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僕達の異世界生活  作者: 真島 真
『かわいい』あの子と『最強』と『最恐』
50/102

第50話『ヒフミ死す!!』



驚異的なネタバレタイトル(笑)








9時だ。部屋の扉をノックする。




「い、いいわ、入って」

「失礼します」




今度はちゃんと返事があってから部屋に入る。姫様は腰に手を当て、ポーズを決めている。そんな姫様はパンツルックだ。しっかりと運動する気の様だ。




「ツッコミませんよ」

「これの何所にツッコミ所があるのよ!!」

「有るといえば有り、無いといえば無いですね。ネタはしっかりと練らなくてはいけませんよ姫様。中途半端で宙ぶらりんです」

「ネタなんてないわよ!コレが地だから!」

「まさか、天然!?」

「もういいわよ」

「そうですね。せっかく動く気満々で着替えたところで悪いですが、此方に着替えてください」

「これは?・・・なんかもの凄い力を感じるんだけど?」

「お目が高いですね。その服は、私の世界の神に仕える者が作った物です。今回の様な幽霊等と相対する時のための物です」

「へぇ~・・・分かったわ、着替えるから出てって」

「はい」




半ば追い出されるようにして、部屋を出る。今姫様に渡した服、純白でポイントに金で装飾された修道服であるが、それをくれたのはイギリスに住む『ヲタク神父』である。彼が好きなアニメに出てきた物を再現したようだ。それでいいのか神父。




「入っていいわよ。凄いわねコレ、力がみなぎる感じがする」

「それは気のせいですよ。それは、護りの服ですからね。運動能力は上がりません」

「そうなの、コレくれない?」

「あげません、貸すだけです」

「そう、まあいいわ。行きましょう」








辺りの空気が生暖かくなってきた。要するに、ここから先はその幽霊の支配区域という事だ。参ったな、これ程の奴とは。普通の人間に『視える』と言うだけでもヤバいのに、この濃密な気配(専門家は『霊気』や『霊力』と言うらしいが)が、尋常じゃない。気持ち悪くて、吐きそうだ。今すぐにでも引き返したい。全く誰だ、こんなになるまで放っておいた奴は。




「この辺よ」

「確かに、空気が変わりましたね」

「な、何よ!!変なこと言わないでよ!!」

「感じないんですか?こんなにも気分が悪いのに・・・あぁ、そうか」




その服か、どうやら修道服コスプレの力は既に発揮されているらしい。




「なに?」

「何でもありません。・・・それより、本当に行くんですか?」

「何、あんた怖いの?幽霊が」

「そりゃね」




何回も殺されかかってますから。せめて、神官の一人や二人ぐらい連れてきたいぐらいだ。




「じゃあ、あなたはここに居てもいいわよ?私は一人で行くから」

「行ってらっしゃい」

「止めようとはしないんだ!?」

「冗談です。私も行きますよ、姫様に死なれても困るので」

「さらっと怖いこと言わないでよ!!」

「まぁ、死ぬだけだったらマシですよ・・・じゃあ、行きますか」

「もっと怖くなったんだけど!?」










一段一段、階段を下りる。暗く長い階段は、マフィアの拷問場へ連れて行かれた時の事を思い出す。




「暗い、わね」

「そうですね・・・魔術灯とかないんですか?」

「有るはずなんだけど・・・無いわね。今朝死んだ魔法使いが使ってたならありそうなものなのに・・・」

「どうやら使っていたのは彼一人みたいですね」




足元、つまり階段を懐中電灯で照らしながら言う。




「本当ね、足跡が一つだけ・・・って何よそれ!!手に持ってるの!!」

「懐中電灯と言って持ち運びの効く灯りですよ」

「貸して!暗くて歩けやしないわ」

「と言うか、地下に行くと言うのに、何で明かりを持って来てないんですか」

「いいから!ほら!」

「まあいいですけどね。もう一つ有りますし」

「ありがと!」




そういって笑う姫様の後に続き、階段を下りて行った。










「ここよ」




そう言ったのは、階段の一番下に着いてからだった。途中いくつか階を過ぎたのでここは相当深いと思う。




「随分、降りてきましたね」

「そうね。昔から、肝試しに使われていたそうよ。まぁ、殆どの人は途中で引き返してるらしいけど」




そう思いたくなるほど長かった。かかった時間は体内時計で約三十分。それにこの空気だ、よほどの覚悟を決めなければ、普通の人間が途中で引き返すのもう頷ける。




「姫様、コレを持っていてください」

「これは?」

「いざと言うときのための道具です。もし何かあったら、コレを貼り付けてください」




そう言って渡したのは、『身代わりの符』文字通り体にダメージを負った際、身代りになってくれる札だ。知り合いから買ったのだが、高かった。そりゃもう、べらぼうに。ウン百万の代物だ。それでも安いというのだから、その性能はお墨付きだ。




「分かったわ・・・一枚しかないみたいだけど、いいの?」

「私にはコレがありますので」




あのセラミック包丁だ。使う事にならなければいいが、まあ無理だろう。




「白い包丁?何で出来てるの?」

「陶器です」

「割れちゃわない?銘とかあるの?」

「割れません。銘は『鬼殺し』です」

「それはまた、たいそうな銘がついてるのね。本当に割れないの?」




この『鬼殺し』銘からも分かるように、鬼を殺すために作られた包丁・・・ではない。この包丁は、普通のセラミック包丁の持ち主だった人が鬼に襲われた際、(その鬼は強盗の常習犯で調査を依頼されていた)偶然刺さったのだ。どうやら、必死になって家具を投げまくっていたらしい。包丁が刺さったのは鬼の心臓近く、まだそれ位だったら鬼は死なず、その人は死んでいただろう。ただ、鬼は運が悪かった。飛び交う家具の弾幕、果ては漬物石まで飛んでくる始末だ。飛んできたテーブルが既に刺さっていた包丁にジャストミート、ダメ押しの、止めの一撃になった訳だ。その時、『鬼殺し』が生まれたと同時に、史上初のママさんオーガハンターが生まれたのだった。うん、『母は強し』である。コレはその人が引退する時に貰ったものだ。数多くの鬼の血を吸ってきたこの包丁、特性として『血を吸うと能力が引き上げられる』という、呪いじみた効果がある。ましてや、さっき吸った血は『最強』さんの血だ。包丁が薄っすらと光ってすら見える。きっと、聖なる力でも付与されているに違いない。




「冷えてきましたね」

「そう?まぁ、地下だから冷えるかもしれないわね」




違う、これは・・・。




「出たか・・・」

「ニ、ニノシタ・・・ああ、アレ!アレ!・・・」

「分かってますよ」




ついに出てきた幽霊は、白く長い丈の服を着た女性という典型的な幽霊だ。洋服か和服か、黒髪かそうでないかを除けば、あまりにも普通な幽霊である。あくまでも見た目の話だが。




「さて、どうします?」

「どうって・・・あ!こっち来た!く、来るなぁ!!」




姫様はもう涙目だ。ほら、言わんこっちゃない。まぁ、怖いのは分かる。自分も慣れているとは言うものの、やはり怖い。本当に、専門家は良くやるよ。




「聞こえてますか?ちょっと待っててください。どうにかしますから」

「・・・どうって?」

「まぁ、見ててください。ちょっと行って倒してきますので」




さぁ、行くか。










やっべ~、マジ怖ぇ~。カッコつけて出たはいいが、コレはダメだ。膝は震えるし、心臓もバクバクと千切れそうなほど早く脈打っている。破れてるんじゃないか?




「フフフフフ」




ほら~、笑ちゃってるよ幽霊さん。怖ぇよ!




「いや~いい天気ですね!」

「フフフフ?」




首かしげられた!あ、意外と美人だ!!なんて・・・呑気な事は言ってられんよなぁ。




「あなたも一緒にならない?」

「お断りします」

「じゃあ・・・」




力尽くで!!・・・と、はい!でました本性!!気持ち悪い!!腕がにょきにょきと、一、二、三・・・二十四本生えている。首の周りには、今まで取り込まれてきたであろう人物達の恐怖に染まった顔が浮き出ている。白かった服は赤黒く染まり、目に毒だ。

『鬼殺し』を構え、様子を伺う。




「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「来ないの?なら、こっちから行くわよ?」




長い沈黙にしびれを切らした幽霊が襲い掛かってくる。それを自分は避けようとするが、いかんせん自分の体のスペックは人間の域で留まる物だ。幽霊の本気の一撃など避けれるはずも無く、身体を貫かれる。普通なら発狂ものだ。

そう、『普通』なら。




「・・・・・・」

「・・・・・・」




沈黙がその場を支配する。だが両者の沈黙には大きな差が存在する。一方は困惑、焦り。そして、もう一方は・・・。




「・・・くはっ」




笑いを堪えての。




「ははははははははははははははははは!!」

「!?・・・っ!?」




『鬼殺し』で自分を貫いている腕を切り落とす。驚愕へと変わって行く幽霊の顔。よしよし、上手くいっている。今のうちに畳み掛けなければ。幽霊に向かって、一歩踏み出す。




「なんで!?なんでなんでなんでなんでなんで・・・!?」




幽霊はさっき腕を切り落とされたというのに、自分に向かって腕を振るってくる。自分はその腕に切り裂かれ、貫かれながら、幽霊に向かって歩みを進める。時々、幽霊の腕を切り落としながら。




「あ、ああ・・・!く、来るな来るな来るな来るな来るなぁぁぁぁぁ!!」




自分が手で触れれる程近くによった時には、先程の腕が二十四本あり赤黒い服を着た気持ちの悪い化け物の姿は無く。白い服、初めに自分たちの前に現れた姿で、二本の腕で自分を守るように掻き抱く弱々しい女性の幽霊の姿があった。自分は止めを刺すために包丁を持つ手を振り上げる。




「止めて!」











「止めて!もう、もういいでしょ!?やり過ぎよ!!」

「はい?」

「もういい、いいのっ!もうこの幽霊さんも危険は無いはずよ!」

「ですが・・・」

「ですがも何もないの!幽霊とは言え泣いてる女の人に手を上げるとか、人として最低よ!!」

「はぁ・・・そこまで言われたら仕方ありませんね・・・」




まるで自分が、悪人の様ではないか・・・。振り上げていた包丁を下す。




「まあ・・・良いでしょう。放って置いても、そのうち消えるでしょうし・・・」

「あなたもごめんね?怖い思いさせちゃって」

「・・・・・・」




姫様の問いかけに幽霊の返事は無い。と言うか、お前だろ最初に幽霊退治を言い出したのは。と言う思いは飲み込む。




「さて、帰りましょうか」

「そう・・・ね、帰りましょう・・・」




姫様は名残惜しそうにしているが、ここに長く居るのは余り良くない。振り向き、階段に向かって歩き出す。二、三歩、歩いたところでゴン!!と言う鈍い音がする。何の音だろうか?と思いつつも歩みを進める。




「ニノシタ!それ!頭!!」

「・・・は?」




頭に何かあるのだろウカ?・・・アタマを触ったテニハ・・・チがベッタリト・・・ツイテイタ・・・・・・・・








ヒフミ君のフラグ回収率は現在100%です。




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