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僕達の異世界生活  作者: 真島 真
What is this?
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第83話『出会い的な』




「ん・・・うむぅ~・・・ぁ・・・」


寝てた・・・。一体いつの間に・・・なんて考えるまでも無かった。ベッドに寝転がって考え事なんて、寝る準備みたいなものだ。そう思いつつも、やっぱり疲れてたのかな、とも思う。私の体の殆どは機械で出来ているため、肉体に疲れが溜まるという事は、『あの事故』の時唯一無事だった左腕を除き、ほぼ無い。けど、精神は別だ。ダンジョンに落ちたってだけでもかなりのストレスだったのに、そこが知らない場所、ましてや異世界に繋がっているなんて、有り得ない。


「いや、まぁ、有り得ない事もないんだろうけど・・・」


良くやるよ、ウリガンダ君・・・。とか、B組の留学生について考えながら、ふと外を見ると空は赤と紺のグラデーションで彩られていた。


「うーわ・・・そんなに寝てたか、私」


私の網膜ディスプレイに映る時計は五時半を指している。


「あれ?時計ずれてる?」


一学期の中間テストも終わり、夏が近づいてきている今日この頃、日照時間はどんどん長くなっている。五時半でもまだ明るく、まだ遊んでいる子供たちも見受けられた。それなのにどうだろう、もうあと少しすれば夜とでも言いたげな空模様ではないか。


「時差・・・的な?」


クエスチョンマークが浮かんでいるけど、コレでほぼ間違いないだろう。地球だけでも、あれだけ時間に差があるのだ、ましてや世界を跨いだのだからこれくらいは大したことないかもしれない。そう自分に納得させながら、さっきはゆっくりと見る事の無かった部屋を見回す。私が座っているベッドを中心に机と椅子、クローゼット、写りの悪い鏡が付いた化粧台の様なものがある。そこには、桶と水瓶が置いている。


「・・・なんでこんなところに?」


私が頭を悩ませつつ、何かヒントは無いかとコンピューターのデータ内を検索していると、部屋のドアがノックされた。


「は・・・と、ダメなんだった」


思わず、「はい」と日本語で返事しそうになってしまった口を噤み、ドアの方へ歩いて行く。幸い、この部屋のドアは外を見るための覗き穴(向こうから見えないようにこちら側で蓋のされている)が付いていたので、そこから向こう側を覗き見る。


「俺だ」


ドアの向こう側にいたのはパブロさんだった。問題ないと思いドアを開けると、パブロさんともう一人、女の人が居た。










「相談がある」


そう言って私の家に尋ねて来たのは、考古学者のパブロだった。


「金は貸さないよ」

「あぁ金じゃない、もっと面倒なことだ」


そんな事は分かっている。パブロと言う男は金や女、衣食住といった、世の人間が常々悩んでいるような事ぐらいではどうにもできないような奴だ。そんな彼が「面倒」という事は、本当に面倒である可能性が高い。


「まぁ聞くぐらいだったらいいわよ」

「ありがたい」


彼を家の中に招き入れる。あ、お茶を切らしてるんだった。


「お茶切れちゃってて、出せないけど大丈夫?」

「大丈夫だ、問題ない」

「そう、ならいいわ。それで?相談って?」


二つのカップに水を入れながら問う。


「それなんだがな・・・どう説明したらいいか・・・」


そう言って、黙りこみ考えるパブロ。


「また難しく考えてるんでしょう、あなたの悪い癖よ」

「あ、あぁ・・・なら端的に言うが、人を拾った」

「はぁ!?どこで!?」

「ダンジョンで」

「ダンジョンで・・・てことはそれはつまり、陰謀の予感?それとも人型の魔物?」


ダンジョンは国に管理されている。少なくともこの街にあるダンジョンはそうだ。そのダンジョン内で拾った人間は、国に嵌められたとか犯罪者である可能性が高い。ついでに言うと、パブロは何故か国家の陰謀に関わってしまう事が多いので、その可能性が倍に跳ね上がったりする。


「いやそれは無い」

「なんで?」

「その場合は裸一貫で投げ込まれるからだ」

「さも経験したことがある様な言い草ね・・・」

「人型の魔物の可能性も無い訳ではないが、それなら俺はもう死んでいてもおかしくは無いな」

「あなただったら大丈夫なような気もするけど」

「無理だね、岩石虫を一撃だぞ?ソイツ」

「・・・一撃ですって?」

「・・・木端微塵だ」


岩石虫はこの街にあるダンジョンの中で中堅程度の強さを持っているモンスターだ。文字通り岩石の様な殻に覆われていて、防御力が非常に高い。しかも、その殻によって弱い魔法や矢は簡単に弾かれてしまう。このモンスターを倒すことは場数を踏んだベテランでも難しいとされる。その岩石中を一撃で倒すとはいったいどんな人物なのだろうか?


「で?その問題の人物はどこにいるのよ?」

「俺がいつも泊まってる宿屋にいる」

「ああ、『親鳥の加護亭』ね。分かったわ、行きましょ」

「うむ・・・いやまて、俺の相談の内容はまだ話してないんだが」

「どうせ、その人を泊めてくれって言うんでしょ?いつもみたいに」

「あ、あぁ・・・まぁ、そうだ・・・な」

「いいわよ。ただし、しっかり下宿代は貰うからね」

「もちろんだとも」










「えーーーーっと、確認だけど・・・拾ったのってこの娘の事?」

「そうだが?」


何を馬鹿なことを言ってるんだ。このタイミングで別人を紹介する意味が無いだろう。


「何やってんのよ馬鹿!!大馬鹿!!!!」

「は?」

「は?じゃないわよ馬鹿!!何で女の子をこんな所に一人で置いて来てんのよ!!」

「だから何度も言うが、岩石虫を一撃で倒すような奴だぞ?」


そんな奴に馬鹿な事をしてみろ、一瞬で壁のシミになってしまうだろう。いや、シミ一つ残らないかもしれない。さっき俺が触った時、即ち俺がコイツに吹き飛ばされた時の事だが、あいつは肩に付いた虫を払う様な軽い動作だった。その一振りで、大男とまではいかなくても、それなりに大柄な俺はダンジョンの壁に叩きつけられたのだ。もしあの時、本気で腕を振るわれていたら、俺はここに居なかったかもしれない。


「それとこれとは話が別なの!!大丈夫?怖かったでしょ?」

「あ、待て!!不用意に触れると・・・ん、なんもないな・・・?」

「大丈夫だからね?もう一人じゃないからね?」

「・・・・!?・・・・!?」


ユウコが助けを求めるような目でこちらを見てくるが、こいつはもうこうなったら止められないんだ。すまない、諦めてくれ。






繋ぎの話、次は割と早くかけるかも

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