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僕達の異世界生活  作者: 真島 真
What is this?
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挿話『ヒフミ流変装術』

皆さん久方ぶりです。すいません。

今度は早くできるようにします。





「・・・ひーめーさーまっ!」

「気持ち悪っ、何よ」

「どうやら今夜暗殺者が来るらしいですぜ」

「・・・また?」

「また」

「今月入って三回目よ?一体何人来んのよ」

「それは、あちらさんに聞かなきゃ分かんないっすよ」

「はぁ・・・まぁいいわ、良くないけどいいわ。じゃあ、今回もアレで」

「生かさず殺さず容赦せずって感じですよね?」

「ええ」

「ついでに黒幕も暴ければいいなぁ、みたいな?」

「そうねぇ。あ、紅茶変えた?いい香りね」

「あ、分かった?こないだ市場で見つけてよ。これは買いだ!!つってね」

「ふ~ん・・・それにしても話し方どうにかなんないの?」

「あ、やっとツッコんだ」

「ツッコミ待ちだったの!?」

「それ以外に何があるのよさ!!」

「変な語尾で逆ギレされた!?」


とまぁこんなことがあり、絶賛変装中な自分だ。誰かに似ている(結局誰かは分からない)と言われる自分は、女に化けることも出来たりする。姫様と背格好が似ていることもあり、姫さまの服を着てウィッグを着け、化粧をしたらかなり近いものになる。『変装』のスキルによる補正も結構なものだ。


「それにしても化けるものね」

「そうでしょう?」

「しかも声まで変えられるなんて。あなた一体何者よ」

「ひ・み・つ♡」

「可愛いのが悔しいわね」

「まぁ、見る人が見ればバレちゃいますけどね」

「うわっ、いきなり男声に戻んないでよ。ビックリするじゃない」

「あらやだ。ごめんあそばせ」

「私そんな話し方しないわよ」

「・・・そろそろか。じゃあチョックラ行ってきます」

「はいはい。死なないでね」

「あいあい」







そんな軽い感じの導入だが、仕事の内容は至ってヘビーなものであることを忘れてはならない。というよりむしろ、ああでもしないと自分の気が持たない。自分だって一応人間だ。命狙われている状況なんて話を聞くだけでも気が狂いそうになる。ましてや向こうプロだ。これのどこが余裕でいられる状況だというのか。許すなら今すぐ叫びたい、家に帰りたい。帰れないけど。依頼だから帰れないし、やるしかない。

ちなみに姫様はジョン君と一緒に安全なところにいる。ジョン君は能力あるのに暇を持て余しているのでちょうど良かった。

さて、偽姫様となっている自分は姫さまのスケジュールをこなしている。姫様は自分たちと同い年ぐらいなのにしっかりと働いている、偉いものだ。その仕事を今、すり替わっている自分がしている。渡される書類に目を通し、はんこを押す。押す。押す。簡単だ。


「姫様」


姫さまの部下が声を掛けてくる。


「何ですか?」

「何かありましたか?」

「いいえ。何もないわ」

「そうですか」


はんこを押しながら答える。変装がバレていないか正直不安だ。別にバレたって事情を説明したらいいだけかもしれないが、バレないに越したことはない。


「姫様」

「何ですか?」

「誕生日はいつですか?」

「3月24日よ」

「好きなものは?」

「味噌汁」

「利き手は?」

「左、でも矯正して右で書いてる」

「体重は?」

「49キロ・・・って何言わせるのよ!!」

「・・・良かった何時もの姫様だ。・・・なるほど、49キロか」

「何?」

「い、いえ!なんでもありません!!」


あぁ、いつもあんななんだ。なんにせよこれで誤魔化せたみたいだ。良かった良かった。

しばらくこんな感じで仕事をしていると、部屋のドアがノックされた。


「失礼します」


そう言いながら入ってきたのはフラフィさんだ。フラフィさんには事前に話を通してある。この事を知っているのは少なく、王様と王妃、フラフィさんとジョン君、それとフラフィさんが選んだ信頼できる使用人だけだ。


「もうすぐパーティーが始まりますのでお召換えを」

「分かったわ」


頷いて席を立つ。このパーティー確か予算が決まったとかそんなやつの記念パーティーだったと思う。


「じゃあ私は行くけど、後お願いね」

「分かりました」


部下さんに後を任せ部屋を出る。さて、ここからが正念場だ。あれ?思えば自分仕事する必要なくね?








フラフィさんに連れられ、服を着替えた。落ち着いた、淡い黄色のドレスだ。こういう時の為に前もって作っておいてもらった物で、ポケットがたくさん付いていて色々仕込むことができる優れものだ。仕込むものは、ナイフ、ワイヤー、フラッシュライト、発信機、ICレコーダー、藁人形、針、糸、ハサミ・・・等など、いつにも増して重装備だ。それに、ドレス自体の重量もあるのでかなり重い。いやホント、映画の人たちはあんな服着てあれだけ動けるもんだ。はっきり言って自分には無理だ。こちとら現代っ子、しかも情報系のインドア派だからね。もう、歩くだけでも精一杯。


「あなた本当に男ですか?」

「はい?」


フラフィさんが変なことを聞いてくる。男か?


「今の姿を見るとどうも疑問を抱いてしまうのですが」

「そんなに綺麗ですか?」

「いえ、そういう訳ではなく」


ないんかい。そこは肯定してくれよ。別にいいけど。


「漂う空気と言うか、雰囲気というか・・・・そういうのが女性のソレと同じなのですよ」

「そうですかね」

「それに声もそうです。あなたの声には男性が女性の声を真似して出す時のような雑音がありません」

「はぁ」

「何ですかその曖昧な答えは。褒めてるんですよ」


あ、そうだったんだ!!ビックリ。だって無表情で言われるんだもん。てかここまで来ると、自分の『仮面』といい勝負かもしれないな。別に、勝負する気はないけど。多分負けるし。


「ありがとうございます」

「さて、準備も出来たことですし行きましょうか」

「はい」

「くれぐれも、姫様に粗相の無いように」

「分かってますよ」








重いドレスを引きずって第二食堂までやってきた自分たち。扉を守っている騎士がこちらの姿を見受けると、扉をリズミカルに叩いた。多分、姫様が来た、とかそんなのだろう。すると、扉の向こうから聞こえていた音楽が鳴り止み、大きな声で姫を迎える口上が告げられた。そして仰々しく扉が開けられた。部屋の中に入りグルリと見回す。怪しいものがいないか、不自然な動きをしているものがいないか。まぁ、こんなことで分かるようなら、三流も良い所だ。流石に一国の姫を暗殺しようとしている者だ。そんな奴はいない。さして問題なく入場は終わった。








「やあやあ、今日も姫様はお美しい」


おっさんが声を掛けてくる。その名もトンデブール大臣。豚のような醜悪な見た目、樽のような体型をしていて、しかも周りに美女を侍らせているが、その身も心も清廉潔白で有能という、ある意味残念な人だ。周りに侍っている美女達は、真に彼を慕ってきた者たちだ。ただ、言葉足らず過ぎて何を言っても悪い意味にしか聞こえないし、笑い方も下種っぽいので、その彼女たち以外には勘違いされている。くそっ、このハーレム野郎め。

この国の悪い噂の半分はこの人が出処といっても良かったりするが、彼はそんなことをしない。と言うか、そこまでする気概がない、むしろヘタレだ。その噂を信じて寄ってくる悪い虫たちもいるが、彼女たちに排除されているらしい。だが、その行為が噂を加速させているのはご愛嬌だ。というのが、この前調べて分かったこと。それを姫様に話したら、彼に力を貸そうかしら、的なことを言っていた。もちろん、自分はこの人のことを助けたいと思っている。面白そうだからね。


「これはこれは、トンデブール大臣。ご機嫌麗しゅう。この度は・・・」


まぁでもここで言うことは、自分が言うことは何もないので、会話は割愛させてもらおう。そんなに話しちゃいないけど。

あくまで表立った交流はしないほうがいい。この人、真面目すぎて敵が多いもの。








大臣たちへの挨拶も終盤に差し掛かり、あれ?来ないのかな?と思い始めた頃にそれは来た。それは、見た目があんまりパッとしない大臣、その名もパットン大臣との挨拶の時だ。腹に違和感を覚え、見るとナイフが突き刺さっていた。来た。よし・・・


「う・・・」


これみよがしに呻くフリ――仕込んでおいた血糊を出しながら――をし、パットン大臣の顔を見ると、歯が見えてそれが笑っているのが分かった。しかし口の端と目尻に違和感がある。・・・マスクだ。スパイ映画とかでよくあるあのマスクだ。パットン大臣のマスクを被った何者かが、自分の腹を刺したのだ。

ドッ、と倒れ伏す自分。周りに飛び交う悲鳴、怒号。その喧騒に揉まれながら、自分はあっという間に食堂から運び出された。

え?お前は何もしないのかって?だってそれ以外にあるまい?刺された姫様が元気に犯人確保とか怖すぎるだろう?









「ふぃ~」

「お疲れ様でした」


そして自室。腹を刺された自分とフラフィさん、ジョン君と姫さまが居た。


「しっかしお前ってホント運良いよな」

「いやいや」


ナイフを抜きながら答える。血は出ない。血糊はついてるけど。そもそも腹部には刺さっていたが、ナイフは肌を傷付ける事は無かった。刺さったナイフは偶然・・にも、仕込んでおいたワイヤーに突き刺さり自分の肌に一筋の傷を付けることもなかった。


「まぁ、これだけ仕込んでおいたら当然でしょ」


姫さまが呆れるように言う。自分はドサドサと仕込んでおいたものを落とす。その中には傷の付いたワイヤーリールもある。まぁ、鉄線なんて只の人の力じゃ断ち切れないものだ。良かった。人外が来てたらどうしようも無かった訳だし。ここのヒト達は時々人外レベルがいるから怖いんだ。まぁ、その点フラフィさんが仲間でよかったと思う。その時は、フラフィさんに丸投げしよう。


「しかし、凄いですねこのドレス。誰が作ったんですか?」

「私です」

「フラフィさんが?」


さすが万能メイド。やっぱり、才能あふれる人は違うなぁ。ていうか、フラフィさんって人なのか?寝ているのを見たことがないんだよなぁ。監視カメラ使って見てるのに一睡もしていない。どころか風呂にも入らない。なのに臭わない、むしろいい匂いがする。・・・まぁいっか。


「それで?捕まえた奴はどうなったの?」


姫さまが殺される事になったかもしれないナイフを弄びながら言う。ていうか、なんかやばいな年頃の娘が血|(血糊だけど)が付いたナイフを持っている画は。怖ぇ、まじ怖ぇ。


「姫様、毒が塗ってあるかもしれませんのでお気を付け下さい」


姫様に注意するフラフィさんを横目に、ジョン君が言う。


「捕まえた犯人はパットン大臣に化けていたみたいですね。犯人は捕まえた直後奥歯に仕込んでいた毒薬を噛み砕いて自殺しました。パットン大臣は自室で縛られて転がされていました」

「はぁ、またね。でもパットン大臣が生きてただけ良かったとしましょうか」

「はい」

「じゃあ、これでこの件は終わりってことで・・・いいわね?」

「はい」


まぁ、すぐほかの奴が来るんだろう。どうやら、姫様は重要人物のようだし。本当の『役割』が分かるまでは・・・自分は姫さまの傍を離れるわけにはいかないな。まぁ、それまでは存分に遊ぶとしよう。




今回使用したスキル

『二度ある事は三度ある』・・・二度同じことがあれば、必ず三度目が起きるスキル。

『フラグメイキング』・・・フラグを作るスキル。

『形見のロケット』・・・思い出の品の破損と引換えに致命傷を防ぐスキル。

『思い出は永遠に』・・・思い出の品の破損を防ぐスキル。ただし、思い出が無くなるとその効果も消える。

『偶然は必然に』・・・その場で起こりうる全ての事象の可能性を100%にするスキル。

悪運グッドラック』・・・運のスキル。

『不幸中の不幸』・・・最悪の可能性を引き当てるスキル。


もうヒフミくんはスキルでガッチガチに固めております。でも、元がユルユルなので結構簡単に倒せる感じ。多分、普段だったらカオルちゃんでも倒せる。でも今日は割と本気だった模様。矛盾したスキルがあるのはご愛嬌。





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