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僕達の異世界生活  作者: 真島 真
『かわいい』あの子と『最強』と『最恐』
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第閑話『6.女性記者の日本の知識の情報源は副社長である』




彼との約束を果たすためにも、私はここで死ぬわけにはいかない。もとより、こんな所で私は死ぬつもりもないが。


「とりあえず、自己紹介でもしておきます。私の名前は日本一桃香、モモカと呼んでください。こっちは友人でクラスメイトの犬飼健司」

「ケンって呼んでください」

「スティーブンだ」

「ケイです」

「スティーブンさんにケイさんですね。初めまして、よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

「よろしく」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


何をお願いするのかは分からないが、コレが日本語だ。それにしても、彼らはまさかあの資料に載っていた、『桃』と『犬』なのだろうか。日本の童話には、巨大な桃から産まれたという青年が、犬、猿、そして非常食の鳥を従属させ、オニと呼ばれる生き物を虐殺、金品を強奪する。という話があるらしい。この刀を持つ少女がその『桃』から産まれた青年に所縁があるとするならば、この少女の発言の後に続いて発言する少年は『犬』というのも納得できる。それにこの犬飼少年、顔がどことなく犬に似ている。最近、アメリカで流行っている、日本の犬種である柴犬によく似ている。そして、さっきほどよりずっと気になっているのだが、なぜこの少年は上半身裸なのだろう。


「・・・えと・・・何か?」


私の視線に気付いたのか、ケン少年が困り顔でそう言う。


「あぁいえ、いい体つきをしているな。と思いまして、ジロジロ見て失礼でしたね。すいません」


異性に裸を見られるのは嫌かもしれないので、素直に謝った。しかし、言い訳に模したように、ケン少年の身体つきは非常に良い物であったのも確かである。この少年、背丈は私よりも低いものの体つきは意外とがっしりしている。がっしりしていると言っても、筋肉がゴツゴツとしているという訳ではない。むしろ、見た目はほっそりしている。しっかりと服を着れば、そこらの少年と違いが分からないぐらいだ。しかしながら筋肉はしっかりとついている。体の全てに万遍なく、無駄なく、ついている。その無駄のない美しさは、ともすれば彼の巨匠の彫刻を見ているような、とも、大自然を生き抜くチーターのような、とも表せる。そう、完璧にして荒々しく、しかもそれが全て滞りなく機能しているのだ。いや、逆だ。究極に機能的だからこそ美しいのかもしれない。


「いえいえ、こちらこそすいません。分かりますよ、僕が上半身裸なのが気になっていたんですよね」


それはもう、かなり、とても、気になっていた。というか気になって仕方がなかった。むしろ、気にならざるを得なかった。いくら、その筋肉が美しくとも。いくらその筋肉が機能的でも。この国で、いや、法国家において、街中で裸だという事は許されない事である。海や、川ではいいというのに、日本においては温泉や大衆浴場に限って全裸でも許されるというのに。ソコではいいがココではダメという。なんとも、人間の世の中は難儀なものだ。しかし、だからと言って、私は裸が好きだとか、裸族であるとか、脱ぎたいとか、そういった願望や属性を持っている訳でもないので、やはり、結局の所ケン少年が上半身裸であるという事実は、頭の片隅に追いやることは出来ないのだ。


「そういう事もあろうかと、今日はちゃんと着替えを持ってきていまーす。着替えますから待っていて下さいねー」


今日は(・)?・・・という事はケン少年、普段は着替えを持ってきていないという事か?いや、そもそもなぜ着替える必要がある?服など、一度着てしまえばそれまでだろうに。その疑問を口にするよりも先に、ゴン、と刀の鞘で頭を打たれてしまった。


「ったー・・・。なにすんのさー」

「あんたねぇ、その言い方じゃ誤解をしちゃうじゃないの」

「どこがー?」

「今日『は』、『は』、って何よ。それじゃいつもあなたが裸みたいじゃないの」

「あ・・・」


言われて気が付いたのだろう、ケン少年は慌てて先の言葉を正す。


「い、いつもはちゃんと服を着てますからね!?そう、今日はたまたま、たまたま服が破れちゃったんです。その証拠にほら、ズボンだってビリビリでしょ?」


いや、たまたま服が破れるってなんだ。確かに、ズボンはビリビリだが。それは何の証拠にもならないのではないか?


「あ、ちょっと離れないでください!!距離を置かないでください!!僕は変態じゃないんです!!好きでこんな恰好をしてるんじゃないんです!!」

「ならなぜ?」

「な、なぜ・・・って、そ、それは・・・言えませんけど・・・ちゃんとした理由があるんです!!」


ちゃんとした理由?でも、言えないのか。隠すような理由だというなら、やはり信用は出来ない。依然ワーワーと騒ぐケン少年(変態疑惑)に、モモカが語りかける。


「言ってもいいんじゃないかしら?」

「でも・・・!!」

「さっきあの姿を見せたんでしょ?それに、この『街』に入っている時点でこの人たちは認められているんだから」

「そう・・・かな?・・・大丈夫かな?」

「大丈夫よ、私の刀を見ても動じない人たちなんだから」

「そう、だね。うん、わかった」


確かに、刀は割と見たことがある。前の仕事でジャパニーズヤクザのクミチョーを殺した時に、そのクミチョーが刀を振り回していた。私も、刀の出すあの切れ味には驚いたものだ。この国は銃の所持が禁止されているという。その代わりに刀が発展したのかもしれない、この十代の少女が刀を持っているという事は、刀はかなりポピュラーな存在なのかもしれない。

すると突然、ケン少年が四つん這いになった。


「・・・う、うう、うぐぐぐぐ、わああああおおおおおおおお・・・・・!!」


と、まるで犬の遠吠え様な叫び声を上げる。すると、ケン少年の体からおよそ人の体から出るとは思えない音がする。ガキガキギキッグギッボキボキッ・・・。ケン少年の体が、みるみる内に大きく膨らんでゆく。背骨は丸く湾曲し、手足は人間の胴ほどの太さになり関節が逆に成る。顔の骨格が伸び、口から大きな牙が生え、三角の耳が生える。そして、体中から茶色く硬質なけがふさふさと生えてくる。


「・・・おおおおおおんんん!!」


遠吠えが終わるとそこには一匹の獣が居た、先ほど、社長を捕まえていたモノと同じ。その姿は、そっくりそのまま・・・。


「柴犬?」

「オオカミです!!」







副社長さんは仕事熱心ですが、おちゃめな人です。

部下の信頼も厚く、彼になら社長も安心して会社を任せられます。

会社では『困ったら副社長に相談すればいい』と言われている人です。

反対に社長は『普段寝ているのに、しっかり仕事をしているのがむかつく』と言われています。



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