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僕達の異世界生活  作者: 真島 真
What is this?
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第78話『変人と少女』


妙なものを拾ってしまった・・・。

男、パブロ・ディスカスはそう思った。元より面倒事を好まない性格なのだが、この妙な少女?いや、少女なのかも不明だ。むしろ、これが只の少女の訳がないと思っているのだが。そもそも、大の男を片腕で吹き飛ばした時点で普通じゃない。しかも、俺の魔法を防いだ。極めつけに古代語を使っていたぐらいだ。本当に死ぬかと思った。話が逸れた、この少女を連れて行くことにしたのは、パブロが冒険者たる理由、未知への尋常ならざる好奇心がメインを締めている。残りは、親切心とこの少女は連れて行くべきだという冒険者としての勘である。チラリ、と後ろを見る。すると、人一人分離れた位置から付いて来ている少女と目があった。少女は、何とも言えない薄ら笑いを返してきた。


「ホントになんなんだお前は・・・」

「?」


コテンと首を傾げるその仕草は男心を大いにくすぐるが、下手に触れでもしたら先の様に吹き飛ばされるであろう事は容易に予想できる。少女の服装から学生・・・なのだろう多分、過去何度か見たことがある学園の制服と似た服を着ている。頭には古代語が書かれた光る兜の様な物を被り、手には棒と金属の小さな塊を持っている。恐らく武器なのだろうがどうやって使うものなのか全く分からない。この二つの内のどちらかが、あの岩石虫を爆破したものなのだろう。この迷宮でも中堅どころの魔物を一撃で葬り去るなどどう考えてもあり得ない威力だ。まぁ、竜人族や歴戦のSランク冒険者たちならあり得ない訳ではないのだが。


「あ・・・」


そういえば、名前を聞いていなかったことを思い出す。


「お前、名前なんてんだ?」

「?」


首を横に振る。本当にこちらの言葉が分かっているのかいないのか、少なくともさっき『言葉が分からない』という言葉は分かっていたようなので、ある程度は分かるのだろう。少なくともジェスチャーは通じていたので、それを用いて意思の疎通を図る。


「お前」


少女に指を指しながら言う。これでこの言葉の意味は理解したはずだ。ならば次は・・・


「俺」


少女が頷いた。こちらの意図はどうやら通じたようだ。


「お前」


少女が俺に指を指しながら言う。


「そうだ」


頷きながら、続ける。自分の胸を指しながら。


「俺、パブロ」

「ぱぶろ・・・?」

「パブロ・ディスカス」

「ぱぶろ・・・パブロ!!」


どうやら俺の名前だと分かったようだ。満面の笑みで俺の名前を連呼している。くっ、可愛すぎるだろオイ!!いかんいかん、危ない思考に陥りかけた。煩悩に支配されかけた頭をふるい、少女を指さし尋ねる。


「お前、名前は?」

「ユウコ・・・ユウグレ・ユウコ」


それが、俺と彼女との出会いだった。










それにしてもなんなんだろうこの人は、やたらと日本語にビクビクするし、名前を覚えるために必死に復唱していたら突然首をブンブン振り出すし、名前を教えてからやたらと話しかけてくるし・・・。いやさー、確かに困ってたところにこの人が現れて助かったけどさー、この人イカツイ顔してるのに雰囲気がなんていうかオモチャを見つけた子供みたいなのだ。私はオモチャじゃないぞ!!という意味を込めて視線を送ってみたがニッコリと笑うだけだった。


「ユウコ、ユウコ」


はいはいなんですか~?っと首を傾げる。あ、私のジェスチャーのレパートリーが増えました。首を縦に振る、もちろんの事同意肯定の意で、横に振るがその反対、首を傾げるのが疑問形。首を傾げるのが新しいジェスチャーです。はい、かなり少ないです・・・。でもでも、それに強弱がついたりするのでそんな事もないかも・・・やっぱり少なかった。

見つけた箱に指を指しながら、


「箱」


というパブロさんに続いて


「箱」


と言う私。子供か私は!!まぁ、分からないからしょうがないんですけどね。でも、パブロさんがこうやって教えてくれるからどんどんボキャブラリーが増えていっているのも確かだ。私のアシストをしてくれているコンピューターもこの言語の解析をするにあたって、こちらの方が負荷が少なそうだ。言語ほど複雑なプログラムは無いだろう、それを一から解析するのだから出来るだけ負荷は少ない方が良い。

にしてもなぜこんな所に箱が?思い切ってサーチを掛けてみる。そこで驚愕の事実が判明。この箱は箱じゃなかったのだ!!うん、自分で言ってて訳が分からない。正確に言うなら、この箱は箱なのに生体反応がある。要は箱の形をした生き物だという事だ。RPG風に言うならミミックか人食い箱の類だ。


「パブロ」

「何だユウコ?」

「箱」

「箱?」


ああもう!!「箱じゃない」と言えない!!必死に首を振りつつパブロさんを引っ張る。


「ん?%$&‘*@?」


全く分からないけど、とにかく引っ張って困惑するパブロさんを背後に回す。そして、『しびれん棒2型』を振りかぶり箱に思いっきり叩きつける。


「ギャァ!!」


バチバチバチッ!!と紫電が周囲に迸る。その強い光に一瞬目が眩んだが直ぐに治る。その後に残ったのは下がデロンと伸びきった謎の箱型生物だ。一体なんだろうこれは?





パブロさんは変な人、でもいい人。優子はそう思っています。

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