リステア・ステファン・エンダリス皇帝
「どうした、メリア?浮かない顔をしているが。」
一日の公務を終え、寝室に行くと目に入れても痛くない愛妃アルメリアが珍しく難しい顔でベッドに膝を抱え込み座り込んでいる。
「テア!お仕事お疲れ様っ」
そんな様子のアルメリアだったがリステアが声を掛けるとパッと立ち上がり抱きついた。
「今日も外出したらしいな、セレンから報告があったぞ。さては、流石にこってり絞られたか?」
「ううん、違うの。セレンの方が様子が変だったけど。あ!今日はお土産があるのよ〜。見て見て可愛いんだから。」
と、枕元に置いてあった包みを広げて小さなクマを見せる。
「ふふ、お揃いなの。あのね、ホントはコレの大っきい縫いぐるみがあるんだけど、人気商品で売り切れてたの。そしたら、お店の子がこれを勧めてくれてね?その子がまたすごくいい子なのよ、すっごく可愛い前掛けをしていて私思わず見惚れてたらお目当てがなかったお詫びにお下がりになるけどどうぞってプレゼントしてくれたのよ!前の日に作ったばかりのモノをよ⁈」
ほらほら見てよと前掛けも出して見せる。
「それはいい店員だな。で、何でセレンがおかしくなるんだ?」
「あ、そうそう。サーラと二人で買って来たものを見せるよう言われて、見せたらなんだかしばらく手に取ってジーッと見てどこで仕入れたのか聞かれて店員さんの話もしたら・・・」
「メリア・・・その店員はもしかして、金茶色の髪の娘か?」
「そうそ!すごいなんで解るの⁉︎セレンの婚約者なんだってね、彼何にも言わなかったけど。テアは会ったことあるの?」
「ああ、彼女も貴族だしセレンの婚約者だからな。はぁ、そりゃショックでおかしくなるだろう。」
「なんで?」
「アルメリア、奴は彼女の姿を二年も顔を見てないんだぞ?毎日密偵を送り込み悪い虫がつかないように監視までしているほど執着している婚約者に、まさかメリアが先に会うなんて・・・奴が彼女に会えない理由は解るか?」
「えっと、私が勝手な事して迷惑かけてるか・・・ら?かな。」
「その通り。俺だったらメリアに3日会えなくても耐えられん。」
「やだ、も〜///じゃなくて、そこよ、そこ!
私、あの子を侍女にしたいの。」
「はっ⁉︎」
「そうしたら同じ職場で二人は会えるでしょう?お願〜い、彼女が来てくれたら私お城を抜け出すのやめるから!」
甘い寝室の中、この国最高権力者の職権乱用とも言える二人によってハンナの未来が変わろうとしていた。