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僕達の異世界生活  作者: 真島 真
『かわいい』あの子と『最強』と『最恐』
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第閑話『2.社長は部下を教育す』

えー、まさかの閑話二連続です。しかも、結構重要な所をつくという。




ニューヨーク発東京成田空港着の飛行機の中、リーディング・デイズ出版社長の姿がそこにはあった。仕事をしているのだろうか、ノートPCを開きキーボードを叩いている。その横には、つい一時間前に社長がいきなり日本に行くと言い出したので慌てて着いてきた若い女性記者の姿もあった。



「社長、さっきから何をしているんです?」

「何って、もちろん仕事さ。最近はいいねぇ、フライト中でもネットに繋げるんだから」

「仕事してたんですか」

「なんだそのセリフは、まるで普段私が仕事をしていないみたいじゃないか」

「・・・はぁ」

「なぜ溜め息をつく」

「ウチは三流ゴシップ誌を発行する小さな出版社ですが。仮にも社長がこんなにも簡単に外に出るは、普段は社長室になぜか・・・あるベットでゴロゴロしてるは、果てはいきなり居なくなる人が、仕事をしてると思えという方が無理な話です」

「その発言、人間としては立派だが。『情報屋』としてはまだまだだな」

「どういう・・・ことです?」

「何にだって、理由があるという事さ。『情報屋』は見た情報を読んで売るだけの仕事じゃないんだ、その裏を読んで、透かして読んで、炙り出して読んで、そこで初めてソレが『情報』になるんだ。そこからさらに、暈したり、省いたり、盛ったり、加えたり、誰に売るか、どう売るか、どれぐらいの価値を付けるか、そこまで行ってやっと『情報屋』を名乗るべきだ。その点、君は『情報』のとっかかりを見つけたに過ぎない」

「はぁ・・・とか言って、適当に言い逃れをしようとしているだけじゃないでしょうね?」

「あるわけないだろう、それに今日行くことは前々から決まっていたことで、副社長に後のことは全て任せてきてある」

「・・・はぁ」



女性記者は本日二度目の深いため息をついた。社長といるとどうも調子が狂う、この男は本当に私のことを一度破滅の淵にまで追いやった男なのだろうか?その疑問は解ける事無くフライトは続く。







「君は・・・」



社長はノートPCを閉じ、女性記者に対しておもむろに問いかける。



「君はさっきニノシタの事を『疫病神代行』と言っていたな。彼が業界でそう呼ばれていることは有名だ。しかし、君が私の下で働くようになってからまだ一か月も経ってない、そしてその間に彼が来たことはない。と言うことは、君が『前の仕事』をしている時に会った。そうだろ?」



女性記者は来るであろうと予測し、そしてその中で一番警戒度の高い質問に答えを窮する。



「いや、そんなに警戒してくれなくとも大丈夫だ。会ったことが有るのか、無いのかだけでいい」



女性記者はいまだ警戒しながらも口を開く。



「・・・有り、ますね」

「ふむ、どうだった?」

「どうって・・・?ってそれ以上聞いてるじゃないですか!?」

「有るか無いか、はさっき限定だ。それにそもそも、それ以上聞かないとは一言も言っていないからな?で、どうだった?どんな人間だった?どう感じた?」

「・・・」



嫌に押しが強い社長に若干引く女性記者。しかし、それぐらいの質問なら答えてもいいかと思い、こう答えた。



「彼は・・・彼は、いい人でしたよ」

「ふむ・・・」



あんな状況で会ってなければ、彼とはいい友達になれたかもしれない。そう思う位にいい人であった。彼に会ったのはいつだったか・・・もう、二年も前になるのか。そんな感慨に耽る女性記者、しかし、その記憶さえもは社長の思いがけない一言で壊されることになる。



「・・・君も、そう言うのか」



(「も」?「も」とはどういうことだ?私以外にも彼を「いい人だ」という人物がいるのか?それは、普通だ。おかしいことは何もない。しかし、さっき社長が言ったように、表面を読んだだけの情報だ。ということは、この「も」には他の意味が有るのかもしれない。いや、ある。社長はワザと「も」の後を区切ることで「も」を強調している。しかしやはり、この「も」には、『ニノシタの事を「いい人」だと言った人物が他にもいる』という意味にしか取れない。そうか、その他の人物がここでは問題になるのか。だが、これだけでは情報が少なすぎる)



「他の人物とは?」

「うむ、合格だ。さっき言ったことをしっかり出来ているな。やはり君は情報屋に向いている。もっと早くにこの道を進んでいれば大成できただろうに、つくづくもったいないことだ。・・・他の人物とは、そうだな、君のリストに載っていた者たちプラスアルファといったところか」

「!?」



(何故、彼があんな糞虫共に「いい人」と呼ばれている!?まさか、ニノシタも糞虫共の仲間だとでもいうのか!?いや!そんなはずは!)



女性記者の大いに動揺した顔に、少なからず驚く社長。



「大分動揺しているな。なんだ、そんなに仲が良かったのか?」

「・・・っ!!」



(それはない、それはないはずだ。彼とは恋人でもなければ、増して友人という間柄でもない。知り合い以下といってもいい。なのに、なぜ?なぜ?なぜ彼の事を「いい人」だと思う?たった一度しか会ったことのない彼を!!『疫病神代行』と呼ばれていた彼を!!なぜ!?思い出せ、思い出せ。なぜ彼の事を「いい人」だと思った?優しかったから?優しく微笑んでいたから?面白かったから?興味深かったから?助けてくれたから?そういえば、彼の笑顔は印象的だった。どんな顔だったか?そう、口は少し小さかった。鼻は高くはないがいい形をしていた。目は、目は・・・目は?目は!!)



「どうした?」



突然震えだす私を気遣って社長が声をかけてくる。いや、それよりも聞きたいことが有る。



「社長、質問です」

「なんだ?言ってみろ、答えられる範囲で答えてやる」

「彼は・・・ニノシタ・ヒフミは何者ですか?」



そして残酷にも、社長はこう答えた。



「残念だが、答えることは出来ない」




閑話の立ち位置としては、社長と女性記者の視点から『彼ら』のいなくなった『街』の姿を見る。という感じです。なんせ大量に行方不明者が出てるわけですからね。いろいろ問題もあるわけです。

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