振り回した
「これなんてフユ無双?」
「フユさん凄い低血圧だからねー」
「アイツ本当に人間なのか!?」
「なんだ?俺が化物に見えんのか三下ァ!」
パペットドールが怯えたように呟き、兵士を蹴散らしながら進んで来るフユが答えた
パペットドールはそのまま奥の部屋に逃げ出した
「だいぶ目が覚めた」
フユが目を覚ます頃には人の山が出来ていた
「フユさんやりすぎじゃない?」
「考える力が、低下してたからな」
「チートに近いよ」
「パペットドールは奥に逃げましたトドメをさしましょう」
「アンナ、お前はここで留守番だ」
「なんでですか!?」
「あ?んなもん足手まといだからに決まってんだろ」
フユは当然とばかりに言ってのけたが、そこにソウが反論する
「まってよフユ、アンナさんはここの王女、ならこの国の原因と対時すべきだよ!」
「私も王女です!この国の未来を見届けるために、私も戦います!」
「……言っとくが、なにがあっても俺はヘルプに行けねぇぞ?自分の身はテメェで守れよ?」
「その位はできます。」
「ならいい」
「ほら皆行くよー」
ミズが三人に声をかけ、扉を開けた。
「ここから謁見の間へは一本道です。」
ソウとアンナの説得でフユが折れ、四人が扉を開け奥に進むと操られてる人が沢山おり、四人に気づくと襲いかかってきた
「邪魔だ!」
「吹き荒れる風よ、我が意思を飲み敵に安眠を!メリープブロー!」
ソウが魔法を唱えると目の前に白色の煙が吹き出し、それを浴びた敵は床に倒れだした
「殺したの?」
「いや、眠らせただけ。けどしばらくは起きないと思うよ。」
「ありがとうございます。ソウ様」
睡眠魔法で兵士を殺さずに行動不能にさせている間に四人は謁見の間に向かった。
「ここか……開けるよ」
扉を開けると王座にパペットドールが座っていた。周りに人間はおらず、甲冑が飾ってあるだけだった
「よく来たな人間が!」
「お前にその王座は似合わない!大人しく降伏しろ!」
ソウが杖を向けながら警告をし、パペットドールはそれを聞いて高笑いした
「面白い人間だ!俺に降伏しろだと?笑わせてくれる!」
「選ばせてあげる、ボコボコにされてから降伏するか、今すぐ降伏するか」
ミズは二択を出したがこれも笑って一蹴した
「ボコボコになるのは貴様らの方だ!やれ!甲冑共!」
「そんな!操れるのは人間だけではなかったのですか!!」
パペットドールが叫び、両腕を振り上げると部屋にあった六体の甲冑が動き出し、アンナが思わず声をあげてしまう
「中身空っぽだからだろ、人間よか操りやすいだろうな」
「行くよ!フユ、ミズ!」
「うん!」
「おう!」
「燃え上がる炎よ我の意思に従い敵を焼払え!バーンピラー!」
ソウが牽制として六体全てに火属性の魔法を放つ
「全体にやると威力は大分下がるみたい!どうする?一体に絞る!?」
「いや、このまま全体に与えといて!」
「わかった!」
「バーンランス!」
火柱から抜け出した甲冑の一体にアンナから放たれた火の槍が突き刺さる
「無詠唱?」
「はい、私は無詠唱で魔法が扱えます!」
「そこだ!よし!フユさん!」
「鉄は熱いうちに叩く!」
ミズが放った矢が甲冑の隙間に刺さり、動きが鈍くなったところにフユの蹴りが入るが、少しへこんだだけで特にダメージは無かった
「いってぇ………なんだよこの硬さ……」
「ふはははは!この甲冑共は私の魔力で強化しておる!生ハンパな攻撃ではびくともせんわ!」
「面倒な……水よ!我の意思にて降り注がん!エミューフォール!」
六体の甲冑の上から大量の水が振り注ぐも、甲冑には当たらず、弾かれていた
「はじかれてる!?」
「そして対水、氷属性対策も完璧だ!さぁ降伏するなら許してやろう!」
「くっ……」
「お断りします!私達はあなたなどにはひれ伏しません!」
「くくく、なら貴様からあの世に送ってやろう!やれ!」
甲冑の一体がアンナに近づき大剣を振り下ろすと同時にアンナは突き飛ばされた
「………な…フユさん!!」
「……ゴプッ…」
アンナを突き飛ばし自身を身代わり斬られたフユは口から血を吹き床に倒れた
「くはははは!これはいい!一番厄介だったそいつがくたばったか!」
「フユさん!なんで!?助けないって言ってたじゃないですか!」
「隙だらけの甲冑に蹴りいれようとしたら進路にテメェがいたんだよ。」
「大丈夫!?」
「……こんなん……かすり…傷だよ……ペッ」
傷口から血を流しながらも立ち上がり、フユは小太刀を一本正面に構えた。これだけでも傷が浅くないことはよくわかる
「テメェの魔力で強化された甲冑ってのも………大した事ねぇな……」
「まだ減らず口を!先にそいつを始末しろ!」
「全て俺にか…ふっ、どう動くかわかってれば当てんの簡単だよなぁ!やれお前ら!」
「幾万の重力……今此度力分けたまへ……害なす者を抑えん……グラヴィテ・プリズン……」
「これは重力の檻?」
「重力だと!?それは古代の失われし魔法なぜ貴様の様なガキに!」
「……ソウ…様?」
重力の檻に閉じ込められた甲冑はヘコミだし、潰れた
アンナとパペットドールは古代の失われし魔法に驚愕し、フユとミズはソウから感じる違和感に動けずにいた
「あれ?俺今……」
「ソウ様!なぜ貴方は古代の失われし魔法を!?」
「へ?古代の失われし魔法?」
「今ソウさん重力操ったんだよ?」
「俺が?全然記憶にないや」
「無意識だったのか?」
「おのれ……古代の失われし魔法を使えるだと!?ふざけるな……そんな事あるものか……こうなれば私自ら貴様らを冥土に送ってやろう!」
パペットドールが立ち上がると手に持っていた人形を捨て、4mほどまで巨大化した
「アンナさんはフユの回復をお願いします!それまでは俺とミズで戦います」
「フユさんをよろしくね」
「精霊よ、汝我が呼びかけに応じ、傷を癒さん…ハイレン」
唱えると頭上から緑の翅を生やした小さな人のようなモノがフユの傷口を塞いで行く
「…痛みが引いたなこれが治癒魔法か?」
「はい、治癒魔法は精霊の力を借りるのでできる人は少ないですが」
「サンキューな」
パペットドールと戦闘中の二人は押され気味だった
「燃え上がる炎よ我の意思に従い――!」
「呑気に詠唱してていいのか?」
「かはっ……」
「早い!」
ミズの矢はかわされ、ソウは詠唱中に近づかれ詠唱出来ずにいた。今の攻撃でソウはフユと入れ替わる様にアンナの元へと吹き飛ばされた
「ソウ!大丈夫か!?」
「フユさん!コイツ素早い!」
「なんとか隙を作る。その間に撃て……」
「詠唱できなきゃ魔法が放てないのに…」
「ソウさん大丈夫ですか!?」
「なんとか……後方から援護するしか…」
「無詠唱は、魔法のイメージです」
「アンナさん?」
「詠唱は魔法を確実に放つ為の基礎です。魔法の特性を覚えれば詠唱は必要ありません…」
「わかりました。ありがとうございますアンナさん」
後方ではソウがアンナから無詠唱を教わり、前方ではフユとミズがパペットドールとの戦闘中である
「我流剣技!鈴蘭!」
「そんな大振りな攻撃が当たるか!」
「でもこっちが当たる!」
「小癪な……」
フユが小太刀二刀を逆手に持ち、突き刺す様に振り下ろすが、パペットドールは難なく交わすがそこにミズの矢が肩に刺さった
「バーンピラー!」
ソウの声が聞こえたと思うとパペットドールの足元からライター位の火が出てきた
「失敗ですか、もう一回です!」
「ここで呑気に練習だと?なら貴様から潰してやる!」
「オイオイオイオイ!テメェ何背中向けてんだよ!我流剣技!菊!」
パペットドールがターゲットをソウに切り替え背を向けたところにフユが野太刀を振り下ろし、ミズの矢が刺さっているポイントに後ろ回し蹴りを叩き込んだ。
パペットドールはそのまま壁に叩きつけられた
「オレ達より先にソウさんに行こうってのはおかしいよね」
「おのれぇ……ただでは殺さん!苦しませながらいたぶってやる!」
「上等!」
「待ってフユ!」
起き上がる前に畳み掛けようと小太刀に切り替えたフユが特攻し、ミズはそれを止めようとするも既に遅くパペットドールの伸びた手に殴り飛ばされた
「ケホッ……伸びんのかよ」
「それだけではないぞ!」
「まだ早くなるの!?」
「そこ!」
小太刀を闇雲に振り回すが一向に当たらず、相手の攻撃だけが当たっていた
「所詮は人形だな。拳が軽い」
「良いだろう……」
「―――グプッ」
「フユさん!」
「よそ見していいのか?」
「ガッ!」
さっきまで喰らっても立っていられたはずの拳を喰らい、フユは体をくの字に曲がり、殴り飛ばされる。
ミズもフユに目線を向けてしまい、その間に接近され、腹に膝蹴りをもらい、崩れる
「なんだ……今の…」
「魔力を纏えば人形でもゴーレム並のパンチを繰り出せる!だが素早さは人形のまま!諦めろ、もう勝ち目はないのだ!」
「けっ……ナルシストもそこまで行けば清々しいな」
「貴様まだ状況が分かってない見たいだな!」
フユの言葉にパペットドールが遂にキレ、倒れているフユを蹴り続けた
「グッ…ガッ……アァッ……」
「骨が逝ったか!いい気味だな!」
「へっ生憎だな……テメェの軽い蹴りでは折れねぇよ」
「良いだろう!楽に死ねると思うなよ!」
パペットドールがフユの頭を掴み、サンドバッグにしていた
「フユ!」
「……そこだぁ!」
懐からナイフを取り出したミズはパペットドールの肘部分に狙いを定め振り下ろすもかわされてしまい、背中に蹴りを喰らい、王座近くまでころがった
「ミズ………!」
「お前も他人の心配してる場合か?」
パペットドールが腕の力を強め、頭を握り潰そうとしていた
フユも抵抗をするが、骨が折れているせいで力が入らず、解けずにいる
「バーンピラー!!」
その時パペットドールを火柱が包み、フユを離してしまう
「……ソウ……!」
「大丈夫か?」
「大丈夫に見えんのか?まぁいいさ……バトン……タッチだ」
ソウの言葉を軽口で返し、すれ違うように通り過ぎた時フユはその場に倒れ込み、動かなくなった
「フユ様!?」
「どうせ気絶してるだけでしょ。フユさんだし、いてて」
「ミズは大丈夫か? 」
ミズは腕をさすりながらソウの隣に並んだ
気絶したフユはアンナによって回収されている
「行くよミズ!」
「よし来た!3連射!」
「バーンピラー!」
ミズが連続で発射した矢はパペットドールが後ろに下がる事でパペットドールを狙って立った火柱によって防がれてしまった
「しまった!ごめんミズ!」
「大丈夫ドンマイ!」
「コンビネーションはまだまだみたいだな!」
「どうするか……お互い後衛だし……」
「とりあえずアイツの動きを止めたいね……縫い付けられたらいいのに」
パペットドールは余裕の雰囲気を崩さず、2人を見ていた……
2人は目を離さずに作戦を考えている
「あいつを縫い止める事ができれば……そうか!ソウさん耳貸して」
「……ふむふむ…なるほどね。OK!アンナさん!」
「はい!」
「フユさんの調子は?」
「治療は終わりました!」
「ならこっち来て!」
ミズが2人に作戦を伝えると3人は戦闘態勢へと入った
「作戦は決まったか?」
「バーンピラー!」
「二連射!!」
ソウがパペットドールの足元から火柱を生やし、ミズが2本の矢で狙うが、先程と同じように後ろに下がり、火柱で矢を防いだ。
「バーンピラー!」
「二連射!!」
「また同じ手か!学習能力がないな!」
同じ事を2度、3度と繰り返し続け、パペットドールが後ろに下がるとドンと音がして下がれなくなった
「壁だと!?まさか!」
「それを待ってたのさ!二連射!!……あっ!」
パペットドールが壁に当たった事で止まった隙を狙い腕を狙撃したが、1本目は当たったが、2本の矢をつがえる時に落としてしまった
「良くもやってくれたな……ではこちらの反撃「はもういらねぇよ」……なに!?」
3人の合間を縫うように小太刀が投げられ、パペットドールの右腕を壁に縫いつけた。
「フユさん!!」
「さぁ、やっちまいな」
「「バーンランス!!」」
2人の炎の槍が胴体に刺さり、パペットドールは光と共に消えて行った
「勝ったのか……?」
「勝ったんですか……?」
「勝ったよね……?」
「何で疑問形なんだよ、俺達の勝ちだよ。いててて」
アンナは地面にへたりと座りこみ、ミズとソウは立ったまま、勝利の実感がわかないのか、ぼーっとしていた。フユは右肩を抑え、軽口を言いながら近づいてきた
「フユさんいいとこ取りしたね」
「あそこで矢を落とすのが悪い」
「タイミング狙ってたレベルだしね」
「治療終わったばかりなのに無理をしないで下さい!」
アンナに注意されたフユは顔をそらすよう踵を返し、入ってきた扉に歩き出した
「帰るか」
3人も続くように歩きだし、シェルターへ向かった