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僕達の異世界生活  作者: 真島 真
『かわいい』あの子と『最強』と『最恐』
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第66話『勇者』

ヒフミの出番は最後といったな、あれは嘘だ。

いや、ホントすみません。これからも、ちょくちょくヒフミは出てくる予定です。




パーティー終了後、かず君の部屋に私はいた。


「それで、カズ君はこれからどうするんだ?」

「まぁ依頼を受けたって言っても、まだ具体的なことは何も決まってないですし、今のところはこのまま姫様をからかって遊ぶだけですよ」


まるで息をするかのように酷いことを言っている友人を前に、私はため息を吐いた。かず君は、親しい人間ほど酷く扱う傾向があるので、恐らく姫様とはかなり親密な仲なのだろう。仲良くなった本人にとっていいことは全くないが。


「本当に、大丈夫だろうな?私が出て行っても」

「そこはご心配なく、今までのは言わばウォーミングアップ。本気じゃありません」

「そのセリフ、そこはかとなく不安を感じるんだが・・・」

「まぁまぁ、どうです?一杯」


そう言ってその友人、かず君は鞄からよく冷えた缶を取り出した。


「って、おい!!コレ、ビールじゃないか!!」

「大丈夫ですよ。ノンアルコールです」

「そう、か・・・ならいいのか?」

「そう言わずに、明日旅立つんですから。ね?『勇者』さん」

「・・・それもそうだな。うん、貰おう」

「よし、じゃあ乾杯!!」

「乾杯」


ゴクリ、と喉を鳴らしその金色の液体を飲みこむ。お酒、ではないがそれに準ずるものを飲んだ事の無い私にとって、その味はとても新鮮なものだった。


「なんか、苦いな」

「あ、初めてなんですか?」

「あぁ、でも嫌じゃない苦さだ」

「そりゃあ、良かった」

「にしても、何でこんなものを持ってる?」

「そりゃ、鞄に入れてたからですよ」

「だから何で?」

「備えあれば憂いなしって奴ですよ。他にも色々ありますよ。一か月分の食糧とか、武器とか、変装道具とか」

「凄いな。その鞄に全部入ってるのか?」

「そうです。この鞄、博士に作ってもらったんですよ、その名も『空間圧縮バック』、流石に質量保存の法則は無視できないとかで重さまでは減らせなかったそうですが」

「いや、それでも凄いな」

「ですね、いざとなったらシェルターの役割も果たしますし」

「凄いな!」

「核ぐらいだったら耐えれる設計らしいですし」

「めちゃくちゃ凄いな!!」

「中はちょっとした豪邸位広いですし」

「尋常じゃないぐらい凄いな!!!」

「まぁ、それは無いにしても、かなり便利ですよこれ、滅茶苦茶重いですが」

「無いのかよ!!って、どこまで無いんだ?」

「豪邸の所」

「ほとんど有るじゃないか!!」


かず君はいつも、本当か嘘か分からないような話し方をする。『50%の真実』と言っていたが、もしかしたらコレもかず君の持つ『力』の一つなのかもしれない。まぁ、それすらもかず君の嘘である可能性も高いので、何とも言えないが。


「なぁ、かず君」

「何ですか?」

「『勇者』ってなんだと思う?」

「さぁ?・・・人々の願いをかなえる存在。裏的に言うと、どんな犯罪でも許される存在。魔物的に言うと、天敵。魔王的に言うと、破壊の化身。って感じじゃないですか?」

「さぁ?って入り方の割には沢山でたな。・・・そうか、いろんな視点を持ってるかず君が言うならそれは間違いないな」

「さぁ?結局の所、一個人の感想ですからね」

「それでも、だ。・・・まぁ、私は犯罪を犯すつもりもないし、無駄な破壊もしない、魔物はまぁ、襲ってきたら投げるか。それにしても、人々の願いか・・・」

「どうしたんです?いつもしてるじゃないですか、そんな事」

「まぁ、確かにあの街ではしていたな。でもだ、それはあの街だからだ。考えてもみろ、あの街のトラブルの多さを、あの多さは流石に私が出張らないと解決しきれないぞ」

「それは、まぁ確かにそうですね。でも、それとこれとは別じゃ?」

「うむ、それもまた確かなんだが、ちょっと考えてみてくれ。私たちがこっちに来て三か月とちょっと経つが、目立った事件はたった二度しか起きてないんだぞ?殺人事件もないし、魔王さんも普通にいい人だし、戦争もない、平和そのものだ。これ以上何を望む?私は誰の願いを叶えるために呼ばれたんだ?」

「まぁ、大方主戦派の大臣たちの願いでしょうよ。多分、僕たちを喚んだのも関係者じゃないかと、戦争の道具として使うために、戦争を起こすために」

「・・・・・・」

「ま、『最強』さんは今のままでいてくれれば、何も問題はありませんし、あなたがそう簡単に変わることもないでしょうから、心配はしてませんよ」

「随分私を信頼しているんだな」

「人を信じることで、人は真の力を発揮するんですよ」

「君がそのセリフを言うと、途端に胡散臭くなるな」

「信だけに」

「寒っ!!」

「ま、僕は僕の出来ることをするまでですよ」










「じゃ、これから頑張ってください『勇者』様」

「うむ、行ってくる」

「『魔王』さんによろしく」

「ああ」


かず君に見送られ、私はその扉を閉める。


「・・・盗み聞きか?」

「いやね~ヒカリちゃん。そんなこと私がすると思う?神官ちゃんと騎士君はどうなのよ?」

「私はーこの部屋にー『勇者』様が入っていくのが見えたからー外で待ってただけだよー?」

「私はいくら魔法使いと神官とはいえ、女性二人をこんな暗い所に置き去りにすることが出来なかった為、ここに居た所存であります」


かず君の言う事によれば、この神官ちゃんは見た目にそぐわない性格でこれも演技だとか。そして、『勇者』を教会に取り込むために派遣された要員だとか。その割にコロッと騙されて、その都度面白いリアクションをするからいじり我意があるだとか。

と、いう事はだ。この神官ちゃんを除くどちらかが、もしくはこの二人が大臣派の人間という事になる。となれば、さっきの会話を聞かれていたら、マズイことになっていた。実際は私が<空間謝絶>の魔法を掛けているので問題は無い、はずだ。この世に絶対はないので言い切ることは出来ない。


「まぁいい、三人とも、明日は早いから早めに寝るように」

「分かってるわよ~」

「はーい」

「は、はい!!」


三者三様の返事で返してくる、今後旅を共にするメンバーたち。私はこれから、上手くやっていけるのだろうか。

部屋を出る少し前、かず君は私に言った。私に『光』に成れと。そう皮肉を込めて言う彼は、これからこの国の『闇』に潜るというのに、笑っていた。慣れだと言っていたが、それでもやはり彼が強いから笑えるのだろう。その強さは、私とは全くベクトルの違う強さだ。私には真似出来ない。

出来ることをする。要は、出来ない事をしない。自分の分をわきまえる。かず君が身を持って教えてくれたのはそういう事だ。ならば、私は私の出来る事、『最強』に出来る事、『勇者』に出来る事、そして何より光賀光に出来ることを、しようと思う。かず君の言っていた、『光』が何かは正直な所よく分からないが、今の私のままでいろと言うならそれでいいのだろう。


「<光>よ」


私は、夜の闇を払う光を灯し、明るくなった廊下を歩いてゆく。

ついに明日、私は旅立つ。





まぁ、こんな感じで第一章、なっがい長いプロローグの終わりです。要するに、世界観の説明や目的説明、登場人物紹介の終わり、って感じです。

いや、ホント長かった。自分もなんでこんなに長くなったのかが不思議。

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