第77話『第一○○人発見』
『ワルサーPPK/S』は実際にある銃です。
『熱許容レベルが限界に達しました冷却を開始します』
プシューーーーーーー・・・
頭の中に機械的なアナウンスが響く。ああ、これは私の精神が抜け出ている音なんだ・・・。そう思っても仕方ないだろう。あのような醜態を人に見られたのだから。あぁ!!思い出してしまった!!もう死にたい・・・。
「ш▽▼△Γ?」
『未知の言語を確認。解析を開始します。なお、意味が判明した言葉があり次第適応していきます』
心底どうでもいい、この先この人と目を合わせて会話するのも難しい。理解力のある人間だったらさっきの事は忘れてくれるのだろうが、そんな人間はなかなかいないのが世の常だ。あぁ、きっと私はこれからこの人の笑いのネタにされるんだ・・・。
「ш▽▼△ΓВθ%#$!?」
「うひゃい!?」
項垂れていると急に肩を掴まれた。止めろ!!私は肩が弱いんだ!!そのせいで変な声が出てしまったじゃないか!!
「#$%%$&※――――!?」
「あ・・・」
やってしまった。バトルモード、戦闘用にリミッターを外したり、肌の硬度を増したりしているその手で人を振りほどけばどうなる事だろう。答え、吹っ飛ぶ。いくらあんな痴態を見られたとしても人を傷つけるのは間違っている。私は壁に叩きつけてしまった人の元へ駆け寄る。
「すいません!!」
「Х★∥Д□!!」
私に向かって手のひらを向ける。待てという事だろうか・・・?
「<炎球>!!」
「えぇ!?日本語!?ッじゃなくて火の球!?なに、超能力者なの!?」
私の驚愕もなんのその、火の球が普通の人が全力で投げたボールほどの速度で飛んでくる。しかし、飛んできた火の球は私に当たる寸前で四散する。ヒロ君が念のためと積んでいたバリアー、『パリッとバリアー君』が火の球を防いだからだ。ちなみにダメージが一定を超えた場合パリンッと言って割れ『何!?バリアーが破られただと!?』という音声が流れる。多分ヒロ君はそれがやりたかっただけだと思う。いや、絶対。
私と私に声を掛けてきた人との睨み合いが続く。その人は男性。茶色の髪色をしていて、キリリというよりギンッと表現した方が適切な気がする眼でこちらを睨んでいる。服装はあまり綺麗ではない、所々擦り切れた茶色のマントを羽織い、革で出来た鎧を付け、足にも同じように革で出来た甲を付けている。そして、なんといっても目を引くのはその手に持っているものである。左手に剣を持ち、右手には固定するようにして小さな、と言ってもLサイズのピザ位の大きさの盾をしているのだ。
映画の撮影?あまりにもファンタジーな恰好に一瞬そう思ったが、火が掌から実際に出てきたのを見てしまったため、あっさりとその想像は打ち壊された。
「‰Ф∂θ♭」
「?」
言っている事が全く分からない。でもさっき日本語を話していたような?
「あの」
「#$%+*!?」
話しかけようとすると、盾でがっちりとガードする。意味が解りませんです、はい。暫く経つとゆっくりとそのガードを解き、私に何か言ってくる。全く分からないが、しかしそのジェスチャーからあることが読み取れた。
「あっ、話しちゃダメってこと?」
「%$%$%!!」
怒鳴られてしまった。しかもまたガードしている。これは完全に嫌われてしまった、と心の中で嘆いていると、今度はすぐにガードを解いた男の人が話しかけて来た。
「Х´ΑЮρけ、…も置く」
お、言語の解析がある程度完了してきたのかな?でも、全く分からない。すると、男の人がこちらを見ながら剣をゆっくりと地面に近づけながら『しびれん棒2型』に指を指す。なるほど、武器を置けという事か。私は頷き、男の人の様にゆっくりと『しびれん棒2型』と『ワルサーPPK/S』を置く。そして、ゆっくりと立ち上がる。そして、男の人の言葉を待つ。
「お前、$#&るか?」
文脈とジェスチャーからすると『お前、言葉分かるか?』といったごく簡単な言葉であるのだろうが、いかんせん私は補助が無ければ話すことが出来ない。ある程度解析が進んでいるとはいえ、この状態で話したりすれば、日本語とこの未知の言語が入り乱れた奇妙な話方になってしまう。しかも、どうやらこの男の人は日本語を嫌っている様だ。あれ?でもこの人話してたような?ん?違うのかな?まぁ、なんにせよ完全にこの言語を解析するまでは話さない方が賢明だろう。首を横に振って、分からないという意思を示す。
「分かっているな」
えぇ!?なんでそうなるの!?ブンブンと首を横に振る。ついでに手も振る。
「分かってるから◇γκΜ¶なπσΥか?」
うん、分かりません、全く。しかし、どうやってそれをジェスチャーで表現しろというのか。
「はっはっはっは、Д±ΗΩって、÷Β来い」
そして、手招きする男の人。恐らく付いて来いという事なのだろうが、なんかイラッと来る。剣を拾い上げ歩き出す男の人の後ろを、同じく『しびれん棒2型』と『ワルサーPPK/S』を拾い上げ私は歩き出した。
ヒロ君・・・一体何者なんだ・・・。なんて。