第13話『ゼイスさんの魔法講座~実践編:2~』
「よし、次は<魔法陣魔法>じゃ」
そう言って、ゼイスさんがどこからともなく取り出した大きな紙。
そこには、<魔法陣>が書かれていた。
「<魔法陣魔法>は、至る所に満ちている魔力を<魔法陣>を使って
行う魔法じゃ、使う魔力が自分の魔力ではないため、
大規模な魔法を行うときや、魔力の少ないものが使うことが多い」
「じゃあ、誰でも使えるんですか?」
「そういう訳でもないんじゃ、<魔法陣魔法>も<魔法陣>を書くときに、
古代語を使うために、必然的に古代語がある程度解る者でなければならんのじゃ」
「むむ・・・でも、ここには、こちらの言葉も書かれていますよ?
だったら、このこちらの言葉で全部書いたらダメなんですか?」
「そうじゃな・・・どう言ったらいいんじゃろうか・・・
古代語は、魔力を乗せるものと言ったところじゃろう?」
「乗せる?<詠唱魔法>の時もそう言ってましたよね?」
「そうじゃな、魔力を人として考えると、
言葉は、船みたいなもんじゃ、
こちらの言葉はその船が小さくて脆い、だから人を乗せられない、
古代語は、大きくて強い、だから多くの人を乗せられる、
・・・と、そういうことじゃ」
「こちらの言葉には、力が籠めにくくて、日本語には、力が籠めやすい・・・
って、訳ですか?」
「そうじゃな」
「だから<詠唱魔法>も、<魔法陣魔法>も古代語が必要・・・と」
「そういう訳じゃ、本来、<魔法陣>を書くのは、
古代語だけで書いた方がいいんじゃが、
古代語だけで書くというのが、今ではほとんど出来なくなっておる、
そのために、混ぜこぜの言葉で書かれておるが、そのせいで、
本来出せる力よりも小さな力しか出せないんじゃ、
じゃから<魔法陣魔法>は余り使うものがいないんじゃ、
<魔法陣>を一から書くのも面倒じゃしのう」
「その<魔法陣>は何回でも使えるんじゃないんですか?」
「一回きりじゃ、<魔法陣>は使用時に魔力で掻き消えてしまうのじゃ、
じゃから、魔法陣を主体として使うものは、
いつもあらかじめ書いたものを持ち歩いておる」
「それは、面倒ですね、かさばるし・・・じゃあ、
魔法で<魔法陣>を書いたらいいんじゃないんですか?」
「はて?」
「いや、だからですね・・・<詠唱魔法>で<魔法陣>を書いたらいいじゃないですか」
「うむ?どういうことじゃ?」
「う~~ん、説明するのはちょっと・・・
ただの思いつきだし・・・」
「ちょっと、やってみなさい」
「えぇ!?う~~ん・・・やってみます、<魔法陣>はこれでいいですか?」
「そうじゃな」
「では・・・」
目の前にある<魔法陣>に意識を集中する。
(<魔法陣>・・・こうなってるんだ・・・)
二重円の真ん中に、五芒星、外側に起こることが書かれている。
(読めるのは・・・“水”、“出現”)
(他は・・・読めない・・・そのままコピーしよう・・・)
(・・・よし、覚えた)
(この魔法陣が、手の上に・・・)
「<展開>」
すると、僕の手の上に小さな<魔法陣>が現れた。
(あ、でた・・・)
(けど、使い方わかんない・・・)
「ゼイスさん<魔法陣魔法>ってどうやって使うんですか?」
「・・・」
返事がない、ただのしかばねのようだ。
「ゼイスさん?」
「・・・か・・・か・・・か・・・」
「か?」
「・・・かく、かっ、かくっ、かっく」
「フェリシアさん、ゼイスさんがおかしくなった」
「・・・」
こちらもしかばねだ。
「か、か、か、か く め い じゃあああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
「おぉう!?ゼイスさん!?その年で革命はちょっと無理じゃ・・・」
「出来る!!出来るぞ!!魔法界に革命が起こせるぞ!!!
うぉぉぉぉ、燃えてきたぁぁぁぁぁ!!!」
「ちょっと、若返ってる!?」
いきなりどうしたというのだ。
ゼイスさんの興奮度合いが、いきなりマックスになってしまった。
「・・・フェリシア、助けて!」
「イヤ」
「なんで!?」
「自分でまいた種は、自分で刈り取りなさい」
「いやいやいやいや、刈り取る以前にもう燃え上ってるよ!!
無理だよ!!火傷しちゃうよ!!」
「・・・しょうがないわねぇ、可愛い妹の頼みは断れないわ・・・<水弾>」
「起こす!!やってやるぞおおぉぉぉぉぉぉぉぉウェァプ!!?」
「ちょっとフェリシアさん!?今さらっと妹って言った!?」
叫んでいるゼイスさんの顔めがけて大きな水の塊が飛んで行って、
きれいに当たった、あ、流された。
戻ってきた。
「何をするんじゃフェリシア!!」
「ちょっと、落ち着いてください、カオルが怖がっています<水弾>」
「うぉ!?落ち着いた、落ち着いたからやめるのじゃ」
「落ち着きましたか?<水弾>」
「おひょ!?語尾のように<詠唱>を行うなフェリシア!!」
「<み」
「分かった、わしが悪かった、すまんカオル取り乱してしまった、
どうじゃこれでいいだろう?」
「どうする?カオル<み」
「いいから!!そんなに水びだしにしないで!?風邪ひいちゃうよ!!」
「よかったわね、ゼイスさん」
「ふ~~~死ぬかと思ったわい」
「ゼイスさん、大人げないです、いくら今のが凄くっても、
叫んだりするのは、大人げないです」
「『大人げない』と二回も言われた・・・」
「・・・ゼイスさん、そんなに落ち込まないでください、
確かに大人げなかったですけど・・・」
「・・・もうダメじゃ・・・カオルにも言われた・・・」
ゼイスさんの心が折れてしまった。
ゼイスさんが復活するまで、暫く待つことになった。