第33話『回想~メイドさんと~』
ヒフミ視点、相変わらずキャラが定まらない
さて、何故あんな事になっていたのかと言うと、話は数日前まで遡る。
仕事をしろと王に命令された自分は、メイドさんや執事さん(使用人と言うのか?)たちと一緒に、この城で言葉を覚えながら(『最強』さんの<言語理解>の魔法で言葉は分かるものの、この魔法が解けた時、もしくは魔法無しでも会話出来るように)働くという流れになった。
まぁ、それが数週間前の話である。
なんだかんだ言っても、ここの生活には慣れてきた。
『人は慣れるものである』昔の偉い人が言っていたような気がする。
それには自分も、大いに納得できる。
いやむしろ、それ以外なんだって言うんだ。
自分の人生、慣れなかったら即アウトな人生だった。
各国のマフィアに潜り込んだ事もあった。
絶海の孤島で殺人鬼と一緒にサバイバルした事もあった。
超高層ビルのエレベーターでの超知能犯罪者と『冥探偵』の一騎討ち、
問題が出されて答えられなかったら、エレベーターが落ちるというのもあった。
ソレ等が、まだマシと言える人生だ。
たかだか異世界に飛ばされたくらい、大したことない。
「今日はここを掃除します」
「ハイ、分かりましタ。今日もフラフィーさんハ、お美しいデス」
「全くそんな言葉ばかり覚えて、さっさと掃除を始めなさい」
「スミマセン、もうイチド、ゆっくり言ってクダサイ」
「さっ・さ・と・掃・除・を・始・め・な・さ・い」
「ハイ!!分かりましタ!!マイマスター!!」
「な!?ちょ!!待ちなさい!!マイマスターって何です!?」
カタコトの演技は忘れない。あとボケも忘れない。
自分に指示を出して下さった、メイドのフラフィーさん。
初めて見たときは艶のある銀髪かと思ったが、よく見たら薄っすらと紫色な髪色。
目は大きくやや釣り目気味、鼻はそこまで高くないもののとても形がいい。
唇は薄すぎず、厚すぎず。手足が長く、体の線が細く見えるが、弱くは見えない。
胸は普通だ、だが全体のバランスが非常に取れているため、とてもカッコイイです。
アレか、いわゆる補正と言われるヤツか、登場人物全て美形なのか。
「何をジロジロ見ているんです?」
「ン~~~・・・・フラフィーさんの?・・・・・・・・アッ!!カラダ?」
ゴッ!!っとホウキによる突きが額に突き刺さる。
いいツッコミだ!!だけどホウキは痛いから止めて!!
さて、真面目に掃除するか。自分の任せられた場所は廊下。
城の掃除に当たって注意すべきは、やはり豪華な調度品の数々だろう。
傷を少しでも付けたら、一生掛かっても返せない程の金額を要求されるかもしれない。
だが、傷を付けてもきっと、『最強』さんか『最恐』君が帰り方を見つけて、
さっさと元の世界へ帰るだろう。
たとえ、『最強』さんや『最恐』君が帰り方を見つけれなかったとしても、
『最強』さんが元の世界に居る『博士』に、『世界を複数人でも越えられるモノ』を
依頼しているので、元の世界で早くて一ヶ月、
長くても三ヶ月もすれば造り上げてくれるだろう。
元の世界で一ヶ月、こちらの世界での一ヶ月が元の世界での一週間だから、
単純に計算しても、こちらの四ヶ月で向こうの一ヶ月である。
長い、下手すると一年もここに居なければならない。
それ程の間、家(ボロアパートの一部屋)に帰らなかったら、
大家さん位心配してくれるだろうか?
しないか、何日も居ない事なんかよくあったし。
家賃もまとまった金が入った時|(『冥探偵』の『お供』としての仕事の報酬)に
前払いしてる。
まぁ、帰った時の心配をしなくていいのはとても楽だ。
『冥探偵』との仕事は、沢山の金が入るものの、その度に死んだり、死にそうになるし、
帰ったら家が無くなっていたというのもよくあった、
部屋とか家とかが自分の所有物ではなくなっていた、
ではなく物理的に、いわゆる更地、英語で言うならグラウンドゼロである。
グラウンドゼロ・・・中学生が好きそうだ。
はてさて、さっきから思考が脱線しっぱなしだ。
今は掃除だ、掃除。
大理石の様な石の壁を濡らした雑巾で、ん?雑巾?なんか汚そうだな。布巾で拭く。
洗剤みたいなものが在れば良かったものの、生憎そういうモノは無いらしい。
コレもまた、魔法が発展している代償と言うやつだろうか。
魔法、つくづくファンタジーだな。
自分に使えるだろうか?無理か?無理だな。うん、きっと無理だ。
『最強』さんは、『最強』さんだから魔法が使えたんだ。
徒然なるままに思考を垂れ流していたら、向こうの方から人が二人歩いて来た。
「アレは・・・大臣の息子と姫様です。やることは分かっていますね?」
「ハイ、アイアンクローですネ」
「違います、何です?それは」
「間違えましタ、アイアンボムDETHネ」
「一体何の事だかわかりませんが、発音が一部違うことを指摘しておきましょう」
「ム、このボケが通じないノデスカ・・・」
「あなたは何がしたいんです?」
「漫才」
「今とてもいい発音でしたが、それを求めても何の得にもなりませんし、
今すべきことは全く違います」
「ハイ、分かっていまス」
「分かっているなら初めからしなさい」
「ハイ、スミマセンでした」
「うん、よろしい」
「ところで、何をするのデスか?」
ダンッ!!っと勢いよく突き下ろされるホウキ、そしてその先には
「ッ!?足がっ!!足がぁぁぁぁぁ!!ただのボケなのにぃぃぃぃぃ!!」