第14話『食卓事情』
「それで?」
「それでとはなんじゃ?」
「なんで、あんなに興奮してたんですか?」
回復したゼイスさんになぜあんなに興奮していたのかを尋ねる。
「それはのう・・・今まで面倒じゃった<魔法陣魔法>をカオルが楽にしたからじゃ」
「はぁ・・・?」
魔法について、よく分かっていないのでいまいちピンとこない。
「言ったじゃろう、<魔法陣魔法>はいちいち<魔法陣>を書かねばならないと」
「?」
「カオルがやったのは、それを省略してしまうことじゃ」
「それで?」
「<魔法陣魔法>は、空気の様にそこら中にある魔力を使うため、
魔力の少ない者や、大規模な魔法を使うときに使用する、
だが、<魔法陣>を書くために、ある程度古代語を理解せねばならん」
「さっきも言ってましたね、でも、今の興奮とどうつながるんです?」
「さっきカオルはどうやった?」
「<魔法陣>を見て、憶えて、<詠唱魔法>で<展開>?」
「見て、憶えて、<詠唱魔法>だけじゃろう?」
「はい」
「要するに、記憶の中の<魔法陣>を外に引き出すだけ」
「そうですね」
「ここで、もう一度<魔法陣魔法>の特性を言っておこう、
一度使った<魔法陣>は消える」
「うん」
「魔法を使うたび<魔法陣>を書かなければならない、
が、カオルがさっきやったのは、一瞬で<魔法陣>を
出現させること、ソレが意味することは・・・」
「<魔法陣魔法>の打ち放題?」
「そうじゃ!!カオルは<魔法陣魔法>界に革命を起こしたのじゃ!!
<魔法陣>を覚えさえすれば、誰でも、簡単に<魔法陣魔法>を使える!!
と、いう訳じゃ」
と、まぁ色々あったが、自分にも魔法が使えるっぽい。
嬉しい。今度、いろいろ試してみよう。
「じゃあ、帰るとするかの」
「はい」
家に帰ってきた。自分の家ではないので、この表現は微妙な気もするが、
「じゃあ、ご飯にするかの」
そう言ってゼイスさんが、ご飯の準備を始めた。
「フェリシア、この世界って男は台所に立たないんじゃなかったの?」
「普通はね、でも私たちの家では、毎日交代でしてるの」
「ふ~ん」
「明日から、カオルにもしてもらうわよ」
「えぇっ!?」
「一緒に暮らすから当然でしょ?それに、カオル料理それなりにできるんでしょ?」
「確かにそう言ったけど・・・知らない食材ばっかりだから、
どんな料理になるかは保証しないよ?」
「覚悟しとくわ」
「ところで、ここって森の中だけど、どうやって食材を仕入れてるの?」
「家の庭で育てたり、森でとってきたり、あと下の村に買いに行ってるわ」
「お肉とか食べる?」
「肉?カオル肉嫌いなの?」
「好きだよ、いや、そういうことじゃなくて」
「肉ってどうやってとってるの?」
「狩りね、あそこに弓があるでしょソレでとってる、
まぁ街に行ったら、町のそばで畜産をしてるから、肉屋で売ってるけど」
「狩り・・・」
「カオル狩りに興味あるの?」
「いや、無い訳でもないではないけど、いや、
僕の国って、狩りをする人なんてほとんどいなかったから」
「じゃあどうやって肉を手に入れてたの?」
「どこの村、どこの町にも絶対に、何でも売っている店があってそこで売ってた」
「でも、そんな店があっても村に狩る人間がいないんじゃ、
新鮮な肉は手に入らないじゃない」
「えっと・・・色んなところに畜産農家がいて、そこから全国各地に
配送されたり、他の国から輸入したり・・・」
「他の国?」
「そう、僕の国は周りが海に囲まれてて、海の向こうの他の国から・・・」
「国がいくつもあるの?」
「え?・・・そう・・・だけど?」
「面白そうね・・・ここには、二つしか国が無いから・・・
東の国と西の国の二つだけ」
「へぇ~そうなんだ」
「あまり驚かないのね?」
「ここにいる時点で驚きだからね」
「まあ、それもそうね」
「それで・・・肉は、どうやって運んでたの?どうやって鮮度を保ったの?」
「凍らせて」
「凍・・・らせて?何で?」
「肉とか野菜とかって、凍らせると鮮度が落ちないんだよ、
それに、凍らせたままだったら長期間保存できるんだよ」
「へぇ~知らなかったわ、冷やしたら長持ちするぐらいは知ってたけど」
「じゃあ、冷凍庫・・・物を凍らせて保管する箱みたいなのは無いの?」
「ないわね、冷やす箱だったらあるけど」
「ふーん、じゃあ今度作ろう」
「え!?作れるの?」
「魔法もあるし作れるんじゃないの?」
「さぁ?誰もやったことないし・・・」
「じゃあ、やってみよう」
することがまた一つ増えた。
冷凍庫の作成、魔法があるのできっと大丈夫だろう。
冷凍庫ができたら、色んな料理、主にお菓子ができるので、
早めに作りたいと思う。早く、アイスクリームが食べたい。
「できたぞい」
「じゃあ食べようか」
「いただきます」
晩ご飯は、お粥みたいなのと、厚切りのハムを焼いたものだった。
おいしかった。
明日は、僕が晩ご飯を作らないといけない、何にしようか?