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僕達の異世界生活  作者: 真島 真
『かわいい』あの子と『最強』と『最恐』
32/102

第32話『真夜中の襲撃』



遅くなってすいません。

ヒフミ君の話ですがヒフミ視点ではありません。






男は夜の街を駆け・・・てはいない。徒歩である。

夜の街を走るなど、どこからどう見ても不審者のする行動である。

服も普通の服である。まぁ、普通の服と言ってもそれなりに金のかかった服である。

今から行くところには、それ相応の服装をして行かなければならない

暫く街灯のともった道を歩き、目的地に通じる門の前に着く。

門には夜勤の兵士がいる。




「身分証を見せてもらおうか」

「これです」




男は身分証を渡す。




「うむ、確かに身分に偽りはないようだな、通っていいぞ」

「お勤めご苦労様です」

「お互い様だ」




男は兵士の労をねぎらい、堂々と門を通る。

城内に入り、防衛のために入り組んだ廊下を通り、目的地の扉の前に立ち止まる。




「今からお前を殺すが、許せ」




これは、男が“仕事”の時に言う、言わば矜持の様なものだ。

改めて目標に関する資料を思い出す。

資料には写真(魔法で撮られた物)があった。

目標の特徴は、この国、いや、この大陸では珍しい黒髪黒目。

顔は、彫りの浅いまだ幼さが多く残る顔、しかしその目に映るのは深い絶望。

男は仕事柄そういう目をしている者を見ることは多かった。

しかし、今回の目標の目に映る程では無かった。

気持ち悪い。男は素直に気持ち悪いと思った。

どうすればこの年齢でそれ程の絶望を体験することができるのか。

何故ここまで生き続けることができたのか。何故それでも生きているのか。

いやいや、これから自分が殺すのだから、そんなことを気にする必要はない。

そう男は気を取り直しノブに手を掛ける。

なるべく音を立てずに暗い部屋の中に入る。

目標がベッドに寝ているのを確認する。

男は資料に間違いが無い事をひとまず安堵する。

が、油断はしない。

目標と指定された者が、自分に対する刺客という場合も無いではないのだ。

目標は規則正しい寝息を立てている。

ベッドの傍に立ち、男はナイフを抜く。

そのナイフはわずかな光も照り返さないように黒い塗料で塗られている。

男はナイフを首筋に、喉笛を絶つように一閃する。

まだ切った訳ではない、一撃で確実に仕留めるためのデモンストレーションだ。

そうして、最後の確認をした男はナイフを振りかぶり・・・




「ぐぇっ!?」




変な声が聞こえた。

目標の喉笛を絶ち切るはずだったナイフを見る。




「濡れていない!?」




男はすぐさま、逃げようと身を翻す。

“仕事”は失敗だった。目標は生きている。理由は分からない。

そう遠くない扉のノブに手を掛ける。




「開かない!!」

「あぁ~~~このドア、建付けが悪いんですよ~~~」




男の切迫した声に、間の抜けた声が答える。




「建付けが悪い、だと!?」




そんな原因で捕まりたくはない、男はそう思った。




「そ、建付けが悪い、無理に出ようとしたら大きな音がして隣の部屋の人が起きちゃうよ」

「ならば窓から!!」

「うんうん、そりゃ窓から出ようとするよね~~~」

「この部屋・・・窓が無い!!」

「いや~~~いい反応~~~おじさん芸人に成れるよ」




逃げられない!!男は焦った。

何でこうなった!!




「あ、『何でこうなった?』って思ってるでしょ」

「・・・いや、思っていない」




図星だったが、男は虚勢を張った。

そう言いながらナイフを目標に向ける。




「逃げれないから、僕を殺して、ゆっくり帰る?」

「そうだ」

「僕は叫べばいいだけだよ?」

「叫ばないだろ?」

「うん」

「じゃあ、すぐに終わらせてやるから大人しくしていろ」

「いや」

「そうか、まぁ関係ないがな・・・・・・はっ!!」




男は、目標の目に向かってナイフを突き出す。




「おっとぉ」

「そういえば、さっき何故ナイフが通らなかった?」

「言うと思う?」

「それもそうだなっ!!」




男は、目標の腹に蹴りを放つ。




「うっ!!」

「ナイフは通らなくても、衝撃は通るのか」




効くと思わずに放った蹴りだったが、どうやら効いたようだ。




「いったぁ~~~、そういえば、おじさんって殺し屋?」

「いや違う、何でも屋だ、金さえ払ってくれれば何でもする」

「そう、じゃあ今回のコレも依頼主の金払いが良かったから?」

「ああ、前金で金貨一枚、依頼成功で金貨三枚」

「じゃあ、僕がそれ以上払うって言ったら・・・僕を殺さない?」

「そうだな、無理だと思うが」

「出来るよ」

「何、だと!?」

「出来るよ、ね?『最強』さん」




む、呼ばれたか。

ここまで長かったぞ、そもそも私は語り手・・・をするのは好きではない。

ならば、登場ぐらいは派手にやらせてもらう!!




「呼ばれて飛び出て華麗に見参!!みんなのアイドル!!みんなの勇者!!

 弱者を助け、強者も助け、悪を撃ち、正義を助く!!ただし有料!!

光賀 光、美麗に顕現!!」




小規模な爆発とともに決め台詞を言い放つ!!




「長いし、煩いし、ゴロが悪い!!しかも金取るんだ!!」

「それはそうだろう、金が無いと何も出来ん」

「・・・・・・・」





男は唖然としている。

まぁそうだろう、私は天井に立っている・・・・・のだから。




「おい、唖然としているところ悪いが、戻って来てくれ」




でないと話が進まない。





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