第25話『のんびり馬車の旅~ゼイスさんは空気~』
カオル視点に戻ります。
説明回です。
「カオルー!準備できたー?」
「うん」
「では、行くとするかの」
今まで色々あったけど、出発だ。
僕たちは、勇者で王様だったサトーさんの日記が残っている、
図書館があるという、王都に行くために村を出た。
この前のお買い物は、そのための準備という事だ。
「お~、馬車か~、初めて見たよ~」
「じゃあ、乗るのも初めてね」
「うん・・・あ、馬車って揺れが激しかったりする?」
「そんなことないわよ、この馬車、高かったし」
「どれくらい?」
「金貨二枚ぐらい(約二百万円)」
「うわー、高いなー、やっぱゼイスさんお金持ちなんだー」
「ほっほっほ、使わないだけじゃよ」
馬車に乗り込む。
馬車は、二頭引きで、
大きさは軽のワゴン車ぐらいの大きさ、屋根に荷物を積めるようになっている。
外装は、飾り等は殆どなく、極めて質素なものだ。
内装は、外装に比べお金がかかっているらしく、
外と中の差に驚く人が居るかもしれない。
椅子は、扉をはさんで、対面するようにして備え付けられている。
その椅子も、長旅でも疲れないように、少し硬めの椅子だ。
僕と、フェリシアが中に乗り込み、ゼイスさんは御者台に乗る。
「なんか、思ってたのと違うかな」
「どう?」
「なんかもっと、赤い絨毯みたいなのが椅子とか床とか壁とかにある感じ」
「ははっ、いくらなんでもそれは無いわよ」
「そうなの?」
「悪趣味じゃない、まぁ、他の金持ちはどうか知らないけど」
「そうだよね」
きっと、ゼイスさんが特別なんだろう。
昔は、普通に働いてたと言っていたし、金銭感覚が普通の人に近いのかもしれない。
ガタガタと、馬車が走る時速30キロぐらいだろうか。
「意外と、揺れないんだね」
「そりゃあ、さす・・・さすなんとかが入ってるからよ」
「サスペンション?」
「そうそれ!サスペンションが入ってるからよ!!」
「へ~」
馬車にサスペンションが入ってるのは意外だ。
「サスペンションも勇者サトーが伝えたものね」
「サトーさんは一体何をしたかったんだろう?」
「そういえば、あんまり武勇伝みたいなのは残ってないわね」
「そうなの?」
「ドラゴンを倒しただとか、そういうのはあるんだけど、
意外と少ないのよね」
「あるじゃん、ドラゴンを倒したのが」
「ううん、それでも少ないのよ、
ましてや何百年も続いてきた戦争を終わらした勇者なのよ?
もっとあってもいいはずなのよ」
「そんなに少ないんだ?ゼイスさんのは?」
「それが、勇者サトーよりも多いのよ」
「158年も生きてるんだったら当たり前じゃないの?」
「それも無いのよ、ゼイスさんは勇者サトーに会うまで、
ずっと古代語の研究をしていたらしいの」
「古代語ってことは、日本語の研究をしてた?」
「そうね」
「じゃあ、サトーさんに会って、古代語、日本語を話す
生きた資料が目の前に現れたから、もう研究する必要はないと?」
「そういう事になるわね」
「それが、58歳の時」
「そして勇者サトーと共に旅をした」
「それだったらおかしいね」
「おかしいでしょ?」
「王都に着いたら、そういうのを調べるのも面白いかもしれないね」
「その前に、することがあるわ」
「なに?」
「買い物でしょ?おいしいもの食べて、カオルに可愛い服を着せて、
面白い物を買うの、ついでにカオルが学校に編入するための手続き」
「おいしいものは食べたいけど、可愛い服はやめて!!
学校に編入するための手続きが何でついでなの!!」
「なんでよ!!服は重要じゃない!!
この前買った服だって着てくれないし!!」
「イヤだよ!!あんなの!!」
「そんな!!カオルのために買ったのに・・・・・・
そうね・・・・・・カオルは男の子だもんね」
「そうだよ」
「だったら、カオルが女の子になればいいだけの話じゃない!!」
「なんで!?」
「男の子だから着れないんでしょ?」
「そう・・・だけど・・・そういう問題じゃにゃいよ!!」
「噛んだ」
「・・・・・・そういう問題じゃないよ!!」
「無かった事にしたくても、顔が真っ赤だぞ~」
「はぅ!!」
僕達が行こうとしている王都の学校は、
国内トップクラスの学校らしい、そんな所に僕が入れるの!?
と不安になったけど、そこはゼイスさんの弟子という事で、
簡単に入れるらしい。
王都には、国の主要機関がいくつもあり、
王城や、議会などもあるらしい。
この国には、王都と言うだけあって、王様がいるらしい。
初代王様であるサトーさんの息子さんだそうだ。
王国で王様が居ても、王政ではないそうだ。
そのために、議会があり、その議会で国の方針を決めるらしい。
だが、まったくもって王様に権力が無い訳ではない、
いくらか王様も権力を持っているそうだ。
権力を持っているのは、裁判所、日本の警察機関にあたる警備隊、
議会、王、の四つ、三権分立ならぬ四権分立だ。
たぶん僕の生活には関わってこないだろうが、これも常識、
小学生でも知っている知識だと、ゼイスさんが教えてくれた。
「そろそろお昼ね、ご飯にしよっか」
「うん、お腹すいた~」
「ゼイスさん!!ご飯にしよう!!」
「ほぉ、もうそんな時間かね?」
馬車が止まる。