第24話『王様への謁見』
衛兵っぽい人が叫ぶ。
「王様!!勇者様がお出でになられました!!」
「うむ、通せ」
無駄に豪奢な扉が開かれる。
その先には真っ赤な絨毯、ものすごくフカフカしそうだ。
更にその先には、これまた豪華な玉座、そこに座る人物が
その玉座の主であり、この国の主である王。
アビヤヌス・ソロモン・サトー。
サトーって!!
と思ったこともあったが、『最強』さんが二代目勇者であったことから、
初代勇者がいることは、分かっていた。
流石に勇者をしてたというサトーさんが、
王様になっていたのには驚いた。
この王は、その初代勇者サトー・イチローの息子らしい。
ちなみにソロモンがサトーさんが付けた名前らしい、
サトーさん・・・遊んでんな。
「王様、勇者光賀 光参上いたしました」
流石だな『最強』さん、様になってる。
自分は、最強さんのまねをして頭を下げている状態で良く見えないが。
多分、様になってる。
「顔を上げよ」
「はっ」
顔を上げる『最強』さん。
自分はまだ顔を上げない。
「此度は何故此処に来た?」
「はい、眠っていたもう一人の<召喚者>が目覚めましたゆえ、ここに来たしだいです」
「ふむ<召喚者>とな」
「はい、こちらに居ますのはニノシタ・ヒフミ、私と同じ学校に通っていた者です」
「そうか、そこの者、顔を上げよ」
まだ顔は上げない。
『最強』さんと打ち合わせをして、自分はまだこちらの言葉が分かっていない、
という設定にしているからだ。
「申し訳ございません王様、この者はまだこちらの言葉が分からないのです」
「そうか、なら勇者殿が伝えてくれ」
「はい」
『最強』さんがこっそり耳打ちしてくる。
「カズ君、こっちの言葉は分かるか?」
「凄いですね、魔法」
「顔を上げて、適当な言葉を言ってくれ」
「はい」
顔を上げる。
「ドウモー、ヒゲダー、モサモサシテルー、
アッ、ワタシ、コトバ、ワカリマセーン」
棒読みである。
「えー、こちらの者は、『初めまして、これから宜しくお願いたします。
言葉はまだ解りませんが、おいおい勉強します。お髭が立派ですね』
と申しております」
『最強』さん、凄く良く訳したな。
「そうか、この髭の良さが分かるか、
言葉が分からないのは大変だろうが、早く馴染んでくれ、
魔王との戦いもある故な」
王様、髭が誉められて若干上機嫌だな。
別に自分は誉めてないが。
「そのことですが王様・・・」
『最強』さんが口をはさむ。
「この者は、魔王との戦いには、参加することはできません」
「何だと?」
一気に王様の顔が険しいものになる。
「この者は、私と同様、戦いと無縁の国に生まれた故、戦い方を知りません」
「だが、おぬしともう一人、カゲヤマは騎士隊長を倒すほど強かったではないか」
「それは、ひとえに私とカゲヤマが戦いなれていただけだからです」
「おぬしたちは特別、と言いたいのか?」
「はい、ですから、この者は戦いに加えないでほしいのです」
ナイス!『最強』さん!!
自分は戦いなんかまっぴらだ!!
人が死ぬのはもうたくさんだ。
「戦えない、戦わないでは、ないのだな」
「はい」
「ふん、いいだろう」
「ありがとうございます」
「代わりに、この城で働いてもらうがな」
え?今なんて?
「では、下がれ」
「失礼いたします」
豪奢な扉が閉まる。
「という事で頑張れ、カズ君」
「は?」
「仕事」
「死後と?」
「仕事」
「なに?」
「仕事」
「ええええええぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「何を驚いてる?仕事だ仕事」
そんな!?異世界まで来て仕事するなんて!!
やっとバイトから解放されたと思ったのに!!
あ、でも、帰ったら結局バイトしないといけないのか。
あーーーっ!!バイト無断欠勤だ!!
クビだ!!もう完全にクビになってる!!
結構寝てたからな~~~、あの感じだと最低三日か?
「そういえば、『最強』さん自分、いったいどれぐらい寝てたんです?」
「ああ、そうだな、一週間くらいか」
「くあぁぁぁぁぁ!!帰ったら、食費を切り詰めないといけないか・・・」
「家賃とかの心配をしてるのか?」
「そうです!!自分のアパートボロくて、家賃が安いっていっても、
あそこら辺では、っていう但し書きが付くんです!!
高校生のバイトの収入では、結構いっぱいいっぱいなんです」
「あぁ、その辺なら心配することないぞ」
「どうして?」
「こっちとあっちの時間の流れ方が違うからな」
「浦島太郎みたいに?」
「そうだな、ちょうど逆といったところか」
「というと?」
「こっちの一ヶ月が向こうの一週間ぐらいだ」
「どうやって調べたんですか?」
「行ったり来たりを繰り返して、ちょっと計算」
「結構気軽に行ったり来たりするんですね・・・
そうだ、学校には?」
「ああ、もう連絡してある」
「学校はなんて?」
「『次元の穴はこちらでも確認した。異世界に通じていたのか。
たまにあることだから、頑張れ』」
「たまにあるんだ・・・」
「『無事に帰ってきたら、ちゃんと単位はやるから、
時間は気にするな、あ、そっちで手に入れた珍しい物は
学校で買い取るから、冒険者なり勇者なり、
好きにやるといい』・・・だと」
「・・・はは」
流石、ウチの高校、異常だ。