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昼の二時丁度に和泉が来た。だが電話しなければいつまで待っていても来なかったであろう。律儀なのかそうでないのか解らないヤツだ、と思いながら、私はソファに座っていた。
「どうだ? 事件の方は」
「お前が証明しろと言ったから考えたことには考えたけど、完全ではないよ。大体なぁ、光村、こんなことをしていたらただの自殺だって他殺になるぜ」
「だからどうしたってんだよ」
「いやいや、無駄話はここで切り上げよう」
和泉は三秒ほど間を置いて、静かに喋り出した。
「さて、まずは犯人の確認からいこうか。犯人は尾崎勝也だよ」
「何故? 勝也はその日家に帰っていないんだぞ」
「毒殺だったら犯人が何処にいたって殺せるよ。遅効性の毒か、その辺を使ったんだろうな」
「だがどうやって毒を飲ませる? 勝也にそれは不可能だ。それとも、前日に仕掛けたって言うのかい?」
「それもあるかも知れない。だがな光村、克からは特殊な毒物とかは検出されなかったんだろう?」
「ああそうとも。低血糖で死んだんだから」
「だったらそれだよ。それを食事に混ぜた」
「だからどうやって? 勝也はその日家にいなかったんだ」
「だったら作っておいた夕食だろうな」
「その日の夕食は克が一人で作ったんだ」
「じゃあ食材だな。犯人、勝也は、最初から克を殺すつもりでいた、そういう感じかな」
「じゃあ密室というのは」
「ああ。克自身が閉めたんだろうね。
あとさっきの殺害方法の補足だが、これなら遅効性のインスリンは使わなくてもよくなる」
「何故?」
「克が勝也のいない間に勝手に食事をするからさ」
「でもそれなら、食事を摂ったと思われる時刻が遅すぎる」
「それは克は勝也が帰ってくるものだと思っていたんだろう。勝也は帰ってこず、空腹に耐えかねた克がひとりで夕食を作った。そんな感じだろうな」
「だけど調理には当然火を使うだろう」
「なら火を通さずに食べる果物とかに入れたのかもしれない」
「それで克が死んだ後、勝也は帰って来たと? でもおかしくないか? 警察に通報する前に普通は自分で扉を壊して入るだろ」
「発見者が犯人だったと言うケースもあるからな。それで自分が疑われないようにだろう」
「死んだ時刻が解ればそんなこと不要だろ」
「念には念を、じゃないかな」
和泉はそこまで言い終えると、私に訊いてきた。
「他に、解らない点は?」
その態度が少々気に食わなかったが、楽しませてもらったことも事実なので、私は満足して首を左右に振った。すると和泉は立ち上がった。
「じゃあな光村。何度も言うが、今のは事件だと仮定しての話だからな。本気にするな」
「ああ解ってるよ。じゃあな和泉。探偵業頑張れよ」
「ああ」