第五話―やっと着いたよビダスニャータ……by.ミズ
目の前のハードボアは獣人に目を向けず、フユを睨んでいた
「キサマダケハユルサン!!」
「フユ……なにしたの?」
「あれの部下の猪がさっき配った干し肉と毛皮になった。」
「なるほどね……」
「でもあれデカイよな……一週間は持つかな?」
「あれ食べる気なの?」
「フザケルナ!」
「おっと」
ハードボアの突進をフユは危なけなくかわす
「ダルいのでミズとソウでやっていいぞ?」
「働こうよ」
「えー」
「燃え上がる炎よ我の意思に従い敵を焼払え。バーンピラー」
「グオォ!」
「あっちぃ!」
ソウの詠唱もいつものやる気はなく、フユごとハードボアを焼いた
「グルルルル!」
「はい寝てろ」
ソウに向かって突進しようとしたハードボアをフユが拳を振り下ろして邪魔する
「はっ!殺気!」
フユがなにかを感じてその場を飛ぶと大量の矢がハードボアに刺さった。
「キサマラァ!!」
「上から来るぞ!気をつけろ!」
フユが有名なセリフを叫びながらライダー顔負けのキックを叩き込んだ
「グブォア……」
「おーっと死ぬなよ?さっさと親玉の名前吐きな」
フユが懐から鞭を取り出してハードボアに近寄る
「皆さーん。オレ達の馬車にフユを見ないように乗ってくださーい」
「怖くなったら俺の胸で泣いてもいいよ」
「ソウさんキャラが……」
「吐いたぞ」
ミズとソウが馬車に誘導して一人乗った時にフユは親玉を聞いていた
「「はや!」」
フユは二人に聞き出した情報を話す
「こいつらの親玉の名前はパペットドール。任意の人間を操るそうだ。」
「なるほどね、ビダスニャータも近いし、少し対策練ろう」
「とりあえず国内に侵入しないとね」
「それなら私の魔法で侵入しましょう」
三人が侵入法を考えているとアリスの姉の王女(名前はアンナと言うらしい)が方法を提案してきた
「つまり俺達があんたの魔法で獣人に化ければいいんだな?」
「はい。それでは行きますね、ポコナ」
アンナが魔法を唱えると三人は煙に包まれ、煙が晴れたら獣人になっていた
「ソウは狐か」
「ミズは羊だね」
「フユさんは猫か」
「これはどんな基準で変化するんですか?」
「性格です。」
「「「は?」」」
「性格です」
「言い訳を聞こうか?」
「なんでです!?」
ちなみに三人の理由はフユはツンデレだから猫、ミズはのんびりしてるから羊、ソウは時々変化するから狐なのだ
「………えい」
「ぴぎゃぁ!」
「ソウ……」
「尻尾握るなよ……変な感じがする……」
結構痛かったのかフユか少し涙目になっており、獣人の数名はその姿にギャップ萌えを感じていた
「では行きましょう」
「俺は奴隷商人として中に入る」
「……えー」
「なんだよ」
フユが馬車に移動しようとしたら周りからジト目で見られた
ソウは一段と強い
「……フユ、この子達泣かせたら…」
「わーったよわかったからその後ろの禍々しい何かをしまえ」
強いというか禍々しい何かがでていた
フユはスカーフで猫耳を隠して歩き出した
「隠してしまうのです?」
「いいから行くぞ」
ビダスニャータに入ると最初に思うのは酷いだ
木は切り倒され、建物はボロボロだ
とても人が住める状態ではない
「………こいつはひでぇな」
「他の住民を探さなければ」
「どっかに非常シェルターみたいなのはないのですか?」
「非常用のシェルター………あります!」
「ならそこだな案内頼んだ」
「こちらです」
アンナの案内によって3人は地下への階段を降りていった
階段を降りると広く薄暗い空間が広がっていた。
そこには様々な種族の獣人がいた
「……獣耳っ娘祭り」
「お前は今回黙ってろ」
「流石に自重しようよ」
どこでもマイペースは崩れない3人だった
「私とアリスは城に行きます」
「で?」
「へ?」
「そんで?城に行って、どーすんの?」
「父上を説得して……」
「俺、親玉の説明したよな?」
「パペットドールで任意の人間を操る……あ!」
「やっとわかったか。だが、あんたはここで最初のお仕事だ」
「皆の無事を確認しないとね?」
階段の出入口3人が待機する中王女2人は国民の無事を確認し、落ち着かせていた
「やー、フユは流石だな」
「なにがだよ……」
「流石ツンデレ」
ソウの発言にミズも頷いた
「お前ら……」
「行きましょう皆さん」
「もういいのか?」
「はい!」
「それじゃ、行こうか」
3人は再びアンナの案内で城に向かっていた
「………火薬臭……」
「「「え?」」」
「なんでこんなことしなくちゃいけないんだ!」
「負けたら一族諸共皆殺し……負けたくない!」
門の目の前で緑の軍と青の軍が睨み合っていた。
しかしそこに覇気はなく、ただ怯えているようにしか見えなかった
「何事ですか!?」
「アンナ様!?よくぞご無事で!」
「アンナ様、お逃げください、この国はもうおしまいです」
「……アンナ、逃げるなら今だぞ」
「フユさんは脅さないの」
「私は行きます……苦しんでいる国民を救うために」
「よく言った」
フユを先頭にして城の門を開けると目の前には1人の執事がいた
「おかえりなさいませ、アンナお嬢様とお連れ様、今お部屋に案内いたします。申し訳ございません、アンナ様の部屋は壊されてしまいまして、お連れ様と同室でよろしいでしょうか?」
「構いません爺や」
「ありがとうございます」
フユとソウはこのやり取りをみて頭をひねっていた
ミズは周りを警戒しながら執事を見ていた
四人は何事もなく部屋へと案内された
「お疲れでしょう、お召し物をどうぞ、申し訳ございません、ストックが少なく、少々特殊な服もございます」
「いえ、構いません、ありがとうございます」
「それでは失礼いたします」
「………で………なんでこんな服しかねぇんだよ……」
「あくまで羊ですから」
「それを言うならあくまで執事!えぇい羊でそんなことすんな!」
フユは軽く突っ込んだあと自分の服装を見てため息をついた
「マントとかいらねぇだろ………軽鎧が着替えとか……」
三人はインナーになり、布団に潜り込んだ
「それではお休みなさい」
「おう」
「お休み」
「お休みー」
三人は眠りついた