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克死亡の次の日、私は友人の和泉に来てもらい、事件(?)の概要を話した。和泉は探偵業をやっていて、普段は人探しや何かで忙しいが、今日は暇だったらしい。和泉は頭脳明晰な若者だ。ひょっとしたら何か解るかも知れない。そう思って話してみたのだが。
「ああ、常識的に考えて殺人ではないね」
「やっぱり?」
「うん。常識的に考えて、だけど」
「……? どういうことだ?」
「だから、表面上はそうじゃないけど、裏返せば殺人事件なんだ」
あくまでも憶測だからね、本気にしないでくれよ、と和泉は付け足して言う。そこで私はこれを殺人事件だと仮定しての、アリバイトリックや殺害方法の証明を和泉にして欲しいと頼んだ。和泉は引き受けてくれた。
「考える時間が欲しい。明日またお前の家に来る」
「仕事は?」
「大体片付いた。一日くらいサボったって平気だろう。同僚が何とかしてくれるさ」
「君はいつでも適当な人間だな」
「適当で結構」
「だから周りからの信頼が薄いんだよ」
「それについてお前にどうこう言われる筋合いはない。じゃあな、光村」
和泉は帰って行き、私は一人になった。明日は面白いことになりそうだ。私は少し早めの夕食を摂り、布団に入って、明日を待った。
*
翌日、私は朝食の後、和泉に電話をかけた。彼のことだから、すっかり忘れている可能性もなくはない。
相手は直ぐに出た。
「はい。和泉です」
少々苛ついている様子の和泉が出たので、光村だよ、と返してみる。すると和泉は不機嫌な風に
「なんだお前か。こんな朝早くにかけてこないでくれよ」
と言うのだ。
「もう八時じゃないか! 全然早くないよ。
ところで和泉、昨日の約束は覚えてるか?」
「当たり前だ。そんなのは忘れたくても忘れられない」
「いつもは忘れてるくせに」
「うるさいなぁ。それでいつ行けばいいんだ?」
「別にいつでもいいよ。できれば食事の時間帯以外にして欲しいけどね」
「解ったよ。じゃあ昼の二時ごろに行く」
それで別れの挨拶をした後、受話器を置いた。昼が楽しみだ。
十二時になると私はいつも通りに昼食を済ませ、さっさと後片付けをして、時計の針を見た。まだ十二時四十分頃だ。二時まで漫画でも読みながら待つとするか。