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僕達の異世界生活  作者: 真島 真
What is this?
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第75話『一家に一台。スライムレーダー』

ウチのスライムのスペック・・・戦闘:そこそこ、探知:結構、家事:めっちゃ、紳士:MAX。




夜。向こうと此方の時差はどれくらいなのか気になり、『魔王』さんに聞いたところこちらの四分の一の早さで向こうの時間が進むことが分かったので、こちらにもうちょっととどまることにした。具体的にはもう三時間ほど。


「それはありがたいですけど、今日はここで野営ですし、もうすることもありませんよ?」

[なんなら、見張りでもしようか?]

「いいんですか!?」

[ああ。と言っても、三時間ぐらいしたら帰るがな。それでも良いというならだが]

「ありがとうございます。やったー!!久しぶりにちゃんと寝れるー!!」

「やったな!!」

「不本意ですが、あなたになら任せられるでしょう」

「・・・ありがたい」











という訳で、私は夜の見張りをすることになった。うむ、やはりこちらの世界は空気が澄んでいるようだ。星が綺麗に見える。向こうではジャングルに居たこともあったが、木が鬱蒼としていて見えにくかったし、そもそも何かに追われる日々を暮していたのでゆっくり星空を見ている暇などなかった。こうして今、ゆっくりと星空が見れるのも歩生のお陰と言ってもいいかもしれない。


「・・・ねぇ」


感傷もとい、観賞に耽っていると誰かが話しかけて来た。この特徴的な語り口からすると、パーティー内の黒魔術師チックな少女だろう。はて?なんという名前だったか。


[どうした?眠れないのか?]

「・・・あなたに聞きたいことがある」

[ふむ、そういう事か・・・いや、その前に、すまないが君の名前を教えてはくれまいか?]

「・・・・・・言わなかった?」

[すまない。何せ色々あったからね、どうも印象が・・・・]


今地味に間があった。いや、もともと話す時に間が空く少女ではあるが、怒っているのかもしれない。


「・・・ぺトラ」

[ペトラ・・・うむ、覚えた。それで、聞きたい事と言うのは?]

「・・・地面の下から感じるこの気配は何?」

[気配?]

「・・・あなたの気配をこの周囲一帯の地面の下から感じる」

[やはりバレていたか]


まぁ、初めから隠すつもりはなかったのだが、そこはそれ様式美というものである。


[まぁ、クモの巣の様なものだよ]

「クモの巣?」

[そう、クモの巣]


私は体液を操作し頭上にクモの巣を作り上げる。真ん中にはこれまた体液で作ったクモもいる。


[クモは巣を張る。それは何故か分かるかい?]

「・・・本能?」

[それを言っちゃあ身も蓋もないんだが・・・]

「・・・うん」

[うん、って・・・まぁいい、クモは巣を張って待伏せる。獲物が来るのを、じっと。そして・・・]


新たに触手をだし、先の形を変える。トンボの形だ。それをクモの巣に引っ掛ける。


[さて、ここで問題です。クモは獲物が巣に掛かったのが分かります。それは何故でしょうか?あ、本能と言うのは無しでな]

「・・・目で見て?」

[不正解。正解は触覚、物が触れる感覚で獲物がかかった事を知るんだ]


そしてそれを私なりにアレンジしたのが『スライムネット』探知用の技である。これは、ジャングルに住んでいた際に考えた技である。土に埋めたのは解り辛くするため、私の体液が月の光を反射するので目立つのだ。私の感覚はこの技によってかなり広くなる。地面に埋まるため、視覚と嗅覚は使えなくなってしまうが、残りの聴覚と触覚はまだ十分に使える。それこそレーダーのように。しかし、この技空中に居る相手には全く役に立たないので、こうして空を見上げる事で見張りをこなしていたのだ。星空が綺麗だからと言う理由で空を見上げていた訳ではない。決してない。もう一度言う、そんな理由などではない。


「・・・ふーん」

[興味なさそうな反応だな。まぁいい、要はその巣と同じものを下に張り巡らしているのだ]

「・・・そう。昼のアレも似たようなもの?」

[そうだな。アレは私の分体、体の一部を燃やしたに過ぎないよ]

「・・・何故それを私に?」

[わざわざ黙ってたって良く考えれば分かる事だしすぐにバレるからね。それなら先に誰かに言っておいた方が良いかと思ってね。なんなら、今皆に言ったっていいよ?]

「・・・いい、しない」

[・・・そうか・・・む、なんか来たな。すまない、これから私は食事を取ることにする]

「・・・そう」

[見ていてあまり気持ちのいいものだとは思わないんだが。それに、寝なくていいのか?]

「・・・気にしない。眠れない」

[そうか、ならいいんだ!が!!っと、捕まえた。ふむ、ハウンドウルフか・・・一匹だけか?群れから逸れたのか?]


捕まえたハウンドウルフ(見た目は完全にオオカミだが、その凶暴性と頑強さから魔物とされている。)を地中に引きずり込み、網のように広げた私の体を使って体内に移動させる。いきなり私の体の中にハウンドウルフが現れ驚いたのであろう、ペトラが固まっている。


「・・・・・・今、どこから?」

[地中を移動させたのだよ]

「・・・あなた本当にスライム?」

[さぁ?私には分からないよ]

「・・・分からないの?」

[じゃあ、逆に聞くが君はなんだね?]

「・・・私は人間よ」

「本当にそうかい?」

「・・・本当よ」

[そうか。ならそれを証明してみしてくれ]


本当にスライムか?か・・・実際の所、それは私も分からない。そもそも、スライムと言う生物が一体何をもって、何故そう呼ばれているのかすら分からないのだ。ただ見た目から、その特徴からそう言っているに過ぎない。なので、私は本当はスライムではないのかもしれない。まぁ、なんにせよ私は変わらないし、変わる気もしないが。


「・・・分かったわ」


おっと、予想外の言葉が帰って来た。って出来るのか、証明。証明できない事にかこつけて自分が何か分からないアピールをして大物っぽいの雰囲気を出そうと思ったのだが、失敗か。むぅ、こちらに来てから色々上手くいかないな。はぁ、どうしたものか。


「・・・はい」


と言って手渡されたものは、金属でできたカードだった。


[むむ・・・これは一体?]

「・・・ギルドカード」


確かに、このカードには例えるならそう、ゲームのステータス画面の様な表記がなされていて、種族の所は人間種となっている。しかしながら、この手の情報は弄れるものと相場が決まっている。


[・・・信用ならんな]

「・・・ここに記されるのは真実のみ、覆すことは出来ない」


表情が薄いこの娘だが、今は絶対にドヤ顔であることが分かる。


[・・・本当にそうなのか?これは人が作ったものだろう?]

「・・・人ではない」

[・・・なら誰が?]

「・・・神」


おおふ、何故だろう。最近神とかそういう単語をよく聞く気がする。


「・・・神が人に作らせている」

[人が作っているのに理解できないのか?]

「・・・正確に言うなら、神が残した道具に人が材料を入れて出来上がるのがこれ」

[道具?]

「・・・私は見たことは無いけど、何か大きな雷の力で動く道具らしい」


電気で動く大きな道具?機械か?ならこれは工場で作られているのか?


[ちなみに聞くが、これの造られている場所は分かるか?]

「・・・古代都市イオリベ」

[イオリベ]


それは奇しくも私が先ほどまでいた、私の家があり、私の通う学校がある場所と同じ名であった。








「五百旗頭」とかいて「いおりべ」と読む。




今日のことわざ『スライムはスライム』・・・どうあがいてもスライムはスライムであるのと同じように、凡人はどうあがいても凡人であること。同義に『ラットはラット』がある。主に人を貶める際に使う。ただし、使う際は略される場合が多いので注意が必要。使用例『おまえはスラスラなんだから無理するな』『そうだよ、どうせ俺はスラだよ。そういうお前はラットだけどな』『はぁ!?ふざけんなスラ!!』『あ!?やんのかラット!!』『はいはい、お前らの成績はゴブリンの背比べなんだからそういう喧嘩はやめるように』『せ、先生・・・』。というのが学校でよくある風景。






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