表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕達の異世界生活  作者: 真島 真
『かわいい』あの子と『最強』と『最恐』
71/102

第64話『姫の本領』




「おー・・・う、これは・・・予想以上」


本当に予想以上だ。確かに『勇者』の出立記念パーティーだから人が多いのも当たり前と言える。だが逆に考えてみてくれ、たかだか『勇者』の出立記念パーティーだ。その『勇者』が何をした訳でもないし、何をするとも言ってないのだ。それほど『勇者』に対する期待値が大きいのか、はたまた・・・。いや、考えるのはよそう、嫌になってきた。自分だって、好きでこんな事(潜入や情報収集)をしてるんじゃない。ましてや、戦闘なんてまっぴらだ。そもそも、自分は戦闘は苦手分野だ(心理戦、精神戦は抜きにして)。それが、『勇者』が魔族領にでも行ってみたらどうなるか。絶対に、確実に、どこかの馬鹿が戦力を送り込もうとするだろう。そうなったら最後、戦争の始まりだ。初めこそすれ、戦闘は少ないだろうが、長引けば長引くほど自分が戦わなければいけない確率が馬鹿みたいに跳ね上がる。それだけは避けたい。まぁ、『勇者』と『魔王』が会ってお茶会をするのは決まってるし、『勇者』である『最強』さん自身、『魔王』さんの事を好いている事は確かなので、何とかなる気もするが。『勇者』が戦わないとなれば、馬鹿も動けないだろう。それでもなお、戦おうとする底なしの馬鹿は、『最恐』くんにでも頼んで成敗してもらおう。

考えが大分反れた、話を戻そう。そう、とにかく人が多いのだ。普段は、王族しか使用しない第三食堂まで解放している。ここの、食堂の構造は特殊で一階に第一食堂があり、その上に第二食堂、さらにその上に第三食堂がある。その全てが広い食堂の四隅にある螺旋階段、普段は取り外し、床に蓋をしているそれで繋いでいる。そうしてもなお、人が溢れ、時間が経つにつれその数を増していっているのだ。


「本当ね」

「あ、姫様居たんですか」

「相変わらず酷いわね」

「まぁ、私はそんなに立場を気にする人間ではないんでね」

「ソレ、あんたの言うセリフじゃないから」


お、自分の呼び方が「あなた」から「あんた」に戻っている。今日の<祝福の儀>で、晴れて正式に『最強』さんが『勇者』認定されたからだろうか。


「いいんですか?仮にも姫様がこんな所に居て」

「いいのよ、今日の主役は『勇者』だし、御偉方の相手は父上がしてるし」

「そうですか」


最近、この人が『お転婆姫』と呼ばれる理由が分かってきた気がする。この人は、姫様にしては自由すぎる。まぁ、そのおかげで、自分は楽が出来るが。


「ねぇ、あんたに聞きたいことがあるんだけど」

「はい?」

「・・・コレ、何かしら?」


そう言って、姫様が取り出したのは、カプセル代の黒い塊。


「何でしょうか?・・・ん~?」

「分かってるわよ、コレあんたのでしょ」


あ、バレてるのね。まぁ、予想は出来てたけど。姫様の言う問題の物体は、『博士』特性小型盗聴器、周囲半径三十メートルの音をクリアに集音し、バッテリーも一回の充電で百二十時間光の当たる場所では半永久的に持ち、しかも人が来たら自動で起動、集音、録音するという優れものだ。


「この城の重要な部屋、私の部屋とかはね定期的に<探知>の魔法で異常が無いか調べているのよ、それで一昨日あんたが気絶している間に第三食堂を<探知>したら出てきたそうよ」


ってことは、あの会話の後か、道理で聞こえない訳だ。盗聴器を見ると見事に潰されている。結構高かったのに。『博士』だって、わざわざ時間を割いて作ってくれているし、『博士』の技術は他に無いし、材料だってお金がかかるし、それにお金を払わないのは人としてダメなので、少なくないお金を払っている。それ以上の価値がこの盗聴器にはあるからだ。『博士』も研究費用の足しになる、と喜んで受け取ってくれる。まぁ、そんなこんなで自分のお金の殆どは道具を揃えるために殆どが消えていく。それでも、ある程度の金は残るのだが。


「確かに、これは私のです」


まぁ、それ位なら認めてもいいだろう。それに、三万年の時が経つうちに技術がすたれてしまったこの世界の人間に、コレが何か分からないだろう。


「何なのコレは?これで何をしたの?何を得たの?」


薄っすらと、コレが何をするための物なのか、姫様は勘付いているらしい。これだから姫様は侮れない。それに、前から分かっている事だが、姫様は馬鹿じゃない。


「これを父上と『勇者』が居る前で見せようと思うんだけど・・・どう?」

「あー・・・はいはい、分かりました、分かりました。私の負けです。・・・まぁ、見つかった時点で、負けは確定してるんですがね・・・」

「で、なんなのコレは?」

「あー・・・人の話を盗み聞く道具ですよ」

「ッ!?・・・コレが!?」

「声を抑えて、抑えて」

「ごめんなさい・・・コレが・・・そんな・・・凄いわね」


姫様は今の一言だけでこの物の価値が分かったらしい。真剣な顔になった姫様はその手に持った扇で周囲に唇の動きが見えないように口を隠しながら、自分に耳打ちする。


「もしかして・・・あなた・・・」

「しっ・・・ここから先は場所を変えましょう。ここじゃ人が多すぎます」

「そうね・・・こんなとこ、誰が聞き耳立ててるか分かったもんじゃないものね」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ