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僕達の異世界生活  作者: 真島 真
『かわいい』あの子と『最強』と『最恐』
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第45話『新聞(2)』




王城には食堂が三つある。王城に勤める騎士や使用人が食事をする「第三食堂」、これまた王城に勤める大臣などが食事をする「第二食堂」、王族が食事をするための「第一食堂」。

自分は今、その内の第三食堂に居る。理由はもちろん、朝食を食べるためである。




「おはよーございます」




あぁ、そういえば初めの頃はカタコトで話していたが、すぐにやめた。カタコトで話す方がむしろ目立つことが分かったからだ。




「おう、おめぇか、姫様付の従者になったんだってな、大出世じゃないか」

「はは・・・何故ですかねぇ?」




このおっさんはグランツさん、第三食堂のコック兼料理長だ。




「姫様は、お転婆だからなぁ、お前から湧き出る面白そうな臭いを嗅ぎ付けたんだろう」

「なんすかそれ」




どんな臭いだ。




「それで?今日も姫様にお食事を作って持っていくのか?」

「そうっすね、はぁ、めんどくさいっす・・・」

「おいおい、そう言ってくれるな、姫様は喜んでるんだろう?ソレでいいじゃないか」

「まぁ、それもそうなんすけどね・・・」

「さぁ、さっさとソレ食って、姫様に食事を持って行ってやれ」

「うい~す」




パンとスープが乗ったプレートを渡される。パンは黒パンなどではなく、普通の白パンだ。スープは薄味のコンソメスープの様な物。さっぱりとした、朝にピッタリなメニューだ。

席を探すために食堂を見回す。その中で不自然に空いている一角がある。ここに座れという事だろう。そこに座り、ご飯を食べ始める。すると、向かいに一人の騎士が座った。




「おはよう田中君」

「おはよう。いつも気になってるんだが、どうやって見分けてるんだ?見た目は変わらんだろう?言葉がおかしい気もするが」

「なんとなく、かな?」

「聞かれても困る」

「それより、今朝の新聞に載ってたアレ、田中君か?」

「何の事だ?」

「お前がやったんだな」

「だから、何の事だって」

「『王城で魔法使いの変死』、これでいいか?」

「知らんな、アレは自殺じゃないのか?」

「とぼけるか・・・まぁ、それならそれでいいんだが・・・やりすぎるなよ?」




田中君に掛かったら、普通の人は自殺させられて・・・・・しまう。




「やりすぎるなよって、完璧に俺を犯人に決めつけてるだろ」

「え?違うの?」

「違うわ!確かに俺は【支配】出来る。出来るけど、そんな外道なマネはしない!」

「何だ、疑わせるような発言しないでよ、紛らわしい」

「今の俺が悪かったのか!?」

「それで?なんか僕に用があるんじゃないの?」

「てめ!!話題変えやがって!!・・・はぁ、だから嫌なんだよ・・・そう、用事だ用事。光賀に至急伝えて欲しい事がある」

「何?」

「光賀もそろそろ『勇者』として王都から旅立つだろ?」

「そういえば、そうだね」

「そこで、だ。この世界の『魔王』様が話をしたいらしい」

「あ、そう。言って来たら?」

「それが出来ないから、こうしてお前に話してんだよ」

「なんで?って、あぁそうか・・・」

「そうだ・・・」

「恥ずかしいからか」

「って違うわ!!」

「じゃあなに?」

「今、光賀の『勇者』としての準備期間が終わろうとしてるだろ?」

「うん」

「で、『勇者』と言えば何が必要だ?」

「ゲームなら、防具と武器、聖剣?は旅の途中で見つけるんだっけ?と、後は仲間か」

「そう、仲間だ。仲間が居て簡単に近づけん」

「その仲間を【支配】したら?」

「・・・あいつら個性的過ぎる・・・」




突然、無言になった田中君を見る。するとどうだろう。田中君はブルブルと震えているではないか。あたかも、携帯のバイブレーションの様に。ソレを見ているのは、とても面白い。が、今はソレをいじっている時間は無いので、先を促す。




「・・・とにかく、あいつらは【支配】出来ないから、お前から光賀に伝えてくれ」

「分かった。何ていえば?」

「そうだな、とりあえず『魔王がお茶会に招待したがってる』とでも伝えてくれ」

「お茶会!?マジで!?」

「割と本気で、そうらしい」

「・・・うん、もういいや」

「じゃ、頼む」

「ウィ」




とまぁ、そんなこんなで話が終わるころには、自分の食事も終わっているので、使った食器を返しに行く。ちなみに最後のはフランス語だ。




「ごちそうさまでした」

「おう、じゃあさっそく」

「うい~」




厨房に入りエプロンをつける。何故、自分が姫様の食事を作るようになったかというと。そこに深い理由なんてある訳も無く。姫様が、自分の、ではなく、自分の世界の料理を食べたいと我儘を申したからである。とは言ったものの、こちらの食事のレベルは結構高い。故に、自分の様なトーシローが作った料理ではなかなか厳しいものがある。




「はぁ、どうしたもんかねぇ~」




と、言いつつもしっかりと『仮面』は付け替えている。『天才猟理人』の『仮面』だ。「料」ではなく「猟」なのが残念だが、彼女の料理の腕は確かなので良しとする。彼女と出会ったのは、ある冬の日の事だった。と思う、とにかく寒い所で出会ったのは確かだ。『冥探偵』と自分は有名なシェフや美食家が集まるパーティーに招待された。その時、案の定と言うか、もはや決まっていた、という風に事件が起きた。ここで、その事件の詳細を語ることはしないが、彼女は事件解決に役立ってくれた。主に犯人を捕まえるときに。犯人を追う際、森(と言っても寒い地方だったので、緑溢れる豊かな森ではなく。葉が落ちて丸裸になった木が、文字通り林立していた)に逃げた。その犯人、美食家としての顔も広かったが、裏の顔は鬼や怪物、人間でない者を食らう、所謂『食鬼人』としての顔も持っていた。鬼を食らわばその力を得る、まさに、人間離れの能力を持っていた。そんな人物に、頭脳労働専門な『冥探偵』や、人間の枠に収まる自分が敵う筈も無く、ちょっと困っていた。そこで、力を貸してくれたのが、彼女『天才猟理人』その人だった。彼女の手に掛かれば所詮美食家、逃走の、闘争の素人は、猟犬に哀れ追い込まれたシカ同然だった。あっという間に捕まった犯人は、警察ではなく、今まで被害にあった、鬼や怪物たちの被害者の会、または怪、に引き渡された。

と、つらつら考えているうちに勝手に料理は出来上がっていた。そんな馬鹿な。と思うだろうが、彼女は並立思考、マルチタスクが出来る人間だった。片手間でも料理は出来る。と言うか、半自動的に体が動く。




「出来たか、そりゃなんだ?」

「さぁ、野菜と豚肉のあんかけ炒め?ですかね」

「面白いな、これメニューに加えてもいいか?」

「いいですよ、ご飯は?」

「炊いてある」

「ども、では」

「おう」




流石料理長、今のだけでレシピを覚えている。もしかしたら、完全記憶能力でも持っているのかもしれない。自分の作った料理、正確な名前は知らないが、朝にはキツイような気もするが、今は朝は朝でも昼に近い時間になっているので大丈夫だろう。『天才猟理人』も多分そう言う事で、この料理を作った気がする。

さて姫様は、今日はどんなリアクションを取るだろうか。楽しみだ。





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