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僕達の異世界生活  作者: 真島 真
『かわいい』あの子と『最強』と『最恐』
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第58話『世界』




「それで?何があったんです?」

「ホントにかず君は揺るがないな、まぁ、ちょっと座ろうか」


そう言って、そこらの椅子を引き出す『最強』さん、分かりにくいからその二と呼ぼう。


「確か、この席は龍斗君の席だったか」

「いえ、鈴木君の席です」

「そうか、じゃあ少し前だな・・・ちょうど良い。私も座れ、長くなるからな」

「あ、あぁ」


まだ、大いに動揺している『最強』さんその一。少し離れた位置に座る。


「じゃあ改めて聞きますが、貴方は?」

「間違いなく、光賀光本人だよ。君たちとは別の世界のね」

「その『別の世界』と言うのは、この世界の事ですか?」

「あぁ、そうとも」


この世界の『最強』か、ふむ・・・この世界には向こうでは(一般に)無いモノが溢れている。そして、まるっきり大陸の形が違う。と言うことは、この世界には自分達が生活していたような環境は無いということになる。ならば、『最強』さんが産まれることは無い筈だ。


「君が考える事も最もだ」

「当たり前のように心を読まないでください」

「いや、その方が手っ取り早いし、どうせ君の事だ、遠回しに聞いてくるに違いない」

「む、確かに、否定はできませんね」

「だろう?・・・で、だ。君の疑問に答えよう。君は多世界理論、パラレルワールドと言うのは聞いたことがあるか?」

「えぇ、と言うか今居るところがそうですが」

「だな、じゃ、その話は飛ばそう。その無数にある世界のうちの一つAとBがあるとしよう。Aは戦争や紛争はいまだあるが、いまだ発展し続けている世界、Bは人口増加が進み、技術も発展し尽くし超高度文明が気付かれている、だが、増えすぎた人口に食料を行き巡らすことが出来ず餓死者が溢れ、後は滅亡を残すのみの世界。さて、この後どうなる?」

「Aはそのまま発展して、Bは滅ぶ」

「聞くまでも無いな、うん、その通りだ。そこで、だ。もしBが世界と世界を繋ぐ技術を持っていたらどうなる?もし、それがAと繋がったら?」

「普通に考えるなら・・・Bがまだ技術の発展していないAを支配したり占領したりするんじゃないんですか?」

「うむ」

「で?」

「で、その結果生まれた世界がこの世界だと考えてくれればいい。大雑把にこの世界について説明すればこんな感じだ」

「はー・・・」

「ん?どうした?」

「あぁ、いえ、ね。なんかこう、スケールが大きすぎて何とも、ね?」


時間も経ち、ある程度回復したであろう『最強』さんその一にも、同意を促す。


「そう、だな」


自分と話しているという状況に慣れることは無いのか、どもりながら答えるその一。


「と、言うことは、その戦争に、文字通りの世界を巡る戦いに僕たちの、じゃなくて、貴方たちの世界は負けた。そういうことですか?」

「あ、いや。済まない、正確には違う。勝ちもしなければ、負けもしなかった」

「なぜ?」

「その前に戦争自体が終わってしまったからだ。確かに、向こうの世界の技術は私たちの世界の数段先を行っていた。そのため、とても危ない状況になった。だが、私たちの世界には、相手の技術すら上回る存在が私を含め数名いたことに加え、本気を出した『博士』が相手の技術をトレース、改良、大量生産したために巻き返すことが出来た。まぁ、そこまでは良かったんだが、やはり向こうが世界と世界を繋ぐ技術を保持していたため決定打を与えることが出来なかった。『博士』もその戦闘の中で大けがを負ってしまってな、その技術を作ることが出来なくなってしまった。もう、そこからは泥沼の戦いだ」

「うわぁ・・・」


想像するだけでも寒気がする。明日仲間が死ぬかもしれない、今日が自分の命日かもしれない、そう考えながら毎日を過ごすのだ。


「それは、どうやら向こうも同じだった様だ。しかし、向こうの支配階級は戦争をやめようとしなかったそうだ」

「それが、どうやって終わりに向かったんですか?」

「君は『神』はどんなモノだと思う?」


自分に馴染みのある『あの世界』の人達は、『神』ではない。あくまでも『管理者』だ。まぁ、見た目がアレな人が多いため『冥界』とか『地獄』とか呼ばれることが多いのも事実だ。あの人たちもそれを分かった上で、ああ名乗っているので、閻魔とか特に、別にいいのだろう。


「え?まぁ、人間の心に住むモノじゃないですか?」

「なかなか、哲学的な答えだな。それも答えの一つだとして、私は『神』と呼ばれる者達と会った」

「・・・・・・」


その二が言う『神』もまた、『管理者』のような存在なのかもしれない。


「どうした?」

「いえ、別に。・・・続きをどうぞ」

「『神』達は戦争の終結を持ちかけて来た。理由は、自分の息子たちが死ぬのはこれ以上見たくない、と。恐らくその息子たちと言うのは、その戦争を吹っかけて来た者達の事だ」

「その申し出に乗ったっていうことですか?・・・でも、それじゃあ反対する人がいたでしょう」

「居たさ、沢山な。だが私や、上層部の人間は貫き通した。『神』を信じることにしたんだ」

「・・・ありがちな条件とかそういうのは無かったんですか?」

「あったよ」

「どんな事だったんですか?」

「細々としたことは多々有ったが、中でも群を抜いて大きなことは・・・『どちらも完全に武器を捨てる事』・・・これだな」

「なっ!?・・んな・・・そんな事が出来たんですか!?」

「出来る出来ないじゃない、したんだ。なんと言われようとな。向こうも『神』が一切の武器を使用できないようにした」

「・・・・凄いですねぇ」

「本当にな、それまで私たちの世界では武器を捨てることなど一度もしたことが無かったんだからな」

「それで・・・世界戦争は終わったと」

「うむ。・・・これで一区切りついたことだし、少し休憩しようか。どうだ、お茶でも飲むか?」

「あ、はい」


何気なく出されたお茶は、自分の好きなロイヤルミルクティーだった。







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