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僕達の異世界生活  作者: 真島 真
『かわいい』あの子と『最強』と『最恐』
27/102

第27話『魔物』



遅くなってすみません。

この中で書かれている馬車の御者の仕方は、

調べた物ではないので正しくありませんのであしからず。







お昼ご飯を食べた僕たちは、また馬車に乗り込んだ。

今度は、フェリシアと僕が御者台に、ゼイスさんは中に座る。

御者台にわざわざ二人も乗ったのは、僕が御者の方法を覚えるためでもある。




「いい?カオル、こうやって馬に指示を出すの」




縄をピシッ!とする。

すると馬が、歩き出した。




「これで歩け」




ピシピシッ!!とする。




「これで走れ」




ピシピシピシッ!!!




「もっと走れ」




ピシピシピシピシッ!!!!




「もっともっと走れ、それで・・・」

「と、とりあえず!!叩いたら走ってくれるんだね!!」

「そ、そうね」




ごめんね、お馬さんいっぱい叩いて・・・

届かないと思うけど、一応念じておいた。




「他は?」

「この縄を後ろに思いっきり引っ張ると、止まれ。

 軽く引っ張ると、速度を落とせ。右に引っ張ると、右に曲がれ。

 左に引っ張ると、左に曲がれ」

「うん、覚えた、簡単だね」

「やってみて」

「うん」




走っているお馬さんに、速度を落とせの指示を出すため、

縄を軽く引っ張る。

すると、お馬さんがその指示に従ってくれる。




「おぉー、ありがとう!お馬さん」

「何言ってんの?カオル」

「お礼」

「なんで?」

「初めての僕の指示に従ってくれたから」

「そりゃ、しっかり訓練された馬だからね、

 ちなみに名前は、左がイギーで右がノラ、どっちもオスよ」

「そうなんだ・・・宜しくお願いします」




任せておけとばかりに、お馬さんたちが嘶いた。




「良かったわね、認めてくれたみたいよ」

「ほんと?じゃあ改めて、僕の名前は櫻井 薫宜しくお願いします」

「馬にまで自己紹介するのね、カオル、でもたかが馬よ?」

「馬って賢いんだよ?ねーお馬さん?」




うんうんと首を振るお馬さんたち。




「ほらね?」

「本当ね、知らなかったわ」














御者のしかたは憶えたので、

僕に教えるために御者台に乗っていたフェリシアは、馬車の中に入った。

だから僕は今一人だ。

御者を覚えたと言っても、お馬さんたちは頭がいいから道が悪い所は避けてくれるし、

急ぐ旅でもないので、走らす必要もない。

景色は見渡す限りの草原、

初めて見たときは感動したけど、ずっと見ていたら慣れもする。

お昼ご飯を食べたのは二時間ぐらい前だけど、

ほとんど何もしていないので、小腹も空かない。

僕がこないだ武器屋で買った物も、そう手入れするような物でもない。

魔法だって、僕が使う<魔法陣>は全て覚えたし、

こんなところで魔法を使う必要もない。

ぶっちゃけて言うと今僕は・・・




「暇だよ・・・お馬さん」




お馬さんに語りかけてみた。

お馬さんは、それはどうしようもねぇよ、と言いたそうに首を振った。

このお馬さんたちは妙に人間臭い。




「昔は人間だったとか・・・ないよね?」




お馬さんたちがビクッとした気がするけど・・・まさかね・・・




「ひま~♪ひ~まひ~ま♪ひっまひま~♪」




と歌ってみたけど、悲しくなったからやめた。














僕が暇を持て余していると、突然お馬さんたちが止まった。




「あれ~?どうしたの~?」




お馬さんたちは前を見て、それから僕を見た。




「向こうに何かあるの?」




向こうの方に点々と何かがあるのは分かるけど、遠くて良く分からない。




「フェリシアー、ゼイスさーん」




馬車の中にいるフェリシアとゼイスさんに呼びかける。




「なんじゃ?」

「どうしたの?カオル」

「お馬さんたちが止まってね、向こうになんかあるみたいなんだよ」

「ほう、フェリシア」

「うん、これは・・・魔物の臭いね」




こんなに遠くからでも分かるのは、フェリシアが犬狼族だからだ。

犬狼族はオオカミや犬の魔獣と人間の間に産まれた者の子孫だ。

代を経る毎に魔獣から受け継いだ力は薄れて行っていて、

フェリシアも魔獣の力など殆どないとは言えども、

普通の人よりも魔力や身体能力が高い、それは努力や才能だけではなく、

魔獣の血を引いているからだ。




「魔物!?うわわわ、どうしよう」




魔物と魔獣は大きく異なる。

魔獣には大きな魔力、高い知性、飛び抜けた身体能力があり、

そして何より人語を解す。性格は温厚だが、それは礼を持って接した場合だ。

人を襲う事は基本的に無い、無礼な者や、己を殺そうとして来た者、

そして己を愛するものを傷つけた者には容赦しない。

魔物は凶暴で、人、魔族、関係なく襲う。

だが百年以上前、サトーさんが人と魔族の長年続いてきた戦争を止めるまでは、

人間の間では、魔族が魔物を操っているなどと言われていたそうだ。

その関係で昔気質な人間の間では、魔族を嫌う、魔族を差別する様な人が居るそうだ。

これがこの大陸、人間種、獣人種、妖精種が住んでいる東の大陸での常識だそうだ。




「フェリシア、行きなさい」

「分かりましたゼイスさん」

「行くってどこに?」

「魔物を倒しにね、ちょっと待っててね」

「え?・・・ちょっ!!」




そう言ってフェリシアは僕が止める間もなく走って行ってしまった。













ここから見える(と言っても点のようにしか見えないが)

魔物の数は約四十、それが固まっている。

その塊に向かっていく一つの点、フェリシアだ。

フェリシアはもの凄いスピードで塊に迫って行く。

元の世界であのスピードを出せる人間は少ないだろう、

光賀さんと『怪足特急』と呼ばれている人しか思い浮かばない。




「速い」

「そうじゃろう、アレは獣人の脚力と身体強化の魔法を使っておる」




やっぱり魔法を使ってるのか、どうりで速い訳だ。

やっぱり光賀さんは凄いんだ。

とも思うし、魔法ってすごいとも思う。

だけど魔法は便利すぎる。

僕が見てきた限り、この世界の技術レベルはファンタジーでよく読むような

中世ほど、それに魔法という技術が加わり一部発展しているという状況。

冷蔵庫はあるのに冷凍庫は無い、上水道はあるのに下水道は無い、

何故そんな中途半端な発展具合なのかというと、

食品を冷やしたら長持ちするのは分かるが、

それがなぜ長持ちしているのかが分かっていない、

下水がたまったら<浄化>で綺麗にしたら良い、という具合だ。

何故そんな事になったのかというと、やはり魔法があるからだろう。

おばあちゃんの知恵袋的に魔法が教えられているからだ。

『ずっと汚れたままでいると病気になります。

 なので、定期的に<浄化>をしましょう』みたいに教えられている。

そこには『汚れたままでいると病気になる』というのはあるが、

『病気とは何なのか?』が無い。

簡単に言うと・・・

元の世界・・・病気になった→何の病気か調べよう→病気の治療

この世界・・・病気になった→魔法で病気の治療

みたいな感じだ。

要するに何故?どうして?が無いのだ。

『魔法で治るからそれでいい』のだ。

だが、このままじゃダメだと思う、毒や菌(このせかいでは悪い精霊に例えられている)

の概念はあるものの、細胞などの知識が無い、ゆえにここの人たちが使う魔法では

まだ治せないものが沢山ある、ガンや腫瘍などがいい例だ。

この世界の魔法は日本語である古代語と魔力、そして個人のイメージから成り立っている。

このイメージ日本人なら簡単にできるだろう。

しかし、この世界ではイメージの元となる情報そのものが少ないのだ。

体の中をイメージしたいなら、体の中を見たことが無ければならない。

その上、病気についての知識が無いので打つ手がない。




再びフェリシアを見る。

フェリシアは塊に突っ込む寸前だった。





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