3話
「アウラ様の髪には、ピンク色が映えますね」
「肌の色がとても綺麗に見えますわ」
後ろでアウラの髪の毛をとかす侍女が、鏡に映った新しいドレスを身にまとったアウラをほめたたえる。後ろに立つのは、幼い時から馴染みの侍女ばかりで、アウラは少し気恥ずかしさを覚えながら、首元まで詰められた襟が少し苦しくて頭を動かす。
人妻になるのですから今までのように首をあけておくのはあまりよくない。
そう言って私新しいドレスのデザインを決めた母の言葉を思い出して、アウラはほうっとため息をつく。
式の日取りが決まってからは、あっという間だった。
いくつも用意された嫁入りようのドレスに、薄い黄色のウェディングドレス。陽の光を紡いだかのような、ウェディングドレスは母が前から密かに用意してくれていたらしく、私の身体にぴったりだった。
それを着た私を目を細めてみる父と母に、アウラは頬を染めながらそっととろりとした手触りのドレスを撫でた。
アウラは自分の部屋に置かれた、あちらで使うものに囲まれながら、間近に迫った自分がお嫁にいく日を数える。鏡の前で指折りしながら、自分の嫁ぐ日を数えるアウラを、侍女たちは微笑ましいものでも見るように、鏡越しで頬笑みかけてくる。
はじめてリーグ殿とあった日。アウラは興奮気味にお風呂上がりに髪をとかしてもらいながら、自分の旦那様になる人のことを語ったのだ。肌が白くて、淡い髪の毛の色をしていて、私が隣に立つのがちょっと恥ずかしいくらい綺麗だったと、語るアウラの頬は紅潮していて、彼女がこの結婚を素直に受け入れていることがうかがえた。大抵、貴族の結婚と言ったら、親同士が勝手に決めたもので、最初の出会いで落ち込むことが多いのだが、そうはならなかったアウラをみて、幼い時から彼女につき従っている侍女たちは純粋に喜んだ。
アウラは鏡にうつる自分が、去年までと違いどこか大人びて見えることにくすぐったさを覚えて、鏡の中の自分が本当に自分なのかを確かめる為に、鏡に向かって首を傾げて見たりすると、後ろにたつ侍女たちは実に楽しそうにほほ笑むのだった。