第2話【紅蓮と言う男】
城へは割と近く、数分で辿り着くことが出来た。
さて、これからどうやって紅蓮に会わせてもらうか…門番に話を持ちかけた所で門前払いくらうため、佐之助は毎回直接会いに行っていた。その方が自分の必要性も分かって貰えるのでは…そう思ったからだ。だが自分の知らない忍がいきなり表れれば殺される、と思うのも当たり前で…何回か死ぬかと思った…ので出来ればそれもしたくない
「どうすっかなぁ~…」
思わず声が出た、すると聞こえるはずのない声が背後から聞こえた。
「何をどうするのだ?」
「ッ!!?」
佐之助は咄嗟に後ろを振り向きながら間をあけ、二つの小刀を構えた。
まさかこの俺が背後を取られるなんて…
内心で焦りながらもその相手を見ればそこにいたのは
「ぐ、紅蓮…!?」
「最近の若いのは隙だらけだなぁ!ガハハ!」
豪快に笑う五十嵐 紅蓮。
俺はその光景にただ呆然としているだけだった。
巨体と聞いてはいたがこれ程とは…身長が大きいだけではない、ガタイが違うんだ、握手でも交わそうじゃないかみたいな事になったら俺の手が砕ける、絶対砕ける。
不意に紅蓮は俺を睨んだ。
「して、お前…ここに何の用だ?」
あぁそうだ、忘れていた…俺がここに来た理由は…
俺は武器をしまって膝まづいた、場所が悪いけど下に降りるとこまで頭が回らなかった、初めて領主ときちんと話すことに緊張してるんだ。
「俺を、あんたの駒にしてくれ」
じっと紅蓮の目を見つめる。
沈黙が流れる、紅蓮は俺を品定めするように見る。
ダメだって言われたら終わりだ、きっと俺は殺される…傍から見りゃ俺は内通しに来た忍だ
紅蓮がおもむろに口を開く
「…お前はまだまだ弱いな」
「ッ!!」
やはりまだ実力不足なのか…?
ここが最後の砦だと思ってたんだが…
そこまで考えていると不意に紅蓮が口角を吊り上げた
「その教育をワシがするのもまた一興…か」
「えっ?」
また紅蓮はガハハ!と笑う
「見込み無しと思った瞬間に捨てるぞ!それでもいいか!」
笑っているが本気なのだろう、俺は目を輝かせて
「もちろん!強くなってみせるさ!」
「いい返事だ!ガハハ!」
こいつほんと五月蝿いな
俺の主はやはり噂通りの男らしい
では、と紅蓮が俺に近づく
何するんだ?と俺は警戒心よりも探究心的なものが働いて特になにをするでもなくそれを見ていた
「名前はなんという」
「え、さ、佐之助」
望月の性は名乗らず、佐之助とだけ名乗った
すると紅蓮はにっこり笑って
「口の聞き方がなっておらんぞ佐之助ぇぇぇぇええええ!!!」
「ぐはああああああああああ!!!」
ぶん殴られた
なんつー暴力的な主だ!
とは流石に言えなかった
次からはちゃんと紅蓮様と呼ぼう…
つかこれ絶対骨折してるって…
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あれから1週間が経った
どうやら骨折なんてことはなく少し痣になっただけで、翌日からばんばんこき使われていた俺は、
「死ぬ…」
ぼろ雑巾みたいになっていた
本当に骨折していなかったのだろうか?
どう考えても身体中が痛いんだが
紅蓮様曰く「痛みなど気にしなければなんともない!」
だそうだ
俺は精神論を聞いていた訳では無いんだが…
どこの国に1人の忍をこき使う領主がいるんだ!
ありえん!
「戦忍というものはな」
「うぉっ!」
また俺の後ろに!
毎回驚く俺も俺かもしれないが、なんで俺の後ろに立ちたがるんだろうか…っ?
焦りながらも次の言葉を待つ
「主に最後まで忠誠を誓うものだ」
…?そこはそれぞれだとは思うけど…まぁそうだろうな?