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僕達の異世界生活  作者: 真島 真
『かわいい』あの子と『最強』と『最恐』
60/102

第閑話『3.社長、『街』に降り立つ』

閑話の方が筆が進むという不思議。そして、閑話の方がおもしろそうだという衝撃。私はどうしたらいいのでしょう?




「はぁっ!はぁっ!!・・・社長、なんですかあいつらは!!」

「分からん。とりあえず攻撃してくれ」

「してますが、ほとんど避けられます!!」

「それでもいい、続けろ」



何者かに追われる社長と女性記者。夜の『街』の路地裏を駆け回りながら、謎の襲撃者との攻防を続ける。



「社長何か武器は持ってないんですか!?」

「何を言う、持っている訳ないだろう。君とは違って私はただの記者だからな」

「何を誇らしげに言ってるんですか!?と言うか、何でこんなことに!!」

「分からないと言っているだろう。次の角、右に曲がるぞ」

「はい!!」



女性記者は敵の目であろう所に向かって己の武器を投げつける。やはり、目を狙われるのは、どんな生物でも嫌なようで敵が怯む。女性記者はその隙に角を曲がる。そして、先に曲がったはずの上司の姿を探す。



「社長!!」

「すまない、捕まった」



目の前には、敵と同じ獣の耳を持つ者がいた。







遡ること数時間前、彼らは『街』の駅前広場にいた。



「やっとか」



長時間の移動によって強張った体を解しながら社長が言う。



「本当ですよ。飛行機で13時間、それから電車で2時間。合計15時間にもなれば、やっとと言わずになんというんですか」

「君は手ぶらの様だが、着替えは持ってきているのか?」

「いえ、円の持ち合わせがありますから、ここで買おうかと。・・・それにしても、なんか物々しいですね」



女性記者の目線の先には、トラックや警察車両などで築かれたバリケードや検問のようなものがあった。



「そうだな。まぁ、今から尋ねる、今日の宿の持ち主に聞けば何かわかるだろう」

「その宿の持ち主はこの『街』の権力者か何かですか?」

「いや、ただの一般人だ」

「社長はどこでその人とお知り合いに?」

「彼がアメリカに旅行に来ている時、彼のバッグを拾ってな」

「はぁ、そんな理由で」

「どうした?満足していない顔だな」

「いえ、社長の知り合いだからてっきり凄い人間なのかと」

「ふむ、君は私の事を勘違いしているようだ」

「はい?」

「そもそも、あの時私が君を追い詰められたのもたまたまだ」

「たま・・・たま・・・?」



(偶然?あれが偶然だというのか?私は実際に死に掛けたんだぞ?気が付いたらベッドの上で武装解除されたうえに、縛られていたんだぞ?そしてそこにお前が居たのにか?)



「ああ、偶然も偶然、本当に運が良かったよ。いや、君の運が悪かったのか」

「本当にアレを運で片づけるつもりですか?」

「そうだ。トラックが突っ込んできたのも、ヘリが堕ちてきたのも、椅子が飛んできたのも、すべて偶然だよ」

「・・・・・・・」



(一つ一つなら『偶然』というこの男の言葉を信じても良い。だがそれが全て同時、それも同じ場所で起こる?はっ、そんな偶然あってたまるものか)



「まぁ、何よりも運がいいのは、私が今ここで君に殺されてないという現状だよ」

「・・・・・・」



(・・・・それもそうだ。この男の事は憎いと思っている。だが殺す程の事でもない。本当に憎い相手はもっとほかにいる。むしろ、この男にはあの『組織』から抜ける手掛になってもらったという借りがある。私だって、人の道より外れた所を歩いてはいるが、借りた恩ぐらいは返したい。そのためにも、この男のことをもっと知る必要がある)



「・・・社長」

「なんだ?」

「帰ったら・・・お酒でも飲みながら、ゆっくり話しでもしましょう」

「それはいいな・・・。とりあえず、こちらに馴染む服を買いに行くとしよう」

「はい」










世界に轟く日本の衣服メーカーウニクロで、ブランドものだというのにリーズナブルな値段設定に、若干買い過ぎてしまった社長と女性記者。彼らは第一目的地であり、今後の拠点となる予定の社長の知り合いの家である五十里宅へ向かおうとした。が、検問で止められてしまった。



「すいませんね~。今ここから先は立ち入り禁止なんですよ~」



と言いつつ、日本人特有の半笑を浮かべる警察官の青年。



「何があった?」

「それは言えない決まりなんです。すいません」

「そう・・・か・・・」



そう呟くと、社長は肩を落とす。その姿はあまりにも弱弱しく、社長の身長は警察官の青年よりも大きいというのに、一回りも二回りも小さく見えた。




「どなたか・・・お知り合いがこの中に居られたのですか?」

「そう、だ。・・・でも、入れないんだろう?」

「そう・・・ですね・・・決まりですから・・・」

「せめて、せめて友人の安否だけでも!!」



珍しく感情を露わにし、涙を目に溜めながら警察官の青年に訴える社長。その、妙に迫力のある社長の訴えに怯んでしまった警察官の青年。



「わ、分かりましたから。確認してあげますから!!その御友人の名前は?」

「・・・健太・・・五十里健太だ」

「五十里健太、五十里健太ですね?」



その確認の質問に頷いて答えると、警察官の青年はトランシーバーを取出しどこかと連絡を取り合う。



「・・・・はい、分かりました。・・・・はい・・・はい・・・」

「・・・それで?」

「あなたはスティーブン・ジョーンズさんで宜しいですか?」

「・・・そうだ。・・・これがパスポートだ」

「・・・はい・・・確認取れました・・・はい・・・はい・・・お疲れ様です・・・では」



トランシーバを切った青年は、居住まいを正す。



「スティーブン・ジョーンズ様。あなた様とお連れ様の通行の許可が下りました。どうぞ、お通り下さい。それとこれが通行許可証になります。これを持っていれば、立ち入り禁止区域を除き、すべての拠点に出入りすることが出来ます。ただし、無くしたときは完全に外に取り残されることとなるのでお気を付け下さい」

「・・・分かった」



警察官の青年はもう一度念を押すと彼らを送り出した。









妙な外国人二人を送り出した後、警察官の青年は先ほどの部屋でコーヒーを飲んでいた。



「大丈夫かな?あの人たち」



警察官の青年は窓の外の日が落ちてきて、暗くなりかかっている空を見ながら呟いた。







うっかり立ててしまった死亡フラグ。彼らはそれを回避することができるのか?

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